厚労省 販売情報提供活動GLでQ&A MRの業績評価から「売上至上主義」排除求める
公開日時 2019/02/21 03:52
厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課は2月20日、「医療用医薬品の販売情報提供活動ガイドライン(GL)」に関するQ&Aを事務連絡として都道府県に発出した。事務連絡ではMRの業績評価(KPI)や会社目標を達成した時に支給されるインセンティブ(ノルマ等)について、「売上至上主義によらない人事評価制度や報酬体系」に改めるよう検討を求めた。GLの対象範囲については、「実際になされた活動により個別に評価・判断する」として、メディカルアフェアーズ部門(MA)やメディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)であっても、対象範囲とする考えを明確にした。同省は、日本製薬団体連合会(日薬連)、日本医薬品卸売業連合会(卸連)宛にも通知を発出しており、製薬業界、医療界への周知に努める。
GLは、ディオバン問題やバイエル問題など、現行の医薬品医療機器等法(薬機法)では対応できない不適切な広告事案に対応する目的で策定された。Q&Aでも、「明確な虚偽誇大とまではいえないものの不適正使用や誤使用を助長される行為など、広告該当性を判断することが難しい広告又は広告類似行為も対象に、現状を改善するために策定した」とした。
◎MRの適切な販売情報提供活動を確認「人事上の評価項目に設定」
販売情報提供活動GLでは、社内ガバナンスの強化を求めながら、MR活動の適切性を確保するための施策を数多く盛り込んでいる。その代表格が、MRの業績評価(KPI)やインセンティブの設定だ。Q&Aでは、経営陣に対し、役員や従業員が適切な販売情報提供活動を行ったかどうかを確認し、「人事上の評価項目として設定する」ことを求めた。これまでのMRの評価・報酬体系が「売上至上主義」に基づくとパブコメ段階で医療関係者から批判されたことを受けたもの。過去にはMRの担当するエリアの医療事情に見合わない過大な売上目標(ストレッチ目標)を課し、それを達成するための不適切な情報提供活動が医療関係者から批判された経緯もある。
◎販売情報提供活動監督部門 MA部門に設置は認めず
Q&Aでは、販売情報提供活動の該当性について、「実際になされた活動により、個別に評価・判断されるもの」であることを一貫して説明した。特に、「単に、組織や目的の形式的な判断のみで、GLの適用から除外されるわけではない」ことを強調した。
販売情報提供活動の名称から、MRや営業組織だけが該当するとの誤解も業界内にあったが、臨床開発部門やMA、MSLであっても該当する可能性を指摘した。特に、MA部門、MSLについては、業界内に販売情報提供活動と明確に切り離せば、GLの適用範囲外とすることを求める声もあった。同省は、「社内規則で規定していることをもって、GLの適用から除外されるわけではない」と指摘。さらに、MAなどが行うアドバイザリーボードについても、「医薬関係者と業務委託契約を締結していることでGLの適用から除外されるわけではない」とした。
資材等やMR・MSLの活動の適切性等をモニタリングする「販売情報提供活動監督部門」を、販売情報提供活動の担当部門から独立した形で社内に設けるよう規定している。現行組織で、資材の監査などをMA部門が行っている企業も多いが、GLでは、「MA部門は非監督部門となる可能性があるため、原則として認められない」とした。資材の審査などについては、担当者の経験を活用することは否定するものではない」とした。ただし、担当者がモニタリングを行う際には、「モニタリングの手順や評価項目を客観的に定めることや、当該担当者の販売情報提供活動監督部門における人事上に位置づけを明確にする」などして適正なモニタリングが行われる体制を求めた。
◎業務記録 資材以外の質問、会話は「具体的な内容を記録」
業務記録の作成・保管についての見解も示した。GLではMRが医師等と面談する際に、「口頭の説明の全てを業務記録に詳細に記載」することを求めている。製薬各社もMRの業務記録の作成・保管方法の検討に着手したところ。同省の見解によると、社内審査済みの資材を用い、MRがその範囲内で説明を行う限りにおいては、「日時、訪問先医療機関名、医師・薬剤師名、使用した資材等の情報を記載することで差し支えない」と説明。ただ、「資材に記載のない事項についての説明を行う場合は、医師・薬剤師とのやりとりの概要を含めた具体的な内容の記録が求められる」との見解を示した。MRが活動記録(日報など)を作成する際に、製品情報概要や添付文書、資材に記載されていない会話や医師からの問い合わせ、質問があった場合には、「特記事項の記載」が別途求められるとも解釈できる。
業務記録の保管期間の目安にも触れ、「業務記録の作成が求められている趣旨及びその必要性を踏まえて、各社の状況に応じて適切に設定すること」と回答した。
◎疾患啓発がGLに抵触の可能性も
このほか、一般人に対する疾患啓発については、疾患啓発を装って投薬治療をことさらに推奨する恐れもある」と説明した。広告の三要件に該当せず、適正広告基準に従っていても、顧客誘引性の意図が透けて見える場合には該当することになる。一般人向けのメディアが含まれるメディアセミナーやプレスリリースを通じた情報提供についても、「一般人向け広告に該当するおそれがあるため、慎重な対応が求められる」とした。
◎製薬協・田中常務 「業界団体、企業、MR・MSL個人の対応が必要」
日本製薬工業協会(製薬協)の田中徳雄常務理事は、「ガイドラインの内容は、業界団体として対応するもの、製薬企業個々として対応するもの、MR・MSL個人として対応するものがある。しっかり内容を確認して取り組んでいきたい」とコメントした。なお、未承認・適応外薬の情報提供については、別途Q&Aを策定。3月中に通知を発出する予定。