厚労省・偽造薬流通防止検討会 適正取引・流通を省令で明確化 「秘密厳守」など不適正取引根絶を
公開日時 2017/06/09 03:51
C型肝炎治療薬ハーボニーの偽造品流通問題を受けて設置された厚労省医薬・生活衛生局の「医療用医薬品の偽造品流通防止のための施策のあり方に関する検討会」は6月8日、省内で第4回会合を開き、ただちにに対応すべき再発防止策を盛り込んだ中間とりまとめを大筋で了承した。「現金問屋」における譲渡相手の身元など「秘密厳守」をうたう取引が今回の偽造品流通の背景と指摘し、「不適正な取引を根絶すべき」と明記。その上で、卸売販売業者、薬局に対し、取引相手の身分など適格性の確認を含む譲受記録を厳格化するなど、偽造品が入り込まない適正な取引・流通を整備することを打ち出した。薬局開設者、管理薬剤師には偽造品対策を求めた。中間とりまとめの成案を待って同省は、夏に省令改正を行い、一定の猶予を経て施行する。
中間とりまとめの大筋了承を受け、武田俊彦医薬・生活衛生局長は挨拶し、「適切なルールを確立することにより、適正な取引と不適正な取引を仕分けし、不適正な取引を根絶する、具体的な対策の鍵となる部分をまとめていただいた。中間とりまとめをしっかり受け取め、一貫した対策について制度的対応を図り、都道府県と連携しながら薬事監視の強化に努めてまいりたい」と、対策の狙いを説明した。
中間とりまとめでは、ハーボニーの偽造品流通問題の背景について「現金決済による取引を行う業者(いわゆる「現金問屋」)においては、譲渡人の秘密厳守を謳う営業が行われるとの指摘もあり、こうした実態が、今回の偽造品事案の背景」と指摘。また、偽造品が外箱から出され、添付文書も付されていないまま流通していたことについて、偽造品流通に関わった卸、薬局に対し「違和感を持ち、特段の行動を取るべきであった」とした。
その上で、卸、薬局に対し遵守事項として、取引相手の適格性の確認や譲受記録の徹底を求めた。現行では品名、数量、授受年月日、氏名だけだが、さらに相手の住所、ロット番号、使用期限等を記載し、許可番号や氏名の確認、資料等による身元の裏付けを行い、偽名等を防ぐ手段も記録することとした。同一法人内での医薬品の譲受・譲渡についても、記録に疑義があったことから取引に係る記録・保存は営業所や薬局ごとに行うこととした。
偽造品が外箱から取り出された状態で流通したことから、開封された後の医薬品の販売・授与(調剤除く)については、開封者名を表示することを求めた。
患者に対し販売包装単位で調剤を行う場合、「販売・授与された薬剤が再度流通することがないよう、患者等に対し外見から調剤済みと分かるような措置を検討し、それを徹底する」とした。
管理薬剤師の責務としては、偽造品対策のために必要な仕入先・販売先の確認、返品医薬品の最終処分の判断などを挙げるなど、薬局・薬剤師を偽造品が患者に渡らないようにする最終チェック者であることを明確化した。
ほか卸、薬局に対し、偽造品対策に以外にも、向精神薬などの医薬品の横流し、不適正使用の可能性がある取引、調剤について、行政機関へ報告することを盛り込んだ。業務手順書に記載し対応するよう求めた。
最新の封かん方法、偽造防止策 今後の課題に
開封後の医薬品の取り扱いについて当面の対策で盛り込んだが、封かん方法や偽造防止の最新技術の開発も進んでいることから、一定のルールの下で、卸、薬局、行政間で情報共有し、再発防止に取り組むことを、夏以降の検討課題に盛り込んだ。
また、返品や不動在庫が不適正な取引・流通につながるおそれがあることから、それら「日本の商慣行」に対し課題解決に向けて、関係者の自主的な取り組みを促した。
卸売販売業者の業許可基準の厳格化 早急な対応求める
さらに今後の検討課題には、出所不明の医薬品の扱っても卸売販売業を継続できる現行制度を改め、許可基準の厳格化について早急な対応を求めた。薬機法改正が必要となるが、当面、規制を守れない業者に対し、行政指導だけでなく、業許可の取り消しもできる制度に改めることを迫った形だ。
営業所の構造設備と原則薬剤師による管理を定めているだけの現行基準に、医薬品の適正管理など現在遵守事項にある規定の一部を許可基準に加えるもので、「できるだけ早急に許可基準に位置付けるべきである」と指摘した。
そのほかの検討課題として▽PIC/S・GDPガイドラインの全般に対応する国内ルールに関する検討▽一部薬局において行われている、他の薬局などに対する医薬品の販売・授与を業務の中心としている業態の位置づけ▽薬局開設者や管理薬剤師の責任や責務等のあり方▽トレーサビリティを向上されるバーコードやシリアルナンバーなど情報システムの整備--を挙げた。
これら残された今後の課題について同省は、年度末までをめどに検討を進めるとしている。