米の7か国入国制限 バイオ企業幹部から批判
公開日時 2017/02/03 03:50
ドナルド・トランプ米大統領令によるイラン、シリアなど7か国の市民の米国への入国制限は医薬品業界にも波紋を投げかけている。米医薬専門誌「Fierce Pharma」(1月30日付)によると、米バイオベンチャー幹部からは、同入国制限により、入国制限された国々との間の人の移動が妨げられることによって優秀な人材が集まりにくくなるとの声が上がっている。特に留学生の多い大学と共同研究などでオープンイノベーションに熱心なベンチャーではその懸念が強いようだ。
まず、声を上げたのは、Allergan社のBrent Saunders CEOだ。同CEOは、29日、「優秀で多様な人材を引き付ける我々の力を制限する如何なる政策にも反対する」とツイッターで言明した。
Xencor社のBassil Dahiyat CEOは、「我々は高等教育を受けよく訓練された移民の率が高い企業の1つだ。我々は移民がいなければ機能しなくなる。なかには、戻れなくなることを恐れ、当該国を出発できない者もいる」と事態がひっ迫していることを語る。
Ovid Therapeutics社のJeremy Levin CEOは、「このことは、米国の自由な国のリーダーとしての基本的骨格を脅かすばかりでなく、技術開発における我々の優越性をも脅かす」と今後の米国の競争力低下を懸念した。
一方、大手多国籍企業のなかでは、米・メルクが声明を発表。その中で、「我々はすべての国籍・宗教を持つ従業員とともにある」、「大統領令によって影響を受ける従業員に法的アドバイスやその他の支援をするためにすでに手を差し伸べている」と話した。
米・イーライ・リリーは、今回の大統領令は事態が流動的なので事態の推移を見守りたいとしている。グラクソ・スミスクライン(GSK)は、現段階で特別に言及することはないとしている。アッヴィおよびファイザーは、ともに何もいうことはないとしている。米国研究製薬工業協会(PhRMA)および米国バイオテクノロジーイノベーション協会(BIO)はともに何らの発表もしていない。
現段階では、バイオベンチャーと大手企業では、大統領令への対応が二分した格好だが、人材確保が難しいベンチャーで、今回の大統領令への懸念がより大きいようだ。