前立腺がん患者 背中の痛み「相談せず」が35% 骨転移リスクの認識低く バイエル調査
公開日時 2016/12/14 03:50
バイエル薬品がこのほど発表した前立腺がん患者の症状・治療に関する意識調査結果によると、背中に痛みがあった場合でも、受診時に医師に「相談しない」患者が35%に達することがわかった。相談しない理由の半数以上が「前立腺がんとは関係のない症状」と思ったからで、痛みが前立腺がんと関連することの認知が低いことが浮き彫りになった。
調査は今年9月、前立腺がんを治療中の50代~80代の男性300人を対象に実施した。方法はインターネット調査。「2週間前から背中に痛みが現れて強くなってきた」という状況を仮定して、設問を構成した。
背中に痛みがあった場合、前立腺がんのバイオマーカーであるPSA検査値が悪化していなければ、医師に「相談しない」が35%となった。相談しない理由(複数回答)を尋ねると、「前立腺がんとは関係ない症状」が53.3%と最多、次いで「PSA検査値を確認しており、気にしなくて良い」が52.4%となり、回答割合が大きく開いた3番手に「治療は医師にすべて任せている」が32.4%と続いた。これらの回答から、前立腺がんが痛みに関連している可能性について“理解が浸透していない”といえそうだ。
■骨転移の治療メリットも十分理解されず
痛みについて相談しないと回答した患者に、どのような条件であれば相談するかを尋ねたところ、「痛みが前立腺がんと関係がある症状であれば相談する」が61%と最も多かった。一方で、「言うことで新たな治療を受け、寿命が延びるなら」が17.1%、「言うことで新たな治療を受け、QOLが向上するなら」が16.2%と5位、6位にランクイン。解決策があれば相談したいとの傾向も確認された。
また痛みを感じても、「PSA検査以外の検査を希望しない」との回答は52.7%と過半数に達した。希望しないとの回答者に、その理由を聞いたところ、「PSA検査を確認しているので気にしなくて良い」が43.0%とトップ。2位に「どのような診断を頼めばよいか思いつかない」が35.4%、4位に「前立腺がんとは関係のない症状」が34.8%で続き、痛みの原因を調べるために必要な検査について、患者の認知度が低い現状が明らかになった。
このほか、患者全員に「前立腺がんの骨転移の治療で得られること」も尋ねた。それによると、トップ3は「わからない」(48%)、「痛みが和らぐ」(28%)、「寿命が延びる」(26.3%)――となり、骨転移の治療メリットが十分に理解されていない可能性が示唆された。
前立腺がんは、国内で増加傾向を示しており、2016年の予想罹患率は約9万2600人。男性の中で最も多いがんとなっている。去勢抵抗性前立腺がんまで症状が進行すると、9割が骨に転移し、骨折や寝たきりにつながる可能性もあり、QOLの低下が懸念される。早期の発見と治療の重要性が指摘されている。