日医・横倉会長 高額薬剤問題で「コスト意識を診療GLに」 医療側から過不足ない医療を提言
公開日時 2016/06/24 03:50
日本医師会の横倉義武会長は6月23日、日本病院学会(岩手県盛岡市)で講演し、抗がん剤・オプジーボに端を発した高額薬剤問題に言及し、社会保障を持続可能とするために、財政主導ではなく、「医療側から過不足ない医療提供ができる適切な医療を提言する」ことが必要との認識を示した。この具体例のひとつとして、「症状や患者特性に応じてコスト意識をもった処方を診療ガイドラインに掲載するなど学会活動の支援」をあげ、医療費適正化も学会など医療現場主導で実施することが必要との見方を示した。
横倉会長は、国民皆保険堅持の重要性を指摘した上で、「高額な医療機器や医薬品の開発で医療財源がどうなるかということが極めて心配な状況だ」と述べた。高齢化の進展に伴い、医療費、介護費の増大も見込まれる中で、医療従事者側から適切な医療を提言することで医療費適正化につなげることが有用との見方を示した。
具体的に医療費適正化に取り組む分野としては、①ロコモ増進による転倒防止で大腿部頚部骨折抑制、②データベースに基づく糖尿病領域の最適治療法の確立、③糖尿病腎症の進展防止、透析医療の標準化、④適切なCT/MRIの活用、⑤手術、術式、医療材料の適切な選択、⑥禁煙によるCOPDのリスク低下、併存症の管理——などをあげた。いずれも、関連学会と連携して適正化に取り組む考え。なお、糖尿病については、適切な薬剤選択による効果的治療も含まれている。
◎期中改定は「中医協の議論尊重を」 新薬の早期の保険収載望む
横倉会長は、「医療人は、病に苦しむ人がいれば、何としても助けたい。必要な医療が過不足なく提供できる社会づくりが重要だ」と強調した。
抗がん剤・オプジーボのような効果が高い一方で高額な薬剤もあるが、「安全性と有効性が確認された新しい医薬品は速やかに保険収載されることは、患者のみならず医療人も望んでいる」と述べた。
一方で、医療の持続可能性の観点から、「医薬品の費用の適正化は進めるべき」と指摘。中医協では、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)が高額な医薬品について、効能・効果が追加され対象患者数が増加した場合には、期中でも薬価改定をすべきだと主張しているが、「薬価算定組織が用いる評価指標や評価時期などは、中医協の議論を尊重すべきだ」と述べた。また、高額薬剤が国民皆保険の財政を揺るがす危険性があることから、「中医協の判断を高めなくてはならない」と強調した。