【World Topics】ティーンエイジャーの自殺
公開日時 2015/10/13 03:50
米国では若者の死因の第3位が自殺だ。しかも自殺者は2007年以降増加し続けている。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
若者の自殺は小さい時から激しい競争にさらされ、 早く成功しなければならないというプレッシャーをかける現代社会の仕組みの性だと言われ、あたかも社会を変える以外に打つ手はないかのように受け止められている。
だが「若者の自殺はもっと防げるはず」と精神医学の専門家Dr Friedman(コーネル大学医学部)は言う。自殺者の90%はうつ病などの精神疾患を患っており、つまりは病気なのであり、そうであれば治療可能なはずだという主張である。
実際、米国厚生省の全国調査によれば、2013年に18~25歳までの若齢層の8.7%がきわめて深刻な抑うつ症状を経験していたが、その症状の解消のために医師を受診したのは半数に満たず、しかも受診した者の過半数(57%)は専門医ではなく、かかりつけのファミリードクターを受診するにとどまり、専門医の治療を受けていなかった。適切な治療が必要だとDr. Friedmanは言う。
だが、最近の米国では、EHR大型データの解析により、里親や養護施設で 暮らす子どもたちへの向精神薬の過剰投与の実態が明らかになり、若齢層への向精神薬の投与を規制する条例ができはじめているところだ。抗うつ薬や精神安定剤の投与が厳しく規制されるようになり、規制強化後、若齢層への向精神薬の使用が激減しているのだ。
そうした現状をDr. Friedmanは「必要以上の(自主)規制で、防げるはずの自殺さえも防げなくなっている」と批判している。