PhRMA 420剤の神経疾患治療薬を開発中
公開日時 2015/07/22 03:50
米国研究製薬工業協会(PhRMA)メンバー製薬企業は現在、420剤の神経疾患治療薬を開発中だ。PhRMAと米てんかん協会(Epilepsy Foundation)がまとめた報告書「開発中の神経疾患」(Medicines in Development for Neurological Disorders)から明らかになった。PhRMAが7月13日発表した。
420剤の内訳は、慢性疼痛治療薬94剤、アルツハイマー病治療薬59剤、脳腫瘍治療薬58剤、MS治療薬33剤、パーキンソン病治療薬31剤、てんかん治療薬22剤遺伝性疾患21剤など。なお、開発中薬剤には承認申請中も含む。
PhRMAのJohn J Castellani理事長兼CEOは、「分子あるいは遺伝子レベルで神経系の作用を理解する上で大きな進歩を成し遂げた。それにより、有効な神経疾患治療薬の開発が進んだ。これら薬剤の開発により、破壊的な疾患に悩む数百万の患者に新たな治療選択肢と望みを与えた」と科学者の努力を評価。「製薬業界としては、これら神経疾患の一層の解明と次世代の負担を減少させる努力が残されている」と一層の新薬開発への意欲を示した。
現在、開発中の新薬で注目される薬剤の一部は以下の通り。
▽片頭痛に関与するとされているカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の作用を阻害するモノクローナル抗体
▽遺伝性疾患ハンチントン病において最も損傷をうけるニューロンに存在するPDE10Aという酵素を標的とした薬剤
▽ミエリン(髄鞘)を傷害するとされるLINGOというタンパクを標的として、再発MSを適応としたモノクローナル抗体
◎アルツハイマー治療薬 2020年以降公的保険財政へも影響
同報告書では、アルツハイマー病の米国の公的保険への財政的影響に言及。発症を遅らせる新薬が登場した場合とそうでない場合(既存治療のみ)のメディケード(低所得者保険)およびメディケア(高齢者保険)における年間経費の将来推計を提示した。これによると、2020年は新薬が登場しても、しない場合と共に1億8200万ドルで相違はないが、2030年には、新薬登場では2億6200万ドル、しない場合3億1000万ドル、2040年には、新薬登場3億7700万ドル、しない場合5億2900万ドル、2050年では新薬登場5億4700万ドル、しない場合7億6500万ドルと将来になるほど差が拡大、早急な新薬登場が望まれていることが浮き彫りになった。
神経疾患にはてんかん、アルツハイマー病、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病など代表的な疾患を含め600以上の疾患があるとされ、米国では5000万人が罹患していると報告されている。