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バイオジェン・傳社長 MS/SMA/AD/ALSの4本柱で展開 「27年までに5万人を超える患者を救う」

公開日時 2024/02/28 04:52
バイオジェン・ジャパンは今後、筋萎縮性側索硬化症(ALS)市場に参入し、現在参入している多発性硬化症(MS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、アルツハイマー病(AD)を含む4本柱で事業展開する方針だ。同社の傳幸諭代表取締役社長がこのほど本誌インタビューに応じ、2023年から27年まで5カ年の中期経営計画を説明。4本柱を中心に「27年までに5万人を超える患者さんを救う」と表明し、結果的に日本法人の持続成長につなげたいと意欲を示した。ALS治療薬の国内第一号製品はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のトフェルセン(一般名)になる見込みで、「24年末までに承認申請する予定」と述べた。

◎“患者さんが近い”会社

「当社は“患者さんが近い”会社です」――。23年1月に社長に就任した傳氏は、バイオジェン・ジャパンをこう表現した。同社では、全社ミーティングや四半期ごとの営業会議などの機会に患者に登壇するなどしてもらい、患者の本音やインサイト(以下、患者インサイト)に社員が直に接し、患者に対する理解を深める取り組みを継続している。傳社長は、「神経難病領域で事業展開する当社にとって、患者さんの日々の困りごとや気持ちを全社員が受け止め、患者さんのためにどのような活動をしていくべきかを考え、実行に移すことは大変重要」と強調し、患者インサイトに社員が接する取り組みを今後、より強化していく考えを示した。

◎国内業績 24年にV字回復へ

同社は現在、MS治療薬のテクフィデラ、タイサブリ、アボネックス、SMA治療薬・スピンラザ、そして23年12月からエーザイとAD治療薬・レケンビの共同販売を開始し、3つのコアビジネスで計5製品を販売している。国内業績や製品売上の具体的な数値は非開示。ただ、傳社長によると、MSとSMAの両市場における競争激化で日本法人は23年まで厳しい業績が続いたが、24年に「(業績の)V字回復が期待できる」と述べた。

傳社長がV字回復の自信を深めている理由は、レケンビの収益貢献に加え、スピンラザの他剤からの切替症例が確認できていること、さらには日本神経学会から23年9月に発出された「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023」が同社のMSフランチャイズの追い風になるとみているためだ。

このガイドラインはMS領域における6年ぶりの治療ガイドラインで、▽活動性が高い症例、▽活動性が高くない症例――のそれぞれの状況に応じて薬剤を使い分ける方向が示された。傳社長は、「これまではこのような治療アルゴリズムはなかった。当社製品の位置づけを見ると、活動性が高い患者さんにはタイサブリ、活動性が高くない患者さんにはテクフィデラやアボネックスが治療選択肢として明記された」と述べ、MS領域の情報活動を強化していく構えをみせた。

ALS治療薬・トフェルセン 「早期承認を求める声をいただいている。しっかり取り組みたい」

27年を最終年とする5カ年計画「Ambition2027」は、▽人財とカルチャー(人財育成)、▽ビジネスの推進、▽将来の基盤づくり――で構成される。このうち“ビジネスの推進”では、ALS領域への参入を含む4本柱(MS、SMA、AD、ALS)で事業展開する方針を掲げたほか、神経難病領域において「主要なステークホルダーから1番選ばれる会社になる」ことも目標の一つに位置付けた。

傳社長はALS領域への参入について、日本などで第III相臨床試験を実施したトフェルセン(一般名、開発コード:BIIB067)で参入する方針を示し、「(トフェルセンは)24年末までに申請する予定」と明らかにした。

トフェルセンは、一貫して致命的で極めて稀な遺伝型ALSであるスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)変異を有するALSの治療薬候補。SOD1 mRNAに結合し、SOD1タンパク質の生成を抑制するよう設計されている。米国で23年4月に迅速承認されたこともあり、日本ALS協会や関係学会からも日本での早期承認を求める声があがっている。傳社長は「早期承認を求める声をいただいており、当社としてもしっかり取り組みたい」と強調した。

トフェルセンの早期承認に関しては、2月14日の衆院予算委員会でドラッグ・ラグ/ロス問題への政府対応に関連して話題に上がった。自民党の上野賢一郎衆院議員の質問に対し武見敬三厚労相は、「現在、日本法人が日本での薬事申請に向けてPMDAと相談を行っていると承知している」とし、「トフェルセンについては企業から承認申請がなされた場合、PMDAにおいて迅速に審査を進め、有効性・安全性が確認されれば速やかに承認してまいりたい」と答弁した。

なお、日本法人のビジネスの観点からは、24年からのレケンビの本格的な収益貢献に加え、近い将来からのトフェルセンの収益貢献も見込み、日本法人の中長期の持続成長をより確実なものにしたい考え。

◎神経難病領域で「最も価値のある会社になりたい」

5カ年計画で掲げた「主要なステークホルダーから1番選ばれる会社を目指す」ことに関しては、外部ステークホルダーは参入領域における患者/家族や、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの医療関係者、パートナー企業、取引卸、株主――となり、内部ステークホルダーは社員となる。

例えば医療関係者から“1番選ばれる会社”について、傳社長は「製品を売らんがための会社ではなく、患者さんのインサイトもしっかり情報提供することで、医療関係者から『バイオジェンと話をすると、こういう情報が得られる』と評価される、最も価値のある会社になりたいということ」だと説明。「製品力だけで存在感を発揮していても、良いビジネスにはならない」とし、様々なバリューを提供できる会社を目指すと語った。

患者や家族から1番選ばれるということに関しては、例えば患者や家族が医薬品や疾患を調べる際、最も信頼できる情報源としてバイオジェンのサイトやSNSが想起され、最初にアクセスしてもらえる存在になるということだとした。また、同社は特別支援学校の中高生のキャリア教育の一環として分身ロボット技術を用いた就業体験プログラムを数年にわたり提供している。「患者さんに医薬品だけではないバリューを届けることにも努めている」とし、このような活動を継続していく考えも示した。

◎世界初承認から6か月以内の国内導入目指す ドラッグ・ラグ/ロス問題に所見

このほか、バイオジェンのドラッグ・ラグ/ロスの現状に関しては、「バイオジェングループは原則、米国、欧州、日本の三極で同時開発しており、大きなラグ/ロスは生じていない」と述べた。ただ、トフェルセンは米国での迅速承認を起点にすると日本の承認取得は2年近く遅れる可能性がある。この点に関しては「米国の迅速承認制度の承認スピードが非常に速いとの側面もある」と指摘した。

とはいえ、「我々は日本で仕事をしており、日本の患者さんにいち早く薬剤を届けることがミッション」だとして、「世界初承認から6カ月以内に日本市場に持ってくることは考えなければならない」と世界初承認から6カ月以内の国内導入を目指すと表明した。ただ、神経難病や希少疾患は様々な治験を求められても時間がかかると指摘。希少疾患や小児がんなどに関し、「米国の迅速承認制度のようなスキームの日本版を規制当局と一緒に検討していきたい」とも呼びかけた。

*ミクス24年3月号でインタビューの詳細を掲載します。
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