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住友化学・岩田社長 赤字の住友ファーマ「再成長へあらゆる選択肢を検討」 国内スリム化、持分縮小も

公開日時 2024/05/01 04:51
住友化学の岩田圭一代表取締役社長は4月30日の経営戦略説明会で、2023年度に3500億円以上の営業赤字を計上する見通しで、同社グループで抜本的構造改革の対象となっている子会社・住友ファーマの将来に言及した。住友ファーマの24年度のコア営業利益の黒字化は必達目標だと改めて強調。その上で、「徹底した合理化を進め、一日でも早く完全止血する」と話すとともに、「再成長に向けたあらゆる選択肢を検討していく」と表明した。24年度は住友ファーマのスリム化と同時並行で、持続的な成長を実現するための最適なパートナーも検討していく考え。結果として持分比率の縮小や連結除外も「十分あり得る」と述べた。

「住友化学の今までの経験を含めて、薬を創る、あるいは導入品を選ぶといったところで住友化学が貢献できる余地は極めて少ない。加えて、(製品や開発品を)導入するにしてもお金がかかり、今の住友化学にそういうお金を出す余裕はない」――。岩田社長は、住友ファーマの「あらゆる選択肢」が持分比率の縮小や連結除外を含むのかとの質問に、こう背景を話した。そして、住友ファーマの持続的な成長を実現するための「最適なパートナーとはどういうところなのかも、もちろん『あらゆる選択肢』の中にある」とし、「結果としてシェア(=持分比率)が変動することも十分あり得る」と述べた。

住友ファーマのコア営業利益の黒字化のメドがたってからパートナーの検討を進めるのかについては、「とりあえず止血して健康体にしてから次の手を考えるという時間軸では全く考えていない。そんな悠長なことを言っている場合ではない」と指摘。「止血しながら同時にあらゆる選択肢を考えていく。どのようなパートナーが現れるか、良い案が出るかはわからないが、早ければ早い方が良いという取り組みをしていく」と話した。

◎住友ファーマ 23年度営業損失3549億円の見通し マイフェンブリーの減損損失などで

住友化学グループはこの日、23年度業績予想の下方修正や24年度業績予想とともに、住友ファーマの抜本的構造改革(再興戦略)の全体像を明らかにした。

住友ファーマの修正後の23年度連結業績予想は、コア営業損失1330億円(前回1月予想1340億円の損失)、営業損失3549億円(同1560億円の損失)、親会社帰属純損失3150億円(同1410億円の損失)――で、赤字幅が拡大する見込みとなった。これは子宮筋腫・子宮内膜症治療薬・マイフェンブリーの特許権の減損損失(1335億円)や北米事業におけるのれんの減損損失(359億円)などを計上することになったため。住友ファーマの不振は住友化学の連結業績の大幅赤字に大きく影響しており、住友化学の修正後の23年度連結コア営業損失は1490億円、純損失は3120億円となる見通しとなった。住友化学にとって過去最大の純損失となる規模で、岩田社長は「危機レベルの数値で、この事態を重く受け止めている」と述べた。

◎住友ファーマ 24年度コア営業利益予想は10億円

住友化学にとって24年度連結業績の黒字化・V字回復が必達目標となる中、住友ファーマはコア営業利益で10億円を目指すことが示された。岩田社長は「住友ファーマのポイントは大幅な赤字から24年度に水面上に浮上できるかにある」と述べ、住友ファーマのコア営業利益の黒字化に向け「徹底的なスリム化」などを進めると強調した。

さらに、「従来は住友ファーマの自律性、独自性を重視した運営をしてきたが、(住友化学として)より踏み込んだ対応を行う」と指摘。企業再生の外部専門家等の知見を活用した合理化支援、住友化学から複数の経営人材派遣を行うなどガバナンスの強化、債務保証による金融支援――を行う考えを示した。

◎販管費・研開費合理化で1080億円ねん出 日本で「一段の体制スリム化」

住友ファーマの24年度のコア営業利益10億円を達成するためには、23年度比でコア営業利益を1340億円伸ばす必要がある。現在の計画では、徹底したコスト削減とパイプラインの絞り込みによる「販管費・研究開発費の合理化」で1080億円をねん出し、北米基幹3製品(オルゴビクス、ジェムテサ、マイフェンブリー)の市場浸透の加速により240億円上乗せさせるなどして達成したい考えだ。

このうち販管費の合理化では、23年度中に2度のリストラを行い、23年度期初の2200人から23年度末に約1200人にまで減少した北米の人員数を、24年度に1100人にまで減らす計画。さらに日本でも「24年度中に一段の体制スリム化を加速させる予定」(岩田社長)だとした。日本でのスリム化の詳細には触れなかった。

◎再生・細胞医薬事業 住友化学主導で事業化へ 30年代に1000億円超目指す

研究開発の絞り込みでは、住友ファーマが既に公表している通り、27年度までの上市が期待できる抗がん剤2製品(TP-3654、DSP-5336)に経営資源を集中させる。一方、住友ファーマがこれまでに抗がん剤2製品とともに今後優先的に取り組むとしていた、iPS細胞を用いた再生医療等製品「DSP-1083」を含む再生・細胞医薬事業は、住友化学主導で事業化していく方針が明らかになった。

再生・細胞医薬事業の日米での展開加速のため、24年度中に住友化学と住友ファーマによる新会社を設立させる計画だが、岩田社長は「再生・細胞医薬のCDMO事業を含め、当社主導で再生・細胞医薬事業を加速させる」と説明した。

岩田社長は、DSP-1083がパーキンソン病を対象疾患に世界初の他家iPS細胞由来細胞製品として日本で24年度中に承認される可能性があることを引き合いに、「非常に可能性がある領域」だとの認識を示した。ただ、米国市場が主戦場であることや、年間100億円の研究開発費がかかっていることに触れながら、「住友ファーマの今の状態で、将来楽しみだからと言って、不確定な領域に費用を出し続けるのは難しい。かといって住友化学グループとして諦めるには惜しい」とし、「住友化学が中心となって研究開発費を負担しながら、将来の楽しみを育ててみようということになった」と説明した。

住友化学は再生・細胞医薬事業について、日本で27年度までに事業を本格化させ、30年代にグローバルで1000億円超の事業規模にすることを目指す。
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