厚労省は1月17日、新薬14成分28品目を承認した。アステラス製薬が開発した新しい2型糖尿病薬のSGLT2阻害薬が初登場となった。通常どおりに手続きが進めば4月の薬価収載を経て、発売となる。SGLT2阻害剤は他に5成分が承認審査中であり、発売後は激しい競争となるのは必至だ。また、鳥居薬品が開発した国内初の花粉症経口免疫療法薬も承認された。
承認された医薬品は次のとおり(カッコ内は一般名と申請企業名)
▽スーグラ錠25mg、同錠50mg(イプラグリフロジン L-プロリン、アステラス製薬):「2型糖尿病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。国内ではMSDと共同販促する予定。
腎臓の近位尿細管で糖を再吸収するSGLT2を選択的に阻害し、血中の過剰な糖を体外に排出する。用法用量は、通常50mgを1日1回朝食前または朝食後に服用し、効果不十分な場合は1回量を100mgまで増量できる。
インスリン非依存性で作用するため低血糖リスクが低い。ただし、脱水などの体液量減少に伴う有害事象や尿路感染症の懸念があるほか、海外での同作用機序の薬剤が承認されて間もない状況であることから、直後調査とは別に特定使用成績調査として▽2型糖尿病患者対象の3年間の調査▽65歳以上の2型糖尿病患者対象の1年間の調査--が予定されている。
▽トピナ細粒10%(トピラマート、協和発酵キリン):「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」を効能・効果とする薬剤で、細粒の剤型追加。2歳以上の小児にも適応がある。一部の小児や高齢者など錠剤を飲みにくい患者向けに開発した。再審査期間4年。
▽リオナ錠250mg(クエン酸第二鉄水和物、日本たばこ産業):「慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
慢性腎臓病により腎機能が低下すると、尿中へのリン排泄が高度に低下し、高リン血症を呈するようになる。リオナ錠は、消化管内で食事由来のリン酸と結合することでリンの吸収を抑制し、血清リン濃度を低下させるリン吸着剤。カルシウムを含有しないため高カルシウム血症の懸念がなく、そのほか類薬で報告のある便秘や腸管穿孔など重篤な胃腸障害の発現リスクが低い特徴があるという。1回500mgを開始用量として1日3回食直後に経口投与する。最高用量は1日6000mg。
▽サビーン点滴静注用500mg(デクスラゾキサン、キッセイ薬品):「アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤の血管外漏出」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
抗悪性腫瘍薬を静注する際に、薬剤が血管外周辺組織へ漏出すると、組織の炎症や壊死で難治性の潰瘍を形成する場合があるが、その治療薬となる。この適応では初の薬剤。
▽ザルティア錠2.5mg、同錠5mg(タダラフィル、日本イーライリリー):「前立腺肥大症に伴う排尿障害」を効能・効果とする新効能・新用量・剤型追加に係る医薬品。再審査期間4年。
尿路組織でホスホジエステラーゼ-5(PDE5)を阻害することで血管を拡張し、患部への血流や酸素供給を改善する。国内では07年に勃起不全治療薬(製品名:シアリス錠)として、09年に肺動脈性肺高血圧治療薬(アドシルカ錠)として承認されている。
▽コンサータ錠36mg(メチルフェニデート塩酸塩、ヤンセンファーマ):「注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」の効能・効果を追加する薬剤で、36mg錠を追加した。小児と成人の患者に使える。再審査期間4年。
▽サイスタダン原末(ベタイン、レクメド):「ホモシスチン尿症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
ホモシスチン尿症は、先天的な酵素欠損や代謝異常で、ホモシステイン、ホモシスチンが血中に蓄積し、知能障害、骨格異常、視力低下などを引き起こし、血栓症などで死亡するリスクが高まるケースもある。同剤は、体内のホモシステイン濃度を下げる。患者は日本では20万人に1人程度とされ、1977年~2010年までの累積では200人程度という。これまでに日本には治療薬はなかった。
▽アデムパス錠0.5mg、同1.0mg、同2.5mg(リオシグアト、バイエル薬品):「外科的治癒不適応または外科的治療後に残存・再発した慢性
血栓塞栓肺高血圧症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
慢性血栓塞栓肺高血圧症は通常、カテーテル治療を行うが、その後に再発したり外科処置ができない場合の治療薬がなかった。
▽アレグラドライシロップ5%(フェキソフェナジン塩酸塩、サノフィ):アレルギー性鼻炎などを効能・効果とし「6カ月以上7歳未満の小児の用法・用量及びドライシロップ製剤を追加する」新用量・剤型追加にかかる医薬品。再審査期間4年。
▽ジオトリフ錠20mg、同錠30mg、同錠40mg、同錠50mg(アファチニブマレイン酸塩、日本ベーリンガーインゲルハイム):「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
EGFRなどのチロシンキナーゼの活性化を阻害し、腫瘍の増殖を抑制する。非小細胞肺がんは肺がんの85%で、このうちEGFR遺伝子変異の患者は40%とされる。その推定患者数3万人のうち「手術不能、再発」の患者がこの薬剤の対象となる。1日1回40mgを空腹時に経口投与する。
類薬には中外製薬が販売するタルセバ(エルロチニブ塩酸塩)やアストラゼネカが手がけるイレッサ(ゲフィチニブ)がある。
初の花粉症経口免疫療法薬も
▽シダトレンスギ花粉舌下液200JAU/mLボトル、同舌下液2000JAU/mLボトル、同舌下液2000JAU/mLパック(標準化スギ花粉エキス原液10000JAU/mL、鳥居薬品):「スギ花粉症(減感作療法)」を効能・効果とする新投与経路医薬品。減感作療法を目的とした皮下注薬はあるが、舌下液は初承認。再審査期間6年。
スギ花粉から抽出したエキスの舌下液剤。原因アレルゲンを直接舌下に滴下することで、アレルゲンに対する過敏性を減少させる。皮下注製剤では、数年間の治療で寛解状態に至ることが確認されているが、皮下注薬では通院を要するほか、稀ではあるものの重篤なアナフィラキシーショックがあった。舌下液では治療アドヒアランスの向上や副作用の低減が見込まれる。舌下液の治験では、2シーズンにわたり毎日投与することにより鼻症状の有意な低下が確認された。
同剤はアレルゲンを投与する治療法で、誤った使用は症状の悪化を招くおそれがある。そのため、処方は企業主催の講習を受けた医師のみとし、調剤の際も当該医師が処方したことを確認する流通管理を行い、適正使用を図る。
▽ノボエイト静注用250、同静注用500、同静注用1000、同静注用1500、同静注用2000、同静注用3000(ツロクトコグ アルファ遺伝子組換え、ノボノルディスクファーマ):「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
▽ザイザルシロップ0.05%(レボセチリジン塩酸塩、グラクソ・スミスクライン):アレルギー性鼻炎などを効能・効果とし「6カ月以上7歳未満の小児の用法・用量及びシロップ製剤を追加」する新用量、剤型追加にかかる医薬品。再審査期間は残余(平成30年10月26日まで)
▽アドセトリス点滴静注用50mg(ブレンツキシマブ ベトチン遺伝子組換え、武田薬品):「再発又は難治性のCD30陽性ホジキンリンパ腫、未分化大細胞リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。
適応疾患の推定患者数は約1000人。抗ヒトCD30モノクローナル抗体と微小管阻害剤からなる抗体薬物複合体で、腫瘍細胞に発現するCD30に結合することで、細胞内に取り込まれ、その際に微小管阻害剤が腫瘍を壊死させる作用を示す。