薬食審・第二部会 新薬4製剤を審議、承認了承 HER2陽性乳がん治療薬「T-DM1」など
公開日時 2013/08/27 03:52
厚生労働省の薬食審医薬品第二部会は8月26日、新薬4製剤の承認の可否を審議し、全て承認することを了承した。HER2陽性の手術不能・再発乳がんの治療薬で、抗体医薬トラスツズマブに化学療法剤であるエムタンシンを結合させた「T-DM1」(製品名:カドサイラ点滴静注用、会社名:中外製薬)などで、審議品目は順調なら9月中にも正式承認となる。
承認が了承されたのは次のとおり(カッコ内は成分名と会社名)。
【審議品目】
▽レルベア100エリプタ14吸入用、同30吸入用、同200エリプタ14吸入用、同30吸入用(ビランテロールトリフェニル酢酸塩/フルチカゾンフランカルボン酸エステル、グラクソ・スミスクライン):「気管支喘息(吸入ステロイド剤および長時間作動型吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品、新医療用配合剤。再審査期間8年。米国では5月に慢性閉塞性肺疾患(COPD)の適応症で承認済みで、欧州では喘息とCOPDの適応で承認審査中。日本では昨年9月に気管支喘息とCOPDで申請していたが、COPDについては申請データでは評価が不十分として取り下げていた。
長時間作動型吸入β2刺激薬(LABA)と吸入ステロイド薬(ICS)の配合剤。LABAであるビランテロールトリフェニル酢酸塩が新有効成分に該当。1日1回吸入する。類薬はLABAのサルメテロールキシナホ酸塩とICSのフルチカゾンプロピオン酸エステル配合剤(製品名:アドエア)や、ICSのブデソニドとLABAのホルモテロールフマル酸塩水和物の配合剤(シムビコート)がある。
▽ウルティブロ吸入用カプセル(インダカテロールマレイン酸塩/グリコピロニウム臭化物、ノバルティスファーマ):「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解(長時間作用性吸入抗コリン剤および長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」を効能・効果とする新医療用配合剤。再審査期間は残余(平成32年9月27日まで)。世界初承認で、現在欧州で承認審査中。
長時間作用性β2刺激剤(LABA) のインダカテロールマレイン酸塩(製品名オンブレス)と長時間作用性吸入抗コリン剤(LAMA)のグリコピロニウム臭化物(同シーブリ)の配合剤で、初のLABA/LAMA配合剤。1日1回吸入する。
▽注射用レザフィリン100mg(タラポルフィンナトリウム、Meiji Seikaファルマ):「原発性悪性脳腫瘍(腫瘍摘出手術を施行する場合に限る)」を追加とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。海外承認なし。
腫瘍組織への集積性がある光感受性物質。患者に投与した後に組織へレーザー光を照射することで光感受性物質に光化学反応を引き起こし、細胞を変性・壊死させる。レザフィリンは早期肺がんで承認されており、原発性悪性脳腫瘍に適応追加された。治療に用いるレーザー機器は新規承認として審査中。原発性悪性脳腫瘍では、静脈内注射後22~26時間後にレーザー光を病巣部位に照射する。
▽カドサイラ点滴静注用100mg、同点滴静注用160mg(トラスツズマブ エムタンシン遺伝子組換え、中外製薬):「HER2陽性の手術不能または再発乳がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。優先審査品目に指定されていた。米国ほか2カ国で承認済みで、欧州では承認審査中。
トラスツズマブ(製品名:ハーセプチン)と化学療法剤であるエムタンシンが結合された抗体薬物接合体。トラスツズマブによるHER2 シグナル伝達阻害や抗体依存性細胞障害作用とともに、エムタンシンを直接HER2 陽性のがん細胞の内部に送達し、がん細胞を破壊する。3週間隔で点滴静注する。セカンドラインの治療と位置付けられ、ハーセプチンで効果不十分または再燃した患者に用いる。
【報告品目】
▽ゲンタシン注10、同40、同60(ゲンダマイシン硫酸塩、MSD):従来より高用量投与を認める新用量医薬品。
新しい用法・用量は、成人には「1日3mg(力価)/kgを3回に分割して筋肉内注射または点滴静注する。増量する場合は、1日5mg(力価)/kgを限度とし、3~4回に分割して投与する。」
小児には「1回2.0~2.5mg(力価)/kgを1日2~3回筋肉内注射または点滴静注する。」
▽フィブロガミンP静注用(乾燥人血液凝固第XIII因子、CSLベーリング):「後天性血液凝固第XIII因子欠乏による出血傾向」の効能・効果を追加する新効能医薬品。
この適応は、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が指摘され、同省からの開発要請を受け公知申請していたもの。そのため特例ですでに保険適用されている。これまでは「先天性」にのみ適応があった。