PhRMAメンバー 73剤の抗HIV/AIDS薬を開発中
公開日時 2012/12/04 04:00
米国研究製薬工業協会(PhRMA)のメンバー企業は現在、73剤におよぶ抗HIV/AIDS治療薬およびワクチンを開発中だ。PhRMAが11月29日発表した報告書「開発中の薬剤 HIV/AIDS」(Medicines in Development HIV/AIDS)で明らかになった。同報告書は、PhRMAが発行している「開発中の薬剤」シリーズの一環。
2010年の世界における新規のHIV感染者数は、01年の310万人から270万人に減少。HIV関連疾患死亡者数も05年のピーク時220万人から10年は180万人に減少した。世界的なHIV感染予防への喚起や薬剤の進歩がその背景にあるが、HIV/AIDSの脅威は去っていない。
生命への脅威ばかりでなく社会経済的な影響も看過できない。現在、HIV感染の1生涯分の治療費は1感染あたり37万9668ドル(10年価値)といわれている。そのため、予防介入経費が37万9668ドルよりも安ければ費用対効果があるということになる。
抗レトロウイルス剤が主流となったHIV治療の年平均コストは、06年は1万9912ドル、10年には2万3000ドルだった。ある研究では、91年~06年の米国の予防プログラムによって回避できた医療費の削減額は、36万1878人の感染を回避することになり、金額に換算すると1299億ドルに達するという。
過去30年間で、配合剤を含め約40剤の抗HIV/AIDS治療薬が承認されてきた。検査法も大きく進歩し、早期診断が可能となり、早期治療が進んだ。次々に登場した新規薬剤はHIV感染患者の生命を伸ばし、HIV感染症を慢性疾患とし、今後の進歩への期待を持たせることが可能になった。
現在、PhRMAメンバー企業はHIV感染予防ワクチンを開発中だが、仮に人口の3分の1に50%有効なワクチンが投与されるだけで、今後15年かけて新規のHIV感染を24%減少させるという試算も出ている。
PhRMAメンバー企業が開発中の73剤の薬効別内訳は、40剤が抗ウイルス剤、25剤がワクチン、4剤の遺伝子治療、4剤が免疫調整剤である。このなかで、特徴ある薬剤候補には、(1)ウイルスの病原面を除去するためにHIV-1由来の遺伝子素材を使用するアンチセンス遺伝子療法(2)ウイルス複製の抑制とHIV感染細胞の破壊を助けるDNAプラスミドから構成された経皮ワクチン(3)HIVウイルスが新しい細胞に付着し、細胞膜を破ることを防ぐことを目的としたファースト・イン・クラスの薬剤―などがある。
PhRMAのJohn J Castellani理事長兼CEOは、「HIV/AIDSとの戦いにおいて信じられないほどの進歩を成し遂げたが、いまだそれは世界の脅威であり、患者へのより良い治療法の提供へ協力して取り組むことは難しい」としながらも、「開発中の73剤は、HIV/AIDSのより良い治療と予防への大きな希望だ」と今後の開発促進への期待感を示した。
同報告書では、現在開発中の薬剤を開発段階に掲載した一覧のほか、現在までに承認された抗HIV/AIDS薬のNRTI(ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤)、PI(プロテアーゼ阻害剤)など種類別一覧、疫学的データなどを掲載している。