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ギリアドのブライスティング社長 抗HIV薬・ツルバダ、国内初の予防適応取得に意欲

公開日時 2023/10/06 04:49
ギリアド・サイエンシズのケネット・ブライスティング社長は10月5日に開催したHIV/エイズメディアセミナーで、抗HIV薬・ツルバダ配合錠がHIV-1感染症の予防適応を取得する国内第1号製品になる可能性が高いとの認識を示した。この予防投与は「PrEP」(プレップ、暴露前予防内服)と呼ばれるもので、世界ではHIV感染予防戦略の中心に位置づけられている。ブライスティング社長は、「PrEPはHIVを終結させるための重要なツール。当社はHIVの流行を全世界で終わらせることにコミットしており、日本においても複数のステークホルダーと協力している」と述べた。

◎ギリアド「公知申請を目指す」

ツルバダのHIV-1感染症に対する予防投与は、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が8月30日に医療上の必要性を認め、ギリアド・サイエンシズに開発要請する流れとなった。ツルバダの予防適応の承認申請に関し、同社広報部は「今後、厚労省からの要望があったら、公知申請を目指す」としている。

予防適応の保険適用に関しては、HIV感染に関する6つの当事者団体とともに21年に結成したHIV/AIDS啓発活動コンソーシアム「HIV/AIDS GAP6」のメンバーとともに、「必要とする方々へ提供できるよう保険適用を含め検討していく」と回答した。

◎国立国際医療研究センター・田沼順子氏 PrEPを制度化していくことが大事


セミナーに登壇した国立国際医療研究センターのエイズ治療・研究開発センター医療情報室長の田沼順子氏(写真)は、PrEPは現在、個人輸入で行われ、「PrEPユーザが増えてきている」と指摘した。個人輸入は主にエイズの拠点病院ではないクリニック経由で行われているという。

課題として、安全性に係る情報が十分提供されない可能性があることや検査されないことなどがあるとし、「(PrEPを)しっかり制度化していくことが大事」と話した。保険適用に関しては、「日本では予防的に投与することに対して相当ハードルが高い」と述べ、PrEPへのアクセスを確保するためジェネリックの活用を議論する必要性にも触れた。

◎「日本でのHIVの流行を30年までに終結させる」

国連合同エイズ計画(UNAIDS)は2030年までにHIV流行を終結させる目標を掲げている。ブライスティング社長は、UNAIDSの終結目標を引き合いにしながら、「我々は日本でのHIVの流行を30年までに終結させることを目指している」とし、「これは30年までに新たなHIV感染を起こさせないということを意味している」と説明した。そして、コンソーシアム「HIV/AIDS GAP6」のメンバーや医療関係者、政府関係者などと緊密に協力して、PrEPの国内導入や早期治療につながる検査機会の充実などに取り組む姿勢をみせた。

◎「HIV/AIDS GAP6」 厚労相に国内HIV/エイズの流行終結に向けた要望書提出

「HIV/AIDS GAP6」は、日本におけるHIV/エイズの流行終結に向けた要望書をまとめ、8月31日に加藤勝信厚労相(当時)に提出した。要望事項は、(1)HIVの流行終結の目標発表と具体的な方策の策定、(2)HIV検査機会の多様化(一般医療機関における検査機会の導入及び強化、HIV郵送検査の普及に向けた制度的課題の解決)、(3)地域で安心して医療が受けられるHIV陽性者への医療提供体制の整備、(4)HIV感染予防のための選択肢の拡充及び啓発、(5)HIV/エイズに対する社会全体の理解向上に向けた対策――の5つとなる。

この中でHIV感染予防のための選択肢の拡充策のひとつにPrEPの国内実施を挙げ、「早急に保険適用するとともにガイドラインの整備等、普及のための取り組みを検討してもらいたい」と求めた。

また地域における医療提供体制の整備に関しては、「全国の一般医療機関に対して、HIV感染を理由にした診療拒否が行われないよう更なる対策と周知を早急に実施してもらいたい」と訴えた。この課題に対し、セミナーに登壇した「HIV/AIDS GAP6」メンバーのはばたき福祉事業財団理事長で、薬害エイズの被害者でもある武田飛呂城氏は、「薬害エイズ患者はHIV感染から40年近く経過し、50代前半がボリュームゾーンでかなり高齢化が進んでいる。眼科、整形外科、皮膚科などの受診が必要になっているが、地域の病院ではなかなか診てくれない」と現状を紹介した。そして、HIV/AIDSに関連した体調不良は専門病院で、一般的な疾患は地域で診てもらえる体制づくりを強く求めた。

田沼氏も、医療提供体制の整備は「すごく重要な問題」だとし、「HIV患者だからといって特殊な感染対策は全く必要なく、標準予防策により、まず院内感染しない」と指摘した。首都圏の医師を対象とした意識調査で約半数の医師がHIV患者の治療に消極的との結果が示されていることにも触れながら、「絶対に克服しないといけない偏見だと思う」と強調した。
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