メーカー公取協 温度管理等が必要な医薬品の患者宅への配送コスト 製薬企業による負担を是認
公開日時 2024/05/27 04:52
医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(メーカー公取協)の杉山幸成専務理事は5月24日の通常総会で、処方された医薬品の患者宅への配送に関する事前相談が2023年度に4件あったことを報告した。杉山専務理事は、規約違反を未然に防止するための事前相談の内容が、「患者が受益者となるような案件が目立つ状況」だとし、「規約は医療機関に対する景品類提供を規制する主旨・目的だが、この主旨・目的に照らして適切に対応した」と述べた。
杉山専務理事は総会後、メディアの取材に応じた。医薬品の患者宅への配送の事前相談は、持ち帰るには重く、温度管理が必要な医薬品を医療機関・薬局から患者宅に配送する際、その配送コストを製薬企業が負担することの規約上の適否の相談だったと説明した。その上で、「このような医薬品の患者宅への無料配送は、患者さんのためにもなり、医薬品の適正使用の観点でも是認できるのではないか」と判断したと言い、「メーカーからの発意であれば、規約上は問題ない」と結論付けたと述べた。
なお、仮に医療機関・薬局が医薬品の無料配送サービスを行うとPRし、その配送コストを製薬企業にしわ寄せしてきて応じた場合は、「規約に引っかかる」とも指摘した。
◎23年度 自主的改善事案が6件、弁当・飲食の違反多く 本部・支部が処理した事案なし
この日の総会では、23年度の規約違反事案の報告があった。本部や支部が規約違反として処理した事案はなかった。一方で、支部相談グループで受け付けた自主的改善事案(会員企業が自ら違反を発見し、改善案とともに報告した事案)は6件あった。自社医薬品の説明会における弁当提供に関するものが多く、役割者に対する慰労会の一人当たり上限額(2万円)を超えたとの事案もあった。
なかには、「医師に対し飲食(20,120円)を提供した。MRはこれを自社医薬品のWeb講演会を複数の医療担当者と視聴し、その際に弁当を10個提供したように装って精算処理したが、国税庁の調査により1医師との飲食代であることが発覚した」とのケースもあった。
弁当・飲食以外では、MRが約5年にわたり、医師からの要請に応じて、患者に対して自社医薬品の処方に関する高額医療費の説明を行っていたという事案があり、担当MRの交代に伴い発覚した。これは過大な労務提供と判断された。
◎学会等との共催セミナーの共催費 ネットのみやハイブリッド形式でも提供可
この日の総会では、24年度の事業計画が了承された。この中で、Web講演会を医師1人で視聴した場合は茶菓・弁当は提供不可であることなどを明示した“
自社医薬品のWeb講演会に関する考え方”の周知に引き続き取り組むほか、24年4月1日施行の“学会等との共催セミナーにおける共催費の考え方”の周知に取り組むことも盛り込んだ。
学会等との共催セミナーは、これまでリアルの学会会場での集合形式を想定していた。このためインターネット回線を利用した形式や、リアルとネットを合わせたハイブリッド形式など様々な形態の学会等共催セミナーに対して一律に規約上の解釈をすることが難しくなった。また、「いわゆる共催費」には会場借用料や設備使用料等の実費である開催費用と、実費以外のものが含まれて募集されていることもあり、「その実体がわかりにくい」との側面もあった。
そこでメーカー公取協は、時代に即した共催費の規約上の考え方に再整理。共催費は、「製造販売業者にとって効率的・効果的に自社医薬品関連情報を提供するための対価であり、開催形態にかかわらず、広告料として判断する」ことにした。ただし、その共催費(広告料)が「社会通念を大幅に超えるものではない相応の対価であることに留意する」ことも明記した。
◎飲食等提供ルール 「いろんな意見を聞きながら総合的に見直しを行う」
このほか事業計画には、「飲食等提供ルールの見直しに向け、継続して検討を行う」ことも盛り込んだ。これは自社医薬品の説明会に伴う茶菓・弁当の提供は1人単価3000円まで、役割者に対する慰労等の飲食は1人単価2万円まで――などのルールの見直しを指す。
杉山専務理事は、「3000円や2万円といった金額に今でも正当性や妥当性があるのか。金額上限が高すぎるとの議論がある一方で、インフレ時代にこの額で良いのかとの議論もある。決め打ちで縮減する、拡大するといった話ではない。いろんな意見を聞きながら総合的に見直しを行う」と説明した。見直しのスケジュールについては、「まだそこには至っていない。公正取引委員会など所管官庁からいつ内諾を得られるのかということもある」と述べた。