第Xa因子阻害剤・イグザレルト 大規模PMS実施で安全性確立へ
公開日時 2012/02/24 04:03
バイエル薬品は、選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤・イグザレルト錠(一般名:リバーロキサバン)の安全性確立に向け、大規模PMSの実施を検討していることが、本誌取材で2月23日に分かった。PMSだけでなく、枠組みを広げた臨床研究を行うことで、全例のイベント集積も視野に入れる。出血や脳梗塞などイベントを発症した際に訪れるのは、PMSで契約した施設以外であるケースも少なくないという。そのため、枠組みを広げることで、強固な安全性・有効性のエビデンスを構築し、医師からの信頼を得たい考えだ。
同日開かれたバイエル薬品主催のプレスセミナーで講演した大阪府立成人病センター総長(大阪大学名誉教授)の堀正二氏は、新規抗凝固薬の発売に際し、「(製薬企業は)市販後調査をもっときちんとやるべきだ」との考えを示した。医薬品医療機器総合機構(PMDA)は2000例規模のPMSを求めることも少なくないが、「ある一定の期間、しっかりやると、efficacy(有効性)が見えたり、real world(実臨床)の問題点も見えてくる。早く承認したら、後のフォローをきっちりやることが大切」と述べ、PMSの重要性を強調した。
◎堀氏「CHADS2スコア1点の患者も投与対象に」
イグザレルトは、「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」の適応で1月18日に製造販売承認を取得した、1日1回の経口抗凝固薬だ。
承認取得のエビデンスとなった「J-ROCKET AF」は、日本人1278例を対象に行われた臨床試験で、欧米など海外で実施された臨床試験「ROCKET AF」よりも減量して試験を実施。“日本人のための用量”でのエビデンスを構築した。
対象患者は、心房細動における虚血性脳卒中の発症リスク評価スケールである、“CHADS2スコア(0~6点)”が平均3点を超える(リバーロキサバン群:3.27点、ワルファリン群:3.22点)比較的ハイリスク群となっている。
一方、すでに発売されている新規抗凝固薬・ダビガトランは、日本循環器学会が昨年8月に策定した「心房細動における抗血栓療法に関する緊急ステートメント」では、CHADS2スコアが1点の低リスクでも投与が推奨されている。
堀氏は、イグザレルトの投与対象について、脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の既往患者などを挙げた。その上で、承認にあたり、“ハイリスク群”などの制限が設けられなかったことや、CHADS2スコアの点数が上昇するのと、出血リスクが増加する一方で、CHADS2スコアの点数による層別解析で有効性・安全性に差がみられないことなどから、「CHADS2スコアが1点でも、投与対象としてもよいのではないか」との見解も示した。