中外製薬が２月２日に発表した2010年度（１－12月）決算は、インフルエンザの流行が小規模で抗ウイルス薬タミフルの売上が09年度より７割以上も落ち込んだことが大きく影響し、２ケタの減収減益となった。ただ、その中でもがん領域、骨・関節領域の売上は伸ばした。関節リウマチなどに用いるアクテムラは国内外の合計売上高が09年度より５割増、11年度も６割増を計画し、400億円突破を見込んだ。

腎性貧血治療薬エポジンは、競合激化と18.8％の薬価改定の影響を受け44億円減の400億円。10年５月にキッセイ薬品と日本ケミカルリサーチが発売したバイオシミラーの影響については執行役員の戸早正昭営業本部長は、「（バイオシミラーは）我々のお客様の仲でも採用は増えているようだが、一軒あたりの処方例数は少ないようだ。バイオシミラー対策はうまくいった。11年度も適切に対応していきたい」と話した。２月１日のキッセイ薬品11年３月期第３四半期決算によると、通期目標24億5000万円に対し７億9800万円という状況。ほか、競合製品を販売する協和発酵キリンは、中外が09年７月に承認申請した月１回投与の新規腎性貧血治療薬ミルセラ（海外名）の影響を見込んでいるが、中外としても11年内の承認を視野に置いている。

永山社長　アンメット・ニーズの治療薬開発を追求

永山治社長兼CEO（写真）は同日、東京都内で開いた決算説明会に出席し、国内トップ製薬企業を目指す中で「アンメット・メディカルニーズ（UMN）の開発をしていく」と述べ、UMN志向の強いロシュグループの中で、その志向をより強めて新薬開発に取り組む姿勢を強調した。

同社長は今後の方針として患者志向をより強め、革新を追求するとし、その具体的な姿勢としてUMNに対する新薬開発を挙げた。UMNへのアプローチ手法について「病気からというより、新しい作用メカニズムから、どのような疾病に適用できるかを考えたい」との考えを示した。市場が小さい領域も少なくないが、事業性については、市場は日米欧のみならず成長著しい新興国でも公的保険制度整備による治療薬へのアクセス改善により拡大していくとして「患者数は少なくとも、多くの国で浸透させるビジネスモデルにせざるを得ないと思う」と話した。

【連結業績（前年度比）通期予想（10年度比）】
売上高　　3795億0900万円（11.5％減）4030億円（6.2％増）
営業利益　662億3800万円（19.8％減）750億円（13.2％増）
経常利益　650億8800万円（28.0％減）755億円（16.0％増）
純利益　　414億3300万円（26.8％減）425億円（2..6％増）

【製品売上（前年度比％）通期予想（10年度比％）、億円】
がん領域 1412（14.1）1535（8.7）
アバスチン　526（50.7）648（23.2）
ハーセプチン　253（-14.8） 246（-2.8）
リツキサン 230（9.0） 235（2.2）
ゼローダ　107（62.1） 117（9.3）
ノイトロジン 104（-8.0） 104（0.0）
タルセバ 79（36.2） 88（11.4）
カイトリル 55（-36.0）39（-29.1）
フェマーラ 32（33.3）38（18.8）

骨・関節領域　626（8.7） 688（9.9）
エビスタ 187（4.5） 175（-6.4）
アクテムラ 141（67.9） 218（54.6）
スベニール 136（-0.7） 144（5.9）
アルファロール 123（-9.6） 111（-9.8）

腎領域 574（-5.9）567（-1.2）
エポジン 400（-9.9）392（-2.0）
オキサロール 120（13.2）124（3.3）
レナジェル 49（-7.5）46（-6.1）

移植・免疫・感染症領域 258（-1.5）252（-2.3）
ペガシス 105（-5.4）107（1.9）
コペガス 45（-8.2） 47（4.4）
ロセフィン 54（-1.8）37（-31.5）
セルセプト 52（18.2） 58（11.5）

海外 330（-1.8）387（17.3）
アクテムラ 127（42.7）217（70.9）
ノイトロジン 170（-20.2）136（-20.0）
シグマート 22（15.8）22（0.0）

タミフル　182（-76.1）122（-33.0）