富士製薬の森田周平代表取締役社長は11月26日、2029年までの新中期経営計画を発表した。女性医療とバイオシミラー、グローバルCMOの各事業領域を中心に成長を加速させ、29年9月期の売上高800億円を目指す方針を示した。特に成長の核として据えた女性医療について、森田社長は「女性医療でナンバーワンとなり、未解決・未充足の女性の健康課題解決の使命を果たしていく」と強調した。

◎前中計は目標未達も成長投資で「種をまいた５年間」　新中計での回収意気込む

24年9月期までの前中期経営計画では、北米やASEANへの出遅れによる海外事業の大幅な未達などを要因に売上高や営業利益率の目標達成とはならなかった。一方で、女性医療は107億円から203億円と着実に成長するなど一定の成果も得た。森田社長は「重点戦略や目標設定が当社のケイパビリティに照らして過大だった。また、先行投資による有利子負債の増加、収益性・資本効率の低下も課題としてあった」と振り返った。また、他社からの承継や販売権取得、女性医療の新薬開発など成長投資に493億円を投じ「種をまいてきた５年間であり、新中計期間でしっかり回収していく」と意気込んだ。

新中期経営計画の経営目標では、売上高800億円（24年9月期461億円）を掲げたほか、営業利益100億円（同38億円）、営業利益率12.5％（同8.4％）、ROE10.0％（同5.9％）―などをKPIとした。売上高の内訳では、女性医療が380億円（同203億円）、バイオシミラーが150億円（同18億円）、グローバルCMOが90億円（同67億円）―との計画を示した。特に売上高に対する女性医療とバイオシミラーの構成比は24年9月期の48％から29年9月期には66％まで引き上げる考え。

◎森田社長　12月に上市のアリッサ「100億円規模に育てたい」　LEP市場シェア15％目指す

女性医療では、グローバルにおけるウィメンズヘルス市場の成長予測を示した上で、森田社長は「日本国内では疾患認知が遅れていたり、産婦人科の受診率が低かったりしており、ホルモン剤による治療も遅れている。疾患啓発を通して、まだまだ日本国内の市場はグローバル市場以上に拡大すると予測している」との見通しを示した。

そのうえで、月経困難症治療薬・アリッサ配合錠について「100億円規模に育てていきたい」と成長ドライバーとして位置付けた。アリッサ配合錠は12月の上市に向けて、90人体制の女性医療領域専任MRを配置するほか、メディカルアフェアーズ部の設置、サードパーティーによるデジタルプロモーションなど積極的に準備を進めている。森田社長は「速やかな市場浸透を進め、ピーク時にはシート数ベースでLEP製剤（低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤）市場のシェア15％を獲得していきたい」と期待を込めた。

◎バイオシミラー　ウステキヌマブBSに続き４製品上市予定

バイオシミラーでは、アイスランドのAlvotech社とのパートナーシップ契約を通じ、すでに上市済みのウステキヌマブBSに加え、中計期間中に４製品の承認取得と上市を予定。現在は完成品輸入に頼っているが「将来的には安定供給に万全を期すため、国内でも製剤化が可能になるよう準備を進めていく」とした。

◎グローバルCMO　タイ子会社と富山工場で製造受託拡大目指す

グローバルCMOでは、子会社であるタイのOLIC社と富山工場（富山市）での製造受託拡大を狙う。タイではすでに米国向けの製品出荷を控えているほか、「日本の安定供給不安を背景に、日本国内の企業からも相談を受けている」と明かした。また富山工場でも「米国向けプロジェクトが走っており、中計期間中に米国向け出荷ができるように進めていきたい」と述べた。

◎次の成長に向けてシーズ探索や研究開発を強化　CVCやリサーチハブ設置も検討

次の成長に向けた戦略投資として森田社長は「もっと広く早い段階から目利きをして、シーズの探索や研究開発に力を入れていきたい」と強調。具体的な方針として「ターゲットの中心は女性医療で、創薬エコシステムに入っていくためにコーポレートベンチャーキャピタル（CVC）の設置や、女性向けの新規化合物が盛んに研究されている北米やヨーロッパでのリサーチハブの設置も検討していきたい」と述べた。