米国におけるアルコール依存症患者は推定1800万人という。加えて3000万人は同依存症の基準を満たさないものの多量飲酒者で依存症のリスクが高い。そのため、米国ではアルコール関連の障害に伴う社会的損失は年間1850億ドルにも及ぶという。ただ、アルコール依存症治療薬の開発は進んでおらず、官民協力による研究開発体制のさらなる強化が求められているところだ。
米国立衛生研究所(NHI)所属の国立アルコール乱用・アルコール依存症研究所(NIAAA)は、アルコール依存症治療薬開発には官民協力が不可欠との観点から、約2500万ドルを予算計上し、製薬企業等と新薬の研究・開発に取り組んでいる。しかし、アルコール依存症治療薬の開発は遅々として進んでいないのが実態だ。
FDAは1950年ごろにアルコール代謝を阻害し飲酒をすると気分が悪くなる薬剤Antabuse(disulfiram)を承認した後は、94年のデュポン・ファーマによるオピオイド受容体阻害剤ReVia(naltrexone)まで新薬の承認を行っていない。
最近の状況をみても、04年にフォレスト・ラボラトリーズの神経伝達物質グルタミン酸塩およびGABA(γアミノ酪酸)に作用するCampral(acamprosate)を承認、06年にはAlkermesのnaltrexone徐放製剤Vivitrolを認可したのみだ。現在の市場の大半は、この2剤で分け合っている格好だ。
Alkermesが8月に発表したVivitrolの第1四半期売上は420万ドルとなった。アナリストによると、同剤の売上高は09年の1600万ドルが、5年後の2014年には6900万ドルまで伸張すると予測する。Camprelの売上高も同程度まで伸びるとの予測もある。今後米国では、アルコール依存症予備群の増加とともに、これに伴う医療コストも増大することから、同領域の新薬開発を望む声が高まっている。
(The Pink Sheet 8月10日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから