住友ファーマ・木村社長 MRによる全国カバー「非常に厳しくなる」 約700人の早期退職者募集で
公開日時 2024/08/01 04:52
住友ファーマの木村徹代表取締役社長は7月31日の2024年度第1四半期決算説明会で、約700人の早期退職者募集に伴う国内営業への影響について、「(MRによって)全国をカバーすることは非常に厳しくなる。全国を万遍なくカバーするところから変換しないといけなくなる」との認識を示した。2型糖尿病治療薬・ツイミーグは今後の日本市場における成長ドライバーのひとつで、MRによる情報収集・提供活動は不可欠。この点について木村社長は、「そこは我々としても課題だと思っている」としたものの、「相当MR活動は工夫してやっていかないといけなくなる」と話すにとどめ、具体的な対応策の言及はなかった。
住友ファーマはこの日、24年度のコア営業利益の黒字化に向けた事業構造改革の一環として、日本で早期退職者を募集すると発表した
(記事はこちら)。対象者は2024年11月30日時点で40歳以上かつ勤続5年以上の社員だが、生産部門と再生医療担当部署の社員は含まない。対象者は約1500人、募集人員は約700人のため、今回、対象者の5割近くを削減することになる。この削減数は住友ファーマとして過去最大規模となる。
◎「日本セグメントとして赤字にならないように」 販管費70億円程度の減少見込む
木村社長は約700人の早期退職者を募集することにした理由について、「日本は製品構成が非常に厳しくなる」と指摘した上で、「日本セグメントとして赤字にならないように、黒字を継続できるように人件費、販管費の削減を考えた結果、700人の削減ということになった」と説明した。約700人削減で販管費は70億円程度減少する見込みだとした。
日本市場では、トレリーフに24年6月に後発品が参入し、同年12月にエクア、25年6月にエクメットに後発品が参入する見通し。23年度は3剤合計で国内売上の4割強を占めており、後発品参入後の製品構成においても、日本セグメントして収益確保できる体制への見直しは喫緊の経営課題のひとつになっていた。
◎MR数減少による売上減「ある程度、覚悟しないといけない」
現在950人体制の国内MR数(マネジャーを除くと860人体制)が早期退職者募集を経てどの程度の人員数になるのか、また国内営業に支障が出ないのかも気になるところ。これに木村社長は、「一番大きな組織の営業部門からたくさんの応募者があると思うが、具体的な数字は持っていない」と述べ、早期退職者募集後のMR数に関する言及はなかった。ただ、現在のようなMRによる全国カバーは「非常に厳しくなる」との認識を示したほか、「人数が減ることによる売上減もある程度、覚悟しないといけない」と指摘。早期退職者募集後の新たな営業本部で、早急に影響を最小化するための営業方法などを検討する構えをみせた。
また、「中長期的には、より特長のある製品をしっかり患者さんに届けていく。今までのようなMR1000人体制でなくてもしっかり売上が上がるような製品に移行していく」と将来展望も示した。
◎北米基幹3製品の売上収益合計 「計画に対して強含みの進捗」
23年2月の米国での“ラツーダクリフ”により未曾有の危機に立たされている住友ファーマは、23年度に1330億円のコア営業損失、3150億円の純損失を計上した。24年度はコア営業利益の黒字化が必達目標で、▽売上収益の拡大、▽コスト削減、▽将来の成長シーズの確保――の方針に従い、事業構造改革を進めている。
売上収益の拡大では、北米基幹3製品と位置付ける▽前立腺がん薬・オルゴビクス、▽子宮筋腫/子宮内膜症薬・マイフェンブリー、▽OAB治療薬・ジェムテサ――の早期の価値最大化に取り組んでいる。基幹3製品の24年度第1四半期の売上は、オルゴビクスが1億800万ドル(前年同期比約59%増)で計画達成率は125%と好調だった。マイフェンブリーは1900万ドル(約46%増)で計画達成率は88%。ジェムテサは7800万ドル(約23%増)で計画達成率は98%だった。
木村社長は、基幹3製品の売上収益合計は「24年度第1四半期時点で計画に対して強含みの進捗」としたが、不確定要素もあるとして「注意深く見ていく」と述べた。