流改懇1年ぶり開催 商慣行改善見られるも課題多く
公開日時 2011/07/01 04:00
厚生労働省は6月30日、「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」を約1年ぶりに開催した。会議では2010年度の流通改善に関する取り組みが報告され、医療機関が購入するすべての医薬品に一律の値引き率を適用する「全品総価取引」は解消に向かっているとしたものの、▽交渉から6か月たっても取引価格が決まらない「長期未妥結」▽仕入れ価格と納入価格が逆転することで発生する医薬品卸の「一次売差マイナス」――については、必ずしも改善の方向には進んでいないと総括した。
長期未妥結が起こる原因のひとつに、「交渉が長期化すれば価格が安くなる」との医療機関の意識があるとされる。病院によっては購入価格が0.1%違うだけで2000万~3000万円の影響があるという。ただ、医療機関側委員の小山信彌氏は、この背景に厳しい病院経営があることを強調し、長期未妥結の原因が医療機関側だけにあるのではないことを訴えた。
一次売差マイナスに関しては医薬品卸側委員の松谷高顕氏が、製薬企業と医療機関それぞれが想定する「製品の値ごろ感」の乖離が大きいことを理由の一つに挙げ、「医薬品卸は過去最低の決算をやってしまった」などと語った。
これらの課題を解決するため医薬品卸側が早期妥結に対するインセンティブを話し合う部会の設置を提案。これに流改懇の嶋口充輝座長は、「もう少し全体で話し合ってからのほうがいい」と設置時期はまだ先になるとの考えを示した。ただ、流改懇終了後、小山委員は本誌取材に、「流通改善をさらに進捗させるための一手は、(インセンティブを検討する)部会だと思う」と話し、早い段階での部会設置に期待感を示した。
◎新薬創出加算品目 仕切価設定を引き上げ3割 維持4割
厚労省は流改懇に、製薬企業から医薬品卸に示される仕切価、医薬品卸の最終原価、医療機関に対する納入価に関する資料を提示した。それによると、仕切価は00年度に対薬価で88.53%だったが、09年度は89.56%と上昇していることが判明した。一方、納入価は、00年度が90.34%と仕切価を上回っていたものの、03年度に逆転、09年度は86.80%となった。
また製薬企業側は流改懇で、日本製薬工業協会が行った新薬創出・適応外薬解消等促進加算を受けた品目の仕切価設定に関するアンケート結果を発表した。それによると、10年度の加算品目で仕切価を上げたのは全体の3割、維持が4割、下げたものが3割だった。また、後発品のある品目(=長期収載品)では、仕切価を上げたものが全体の1割、維持が5割、下げたものが4割だった。