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厚労省 「一社流通」で医療機関・薬局に実態調査実施へ 「安定供給上、大きな問題では」と指摘も

公開日時 2024/10/11 06:30
厚労省の「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」は10月10日、医療機関・薬局に対し、“一社流通”をめぐるアンケート調査を行うことを了承した。流通改善ガイドラインで求められている「一社流通を行う理由」について適切な情報提供を行わないなど、問題事例を現場サイドから把握し、一社流通の実態把握につなげたい考え。ただ、ただ、複数の構成員から、製薬企業や医薬品卸を対象としたアンケート調査を行う必要性を指摘する声もあがった。一社流通をめぐっては、原靖明構成員(日本保険薬局協会医薬品流通・OTC検討委員会副委員長)は、一社流通品を取り扱う医薬品卸がわからずにどこから購入していいかわからないとの声が現場からあがっていると指摘。逆ザヤで一社流通品を購入しているケースもあるとして、「安定供給上、大きな問題があるのではないか」と指摘した。

◎現場の声を拾い上げ 藤沼首席流通指導官「問題事象からアプローチしていきたい」

流通改善ガイドラインでは、「一社流通を行うメーカーは、自ら又は卸売業者と協力し、その理由について、保険医療機関・保険薬局に対して丁寧に情報提供を行うこと。また、一社流通を行うメーカー及び卸売業者は、その医薬品の安定供給を行うこと」とされている。

アンケート調査を通じ、厚労省は問題事例について現場の声を拾い上げたい考え。流通改善ガイドラインでは、一社流通を行う理由について情報提供を行うことを求めているが、「適切な回答がなかった品目の名称」などを回答させるイメージを示した。

厚労省医政局の藤沼義和首席流通指導官は、「問題事象からアプローチしていきたい。現場の声をまず把握し、そこから何が問題なのか、何ができていないのかに迫ることが具体的ではないかと考えている」と説明。一社流通をめぐっては地域別に一社流通を行っているケースなどもあり、実態が十分に把握されていない。このため、まずは現場サイドの調査を行うことを提案した。

小山信彌構成員(日本私立医科大学協会参与)は、「川下から色々なことを聞けばいいが、言い方は悪いが川下ずっといじめられている。川上は何もされていない。きちんと統率していただかないと、我々はずっと苦労したままだ」と述べ、川上の調査実施を迫った。

原靖明構成員(日本保険薬局協会医薬品流通・OTC検討委員会副委員長)は、「上流が濁ると川下がいくら頑張っても濁ったままだ。一社流通がどういう理由でやっているのか、メーカーさんにぜひ聞いていただきたい」と要望した。薬局では、通常取引する医薬品卸が一社流通を行っているケースは把握できず、入荷しないことで初めて一社流通だと気づくと説明し、アンケート調査の限界も指摘した。

◎川下から相次ぐ一社流通の指摘 小山構成員「メーカーはさらに俺たちを虐めるのか」

この日の流改懇でも、一社流通をめぐる課題を指摘する声が構成員から相次いだ。小山構成員は、「一社流通の話が出て2年ほどたつが、一向に減っていない。むしろ増えてきている」と指摘。自院でも100品目が一社流通だとした。理由としても、温度管理や配送などが理由となるケースもあるが、「卸、メーカーにとって物のコントロールをしやすい、把握しやすいということで、かなりの数が一社流通になっている」と指摘した。「私立病院の多くが赤字。取引についても色々言われているが、メーカーは何してくれているかと思うと、一社流通でさらに俺たちを虐めるのか」と強調した。

◎原構成員 一社流通品、取り扱い卸はメーカー応えず「どこから買っていいかわからない」

原構成員は、「メーカーから見れば安定供給は卸に出荷したらいいということではないのではないか。全ての医療機関・薬局に届くような供給網を持っている所にお願いしているということだと認識している。それがちゃんと果たされているのかが重要だ」と述べた。

さらに、原構成員は、通常取引のある医薬品卸で取り扱っていない一社流通品については、医薬品卸に尋ねてもメーカーに尋ねても明確な回答が得られず、「どこから買っていいのかわからないということが現場で起こっている。それは、安定供給上、大きな問題があるのではないか。一社流通は果たして本当に有用なのか」と指摘した。

これに対し、熊谷裕輔構成員(日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長)は、「一社流通に関しては、まず使命として安定供給を果たしていく、それから説明責任を果たしていく部分が非常に重要。当初は、温度管理の必要な品目やオーファンで始まった一社流通だが、新しいモダリティや新しいタイプの薬剤が登場し、少し広がっている状況だと認識している。一社にお願いするときは安定供給ができるという契約を結んでいるとはいえ、まだご迷惑をおかけした点があると思うので、業界内でも徹底していきたい」と述べた。メーカーとしては、「我々は、直接取引に関与することができない。直接得意先に対して取引を誘引するというようなところは禁じられている」として、一社流通を行う具体的な卸名を口にすることは難しいとの姿勢を示した。

◎原構成員「一社流通であれば誘因されているように我々は思っている」

原構成員は、「一社流通であれば、そこに誘因されているように我々は思っているが、いかがなのか」と迫った。

これに対して、武岡紀子構成員(日本製薬工業協会流通適正化委員会 常任運営委員)は、「我々は、皆様と同じように、製薬協、業界を代表している者だ。皆様も同じかと思うが、個社や個々の製品に対して、法令違反をしていないものに対して我々の方で取り調べ等ができない」と釈明。「ただ我々製薬協の委員としてお約束できるのは、会員のメンバーに対して患者さんの命に関わる医療用医薬品を提供するものとして安定供給をすること、情報提供を丁寧にすること、そして大切な医療資源を適正に扱うこと、これを繰り返し伝えることは可能だ。ただし我々には限界がある。私からの切実なお願いとしては、製薬協だけで流通改善することができません。ぜひ皆さんの協力をお願いしたい」などと訴えた。

宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は、「武岡委員の切実なお話だったのと思うが、そうすると厚生労働省しか明らかにできるところがなくなってしまう。しかし、問題の一番の最上流は今お話した熊谷委員、武岡委員のところ(製薬業界)しかない。どうやってディスクローズしていくのか、何が問題になっているのかを厚生労働省がしっかりと把握していただきたい。川下である薬局や診療所が一番困る」と強調した。

◎水谷産情課長「一社流通は本当に問題」 全国の医療機関・薬局で使えることは必要

厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の水谷忠由課長は、「流通関係者と話す中で、一社流通は本当に様々な意味で問題になっていると認識している」と表明。「メーカー側から見える情景と、卸あるいは医療機関・薬局から見える情景で違うところがあるかもしれないが、公的な医療保険制度の中で、医薬品に公定価格が付き、提供されていることから、全国の医療機関・薬局で使い得る状況になることは必要なことだと思っている。それについて、メーカーがどういうスタンスでいるのか、卸がどういうスタンスでいるのか、あるいはそれが医療機関・薬局から見てどう見えるのかを念頭に置く。実態調査には制約がるが、メーカー側・卸側、医療機関薬局がそれぞれからどういうような形で実態を聴取することができるのか、よくご相談をさせていただきながら進めていきたい」と応じた。

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