厚労省の医療用医薬品の流通改善に関する懇談会は12月21日、流通改善ガイドラインの改訂について議論し、大筋で了承した。“一社流通”についてはメーカーに「理由」について、情報提供を行うことを求めた。委員からは、製薬企業が“主体的”に説明責任を果たすことを求める声が相次いだ。卸側の委員からは、書面をウエブサイトに掲載するなどすることを求める声もあがった。このほか、ガイドラインには「価格代行業者」についても明記する方針で、依頼に当たっては「ベンチマークを用いての一方的な値引き交渉」などを慎むよう求める。
◎一社流通も「安定供給を行うこと」を明記
改訂ガイドライン案では、「一社流通を行うメーカーは、自ら又は卸売業者と協力し、その理由について、保険医療機関・保険薬局に対して丁寧に情報提供を行うこと。また、一社流通を行うメーカー及び卸 売業者は、その医薬品の安定供給を行うこと」ととされた。9月28日の流改懇では、卸側が「説明責任は製薬企業にある」と述べたことに端を発し、購入側から製薬企業に対する説明責任を求める声が相次ぎ、「流通改善ガイドラインに明記すべき」との声があがっていた。これに対し、製薬業界側は、ガイドラインに明記することに難色を示していたが、最終的に盛り込む方向で決着した。
“安定供給を行う”必要性を明記したことについて、厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の信沢正和首席流通指導官は、「一社流通を行うことによって、災害などが起きたときに一社では安定供給が難しいのではないかということや、なかなか取引ができなくなるということによって、安定供給ができなくなるというようなことはないよう、メーカーも卸も気をつけていただきたいという意味だ」と説明した。
◎「メーカーが主体的に説明を」
この日の流改懇でも、製薬企業の説明責任を問う声があがった。原靖明委員(日本保険薬局協会医薬品流通・OTC検討委員会副委員長)は、「新薬創出等加算が試行導入された際は、メーカーは皆、報告や連絡をするとしていたが、あまり説明に来たイメージがない。一社流通では、自社のことなので必ず(説明に)行く必要があると思っている」と指摘。製薬業界が希少疾病用医薬品など、症例数や納入施設が限られているなどの理由があるとしたことに触れ、「そうであれば、メーカーさん自ら行けるのではないか。逆にメーカーが自ら説明できないくらい広範囲に使われているものは一社流通に向かない商品ではないか。卸に頼むではなく、メーカーが主体的に説明を行っていただきたい」と述べた。
◎個社対応と言及避ける業界団体に「団体としての考え」を指摘
これについて、武岡紀子委員(日本製薬工業協会流通適正化委員会常任運営委員)は、「これまで議論をしていた製品の一社流通というのと異なる性質かと思っている。個社の対応なので、コメントを控えさせていただきたい」と述べた。これに対して、原委員は、「個社の問題だが、それを言い出すと、皆個の病院、個のクリニック、個の薬局の話になってしまう。団体としてどのような考え方なのか」と指摘。卸によって取扱品目が異なるが、購入側からはわからないとして、「言い方が失礼かもしれないが、一軍と二軍があるのかわからないが、我々にはわからない」として、医療現場の混乱を避けるためにも対応を求めた。
眞鍋雅信委員(日本医薬品卸売業連合会理事)は、「やはり説明責任が大きいと思う。基本的には、メーカーが一社流通を決める」としたうえで、前回の流改懇で武岡委員(製薬協)が「提案をしている卸がいるということで一社流通になっているということもある」と発言したことに触れ、「我々自身も説明責任を負っている。メーカーがまず主体的にウエブサイトや文書で丁寧に説明をいただく。我々もその文章、もしくは書面をもって間違いや漏れのないように、薬局や病院の方へ伝達をしていくということ。これもまた、きちんとガイドラインの方へ書き込むべきだろうと思う」と述べた。
小山信彌委員(日本私立医科大学協会参与)は、2社や3社に限定して流通しているケースがあると指摘。“イタチごっこ”になる懸念を示し、「本末転倒になってしまうので、少し考えていただきたい」と述べた。
貞弘光章委員(全国自治体病院協議会常務理事)は、「医療機関側としては、価格設定が不透明だと、透明性が欠けるというのは問題だ。今後、高額な医薬品の使用頻度が増え、一社流通になるものも多い。一社流通になる理由を説明するということと同時に、適切で透明性のある価格設定について強調していただきたい」と述べた。
◎製薬協・森委員「供給面も含めて責任は全てメーカー」
森英寿委員(日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長)は、前回の流改懇について10月の製薬協理事会で、企業の説明責任を問う声が委員の“総意”としてあったことを説明したことを報告した。また、「供給面も含めて、製品についての責任は全てメーカーにあるということは承知している。供給面で、個社が色々な戦略で色々なことをされている。もし、看過できないような状況にあるのであれば、当局(厚労省)の相談窓口にご相談対だき、それが多くのメーカーがそういう形で実施しているという話であれば、団体として、しっかりとまたお答えしなければいけないという話になると思っている」と話した。
◎価格代行業者 依頼に当たり「ベンチマーク用いた一方的な値引き交渉」慎むよう求める
「価格代行業者」についても、ガイドライン上で明記される方針。ガイドライン案では、「取引条件等を考慮せずにベンチマークを用いての一方的な値引き交渉や取引品目等の相違を無視して同一の総値引率を用いた交渉、同一の納入単価での取引を各卸売業者に求める交渉などは厳に慎むこと」としたうえで、「価格交渉を代行する者に価格交渉を依頼するに当たっては、価格交渉を代行する者がこうした交渉を行うことがないよう流通改善ガイドラインを遵守するように注意すること」と明記する。
貞弘委員は、「病院経営上は、事務方の単品単価交渉の業務が多いということと、それから病院経営上はアウトソーシングがどんどん増えてくる。ガイドラインを遵守するということは非常に大事だと思うが、色々な問題がもしかしたら出てくるかもしれない」として、注視する必要性を指摘した。森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「正直想像以上に数多くあると感じた。まだ実態が正直わかってないものがあるので、どういう実態があるのかということが一つ。価格代行業者を使ったときに、医薬品の供給問題にどういう影響があるのか。医薬品の価値にどういう影響があるのか。公的保険制度の中でどう考えるのかとうことを、実態を把握した上で一度考えてみる必要があるのではないか」と述べた。