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EFPIA・Patient Forum 2024 治験情報への患者アクセスで緩和求める声 ラグ・ロス解消に選定療養も

公開日時 2024/10/10 04:53
欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)は10月9日、東京都内で「Patient Forum 2024」を開催した。ドラッグ・ラグ/ロスの課題や治験情報へのアクセスをテーマに「産官学+患者代表」を交えて議論した。患者代表からは、治験参加を希望する患者への情報提供について、「薬機法の広告規制からの除外」を求める声や、治療薬以外のラグ・ロス問題の解消に絡めて、「現場の声を広く聞いて欲しい」との声があがった。医療政策面からは、医療経済研究機構の印南一路副所長が、速やかにイノベーションを患者に届ける観点から「選定療養の活用を図るべき」と提案。治験情報の患者提供も、「企業・団体にも許すべき」との見解を披露した。これに対し厚労省健康・生活衛生局の鶴田真也課長は、ラグ・ロスが指摘された86品目のニーズ調査を研究班で進めていると明かし、企業への開発要請や公募などを行う方針を示した。

◎全国がん患者団体連合会・天野慎介理事長 治験情報は薬機法の広告規制の対象外に

この日のPatient Forum 2024で全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は治験情報へのアクセスの課題に言及した。天野氏は、「現在の薬機法では、治験に関する情報は医療関係者を通じて提供されるというのが大前提だ。このため治験に参加したいと思った患者が治験を知らずに治療を受けてしまって治療機会を逃してしまうことが現状生じている」と問題提起。「治験情報に関しては薬機法の広告規制の対象外としていただき、患者が治験に関する情報を直接得られるような環境にしていただきたい」と要望した。また、「遺伝子パネル検査で提案される医薬品の一部は未承認薬または適応外薬という現状がある」と指摘。未承認薬適応外薬検討会議を通じて必要な医薬品をあげているが、「ここに挙げているのは治療薬が中心で、これ以外にも実は必須薬が多数あり、まだまだラグが沢山ある」と述べた。

◎日本難病・疾病団体協議会・辻邦夫常務理事 ベンチャーにつなぐ仕組みがあれば

日本難病・疾病団体協議会の辻邦夫常務理事は、難病の治療薬開発に関するアンケート調査の結果を紹介する中で、「既存の治療薬に比べて(難病治療薬の)開発コストが少なくて済むというが、なかなか(企業側が)首を縦に振ってくれない」と指摘。「規模の大きな製薬企業はそもそも小さな利益に対して消極的だが、ベンチャーなどでは十分に利益を見込めるケースがあると聞いたので、そこをうまくつなげるような仕組みがあればと願う」との患者の声を披露した。

◎医療経済研究機構・印南一路副所長 給付範囲の適正化というコンテクストで考える

医療政策の面から発言した医療経済研究機構の印南一路副所長(慶応義塾大総合政策学部名誉教授)は、ドラッグ・ラグ/ロス問題で指摘される86品目について、「実際にどこまで深刻な問題なのか。優先すべき部分がよく見えないっていうのが私の感想だ」と指摘。類似薬が無く、希少疾病用医薬品や患者のQOL改善に寄与するような、「優先度の高い医薬品のラグ・ロス要因分析とその解消を最優先課題にすべきだ」との認識を示した。

一方で給付範囲の観点から見ると、「現在の給付範囲はフランスなどに比べて広すぎる。本来保険医療に相応しくない薬剤やエビデンスの乏しい薬剤の給付除外もあると思う。国民皆保険の維持を考えても給付範囲の適正化というコンテクストで考える必要があるのではないか」と強調。その上で、治療アクセスの観点から医療保険制度をみると、「速やかにイノベーションを患者に届けるという観点から、選定療養の活用を図るべきというふうに考えている」との見解を披露した。

印南氏は製薬産業側が、「(選定療養は)保険収載への道が断たれるのではないか」との懸念を抱いていることに触れ、「これは誤解だ、というふうに明確に意識していた方がいいと思う」と強調した。さらに、「とりあえず選定療養でイノベーションを患者さんに届けて、できればデータもきちんと集める。そのデータが十分に集まったら評価療養に移すという柔軟性が制度にあってもいいのではないか」と一歩踏み込んだ。

◎厚労省健康・生活衛生局 鶴田真也課長 今ある制度をフル活用することも大事な視点

厚労省健康・生活衛生局がん・疾病対策課の鶴田真也課長は、「今ある制度をどうやってフル活用していくのかも大事な視点だと思っている」と述べ、国立がん研究センター・がんゲノム情報管理センター(C-CAT)が提供する「がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査」サイトを活用した情報活用や新たな創薬への応用に期待感を込めた。また応用例として、「どこの病院にどういった遺伝子変異のある患者がいるか分かるので、治験の際にどこの病院とコラボすることで患者のリクルートが早くできたという話を(企業から)聞いている」と紹介した。

ただ、課題にも触れ、「製薬企業の皆さんがC-CATを利用しているわけでもない。使っている企業と使っていない企業との間でだいぶ違う発言をされていると感じている」と述べ、「いままで作り上げてきた制度を最低限フル活用するという視点もしっかり議論していく必要があるのではないかな、というふうに思っている」と語った。

◎EFPIA Japan・岩屋孝彦会長 ステークホルダーの皆さんと対話を続け、実現する

EFPIA Japanの岩屋孝彦会長は、「必要なのに日本に入ってこない医薬品があるという状況は打破しなきゃいけない。そのために何をしなければいけないかということを(我々は)訴え続けていかなくちゃいけない」と発言。続けて、「それは薬価制度だけでなく、薬事制度だけでもなく、治験から始まる川上から、最終的にマーケットを構成する薬価問題まで、全てを含めた全体の議論として受け止め、いかに必要な医薬品が日本に入れる環境を作るかについてステークホルダーの皆さんと対話を続け、実現していかなければいけないと思った」とこの日の議論を振り返った。

一方で、「緊急性が高く、患者数が少なくてもイノベーションを医療保険の中できちんと評価して欲しいというのが我々の願い」と述べながらも、「イノベーションを評価し、それが高額医薬品に繋がるかもしれないという危惧の中で、国民皆保険では無理なんじゃないか、という議論が何か簡単に出てくることについて非常に危惧を持っている」と表明。「それはそうじゃないということを訴え続けていかなければいけないと思っている」と強調した。
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