大塚HD・樋口社長 米国・ジュナナ社の買収を報告「創薬技術の補完」に期待 通期業績予想を上方修正
公開日時 2024/08/02 04:51
大塚ホールディングスの樋口達夫代表取締役社長兼CEOは8月1日の24年度第2四半期決算説明会で、独自の創薬プラットフォームを持つ米国のジュナナ・セラピューティクス社を買収したと明らかにした。ジュナナ社の創薬技術は、低分子創薬が困難だった自己免疫疾患領域や一部の希少疾患でユニークな競争ポジションを築いている。樋口社長CEOは、「第4次中期経営計画では、新規事業への挑戦による持続的成長の実現を戦略の骨子にした」と指摘。「同社が掲げる“グローバル10”の中の“ネクスト8”、そして自社開発や外部獲得のアセットを充実させ、次世代育成ドライバーとしたい」と語り、ジュナナ社買収もその一環と強調した。
説明会に臨んだ樋口社長CEOは、プレゼンの冒頭で、「新規のビジネスディベロップメントの案件で、交渉中だった新しい大塚の創薬技術を補完すべきボストンの会社の買収で合意に達した」と、シュナナ社買収のニュースを興奮気味に報告した。
大塚製薬が買収したジュナナ社(Jnana Therapeutics Inc. 米国マサチューセッツ州ボストン)は、2017年設立の創薬企業で、独自開発したRAPID(Reactive Affinity Probe Interaction Discovery)プラットフォームにより、次世代のケモプロテオミクス技術を用いた創薬アプローチを実現した。すでに難創薬ターゲットである腎臓におけるアミノ酸の再吸収を制御するタンパク質に対する低分子阻害剤 JNT-517 の開発に成功している。同剤は、フェニルケトン尿症(PKU)に対する有効な治療手段として、フェーズ1b/2 試験で有効性および忍容性と安全性を確認しており、PKU に対するファースト・イン・クラスの薬剤になる可能性を秘めている。
今回の買収は、米子会社の大塚アメリカ Inc.を通じて行ったもの。今後は必要な手続き等を経て24年度第3四半期中に完了する予定。大塚製薬は買収手続き完了後にジュナナ社株主に8億ドルを支払う。また、開発品の進捗に応じた開発マイルストンおよび薬事マイルストンとして最大3億2500万ドルを支払う。なお、ジュナナ社は大塚製薬の完全子会社となり、ボストンを拠点に研究開発を継続する。
◎樋口社長CEO 通期の事業利益 期首計画から600億円増の3900億円に上方修正
樋口社長CEOはこの日の説明会で、2024年度通期計画のうち事業利益は期首計画の3300億円から600億円増加の3900億円に上方修正すると報告。「この業績トレンドは、これまでの投資から積み重ねてきた着実な利益成長と新たな成長投資のサイクルを循環させてきたことで、より強固な事業基盤へと進化させた結果である」と強調。医療関連事業については、第4次中期経営計画の成長ドライバーと位置付ける「グローバル10プラス2」(コア2:レキサルティ、ロンサーフ。ネクスト8:ウロタロント、センタナファジン、uRDN、sibeprenlimab、リトゴビ、zipalertinib、INQOVI、ASTX030。プラス2:Kisqali、Pluvicto)が23年実績比35%増となった。樋口社長CEOは、「コア2のレキサルティ、ロンサーフは24年度期首計画から約300億円増の4815億円と上方修正した」と説明。さらに、「新規事業への挑戦による持続的成長の実現を戦略の骨子にして、ADアジテーションといったこれまでに治療薬がなかった領域で新しい価値の提供に注力する」と述べた。
◎レキサルティ 7月から営業体制を刷新 MDDでのDTCによるプロモーション強化
このうちレキサルティは7月から米国で営業体制を刷新し、営業活動を強化したことを明らかにした。樋口社長CEOは「ADアジテーションの処方箋数が23年4月の4.7%から24年4月に13.0%まで推移した」と指摘。ADアジテーションにおける疾患啓発の推進や大うつ病性障害(MDD)における新しいコンセプトのDTCにも取り組んでいるとし、「考えられる課題に対して迅速かつ適切に対応していくことで、今後の成長を確実にしたい」と述べた。
【連結業績(前年同期比) 24年予想】
売上高 1兆1089億3000万円(17.0%増) 2兆3150億円(14.7%増)
営業利益 1262億7900万円(3.4%減) 3020億円(116.3%増)
親会社帰属の純利益 1077億9500万円(5.1%増) 2400億円(97.3%増)
【グローバル製品売上(前年同期実績) 24年予想、億円】
レキサルティ 1224(960)2760
ロンサーフ 519(357)1050
エビリファイメンテナ 1096(948)2140
エビリファイアシムトファイ 75(12)190
サムスカ 211(249)400
ジンアーク 1139(845)2325
*サムスカに日本のADPKD適応の売上含む。
【主要製品の国内売上(前年同期実績) 24年予想、億円】
レキサルティ 95(71)210
ロンサーフ 39(36)80
エビリファイメンテナ 62(57)130
サムスカ 129(168)240
ニューデクスタ 149(136)290
ニュープロ・パッチ 36(42)70
エビリファイ 26(30)55
INQOVI/INAQOVI 80(54)155
アブラキサン 164(150)340
アイクルシグ 37(33)75
ティーエスワン 36(37)70
トルバプタン「オーツカ」(サムスカAG) 46(44)100
プレタール 6(8)10
ムコスタ 16(13)30
レバミピド「オーツカ」(ムコスタAG) 45(40)90
ビラノア 83(76)155
ミケルナ 35(32)75
モイゼルト 57(18)130
臨床栄養 511(451)1115