【World Topics】老化抑止薬?
公開日時 2016/06/20 03:50
老化を防ぎ、20年は若返られると前評判の高い老化抑止薬の臨床試験が米国で認可された。話題の薬はすでに1940年代からII型糖尿病の治療薬として広く使用されてきているメトホルミン(metformin)だ。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
回虫への投与で加齢を遅らせ寿命が延びることが実証され、その後マウスへの投与でも 40%延命することが実証されたため、糖尿病治療薬としてメトホルミンを服用した患者の調査が実施され、結果、メトホルミンを服用していた患者は服用しなかった患者群より8年長生きであったことが明らかになっている。米国での臨床試験は米英の大学及び研究機関が参加。3000人の ボランティアを対象に実施される。
もう1つ注目を集めているのがラパマイシン(rapamycin)だ。やはりすでに臓器移植後などの免疫抑制剤として使用されている医薬品だが、マウスの実験でオスで9%、メスで13%の延命効果が認められている。ラパマイシン はイースター島のモアイ像の近くで発見された放線菌から抽出されたという経緯もあり、ミステリアスな薬として知られている。
マウス以外での効加齢、延命効果などを検証するため、米国で犬を対象とする試験が、米国シアトルのワシントン大学の研究チームによって実施されている。実験対象となったのは一般家庭で飼われている犬40匹。飼い主の協力を得て、 ラパマイシンを週に3錠、10週間投与。試験前後にエコーを用いた検査で心臓機能をチェックし、効果を測定した。結果は、投与した犬には 心臓機能の向上が見られたばかりでなく、心臓に疾患を抱えていた犬には著しい効果が見られた。
研究者らは犬にこれだけの効果が見られるのであれば、ヒトにも必ず効果があると確信したと語っており、人間を対象とした臨床試験に移行できるかどうかは、この医薬品を老化抑止剤として使用した場合に、なんらかの副作用があるかどうかの見究めだけにかかっていると述べている。