中医協・薬価専門部会 MRは「社会規範に沿った活動実践を」 原点回帰も
公開日時 2015/07/23 03:52
中医協薬価専門部会は7月22日、MR活動をめぐり、診療側委員、専門委員から発言があった。薬価算定組織(委員長=清野精彦氏)から提出された「薬価算定の基準に関する意見」では、薬価算定の基準の議論とは別に、委員からの意見としてMRによる過剰な営業、宣伝活動などの課題を指摘した。清野委員長は、「社会規範に沿った企業行動を実践しない限り、いかに今後の新薬が画期的であろうとも、その評価を社会が受け入れることは困難となる。製薬企業には日々の業務を常に見直し、真に医療に貢献する活動を求めたい」と述べた。
薬価算定で原価を積み上げて計算する原価計算方式では、営業利益率が加味されており、MRのコストが反映されているとの見方もある。こうした中で、臨床医が多く所属する薬価算定組織では、シェア・オブ・ボイス(SOV)に代表されるような、コール数を競うディテーリングなどに疑問を呈す医師もおり、今回の問題提起につながった。
診療側委員の中川俊男氏(日本医師会副会長)は、「こういう文章が出てくるのは異例。いまどき、こんな風に書かないといけないことがあるのか目が疑う」とした上で、議論の過程と製薬業界での受け止め方を質した。
清野委員長は、「残念ながらここ数年、わが国での医学、科学的な面と医療、MR活動の問題を指摘されている。そういうことが議論の中で出た。薬価算定に直接かかわっているということではないが、こういう記載をさせていただいた」と経緯を説明した。
これに対し、専門委員の加茂谷佳明氏(塩野義製薬執行役員)は、ARB・ディオバンなどの「臨床研究等の問題があって真摯に受け止め、反省すべきところは反省し、改善にむけて努力をしている」と述べた。その上で、MRについては、「医薬情報担当者という位置付け。これからさまざまな新薬が上市される段階で非常に使い方等々が難しいものもある。先生方に対して正しい薬の情報を伝えるという原点に立ち返る活動を業界の中でもいま一度確認する。ご指摘については真摯に受け止め、方向性についてきちっと議論していきたい」と述べた。プロパー時代には、添付販売や景品提供、キャッシュバックなど、さまざまな問題があったが、「業界を代表する立場からすると、過剰、もしくは不適切な営業というものは現段階では是正されているものと信じている」と述べた。
◎薬価算定委員会 先駆導入加算は薬事と一貫性で予見性高めイノベーション推進
薬価算定委員会が提出した「薬価算定の基準に関する意見」では、次期薬価制度改革に向け、イノベーションの推進とともに、ブロックバスターや新規性にとぼしい医薬品については評価を見直すことが盛り込まれた。
意見書は、①世界に先駆け日本で承認する画期的新薬を評価する「先駆導入加算」を薬事制度と一貫性をもつ形に改める、②未承認薬・適応外薬検討会議に基づく開発要請・公募品目のうち、外国平均価格が算定薬価の1/3を下回る場合などでは、外国平均価格調整の対象外とする、③類似薬の収載時期が集中する医薬品や後発医薬品(GE)対策と考えられる医薬品など新規性に乏しい場合には薬価上の評価を低くする、④市場拡大再算定を見直す—の4項目が柱となっている。
先駆導入加算は、2015年度より試行的導入された先駆け審査指定制度で、指定された品目を評価対象とすることで、一貫性をもたせる。名称も、先駆導入加算から「先駆け審査加算」に改めるとともに、加算率を現行の10%から20%に引上げることも提案された。また、先駆導入加算の対象品目とならない原価計算方式で算定された品目についても、営業利益率の中で、積極的に評価する方向性も示された。製薬企業にとって投資の予見可能性を高め、イノベーションの推進が期待される。
市場拡大算定は、原価計算方式で算定された医薬品で、市場が原則2倍以上となった場合に適応されるが、この現行ルールを見直す。清野委員長は、「ブロックバスターとされる品目が予想を超える市場拡大を果たした場合は、原価計算方式ではないというだけで、薬価を見直さないことが果たして妥当か。(市場規模を加味せず)一律市場規模2倍以上という基準を用いることが妥当か」と疑問を投げかけた。一方で、「無原則の再算定の拡大はイノベーションの推進という政府方針に逆行する可能性がある」と指摘。「市場拡大再算定の論点を提示し、中医協で議論を深めていただくことがふさわしいと考えた」と述べた。
そのほか、新規性の乏しい医薬品についても、評価を見直す。先行した新薬から短期間に類似した医薬品が薬価収載される状況を問題視。「4番目以降の新規制の乏しい薬品であれば、時期や外国価格調整に関係なく、低い薬価とする」(清野委員長)形に改めることを提案した。現行ルールでは「類似薬のうち最も早く薬価収載された日から3年を経過していること」がルールとされるが、この3年という期間の撤廃を盛り込んだ。
GE対策とみられる医薬品については、「新薬開発へのリソースを浪費するという意味でもさらなる薬価の適正化が必要」と指摘。既収載のラセミ体では薬価の引き下げがなされているが、①同一製薬企業、②主たる効能効果、薬理作用、投与形態、臨床上の位置付けが類似または同一、③非劣性のデータしかない、④既収載品の薬価収載から5年以上経過してから承認、⑤補正加算に該当しない—の5項目すべてを満たす医薬品については、原則として既収載品の8掛けとする低い評価とすることも提案された。
◎費用対効果評価専門部会 効果指標は「QALYを基本にその他指標も活用」で診療側、支払側一致
費用対効果評価専門部会は22日開催され、来年4月の費用対効果評価の試行的導入に向け、効果指標の取り扱いをめぐる議論がなされた。効果指標については、診療側、支払側ともに、「質調整生存年(QALY)を基本としつつ、疾患や医薬品等の特性に応じて、その他の指標も用いることができることとする」とした案におおむね合意した。運用に際しては、QALYと増分費用効果費(ICER)などの指標を組み合わせることなどが想定される。標準的な分析方法をめぐっては現在、厚生労働科学研究費補助金を用いた研究班が検討を進めており、今夏にもガイドライン(GL)策定に向けた中間とりまとめを作成する。