立憲民主党部門会議 「薬価改定は原則2年に1回」法改正案了承 中島議員「中間年“なし崩し”に歯止め」
公開日時 2024/12/13 04:52
立憲民主党厚生労働部門会議は12月12日、議員立法の「診療報酬改定(薬価改定)を原則2年に1回とする法改正」を了承した。法改正を通じ、診療報酬本体および薬価改定は2年ごとに必要な改正を行うことを原則とし、中間年改定や市場拡大再算定などの随時改定は“例外的な改定”であることを明確化する狙いを込めた。議員立法の作成に注力した中島克仁政務調査会長代理は同日、本誌取材に応じ、「“なし崩し的”な状況に歯止めをかけないといけない」と危機感を露わにした。また、25年度政府予算案の編成作業が本格化するタイミングで「(政府に)クギを刺したい」考えも示した。国民民主党や日本維新の会にも呼びかけを行っており、賛同を得て今臨時国会中の議員立法提出を目指す。
◎診療報酬本体、薬価改定を「2年ごとに行うことを原則」を法律上に明確化
法改正の基本的な考え方は、診療報酬本体および薬価改定を「2年ごとに行うことを原則とすることを法律上に明確化」することにある。診療報酬改定は慣例で2年に1回行われているが、今回の議員立法では、「これを法律に位置づけることにより、薬価の中間年改定や市場拡大再算定などの随時改定はあくまで通常改定に対する例外的な改定であることを明確化」する狙いが込められている。
◎中島政調会長代理 「予算編成の時期に極めて例外的なことをやっている」
中島政調会長代理は2016年末の4大臣合意を踏まえ、7年連続で薬価改定が行われていることに問題意識を表明。「医薬品の競争力基盤も緩み、市場に慢性的な医薬品不足がある。医療費効率化・適正化はもちろん必要だが、(財源を)取れるところか取っている状況に陥っている」と指摘した。特に、医薬品の供給不足に懸念を示し、「医薬品の不安定供給は、国民の命と健康にかかわることだ。“なし崩し的”なこのような状況に歯止めをかけないといけない」と強調した。中間年改定をめぐっては立憲民主党や国民民主党が要請を行っているが前進が見込めない状況にある。中島政調会長代理は、「この予算編成の時期に極めて例外的なことをやっているということを、政府、特に財務省にクギを刺さないといけない」と語気を強めた。
診療報酬も薬価も“2年に1回”とされているが法律で規定されていない。中島政調会長代理は法改正を通じ、「慣例でその場その場で決めてきたことを法律で原則2年に1回と規定することは初めてのことで、相当意味があるのではないか」と意義を強調する。「我々は、中間年改定そのものを否定しているわけではないが、あくまでも例外」と話す。例えば、抗がん剤・オプジーボが期中に市場拡大再算定により薬価引下げを受けたことが、こうした「特殊な事例」の実施はあくまで“例外”と位置付ける。一方で、「いまのように、薬価改定が常習化することは問題だ」と話す。前回の中間年改定に当たる23年度薬価改定では、改定対象品目は全品目の69%(ただし、薬価引き下げを受けた品目は48%)に及んだ。中島政調会長代理は、「本改定とほとんど変わらない」と指摘。中間年改定では客体数を減らして薬価調査が行われていることにも触れ、「本改定と同じような改定を1年も満たない時点で、マイナー調査に基づいてやってしまうということに対して歯止めをかけなければならない」と強調した。
自らも医師の中島政調会長代理は、「この冬も、またインフルエンザやマイコプラズマが流行っており、実際に薬が不安定な状況。当たり前にあるような薬がない」と指摘。「中間年改定の影響で、政府が増産を要請しても、元々薬価が低いものでは赤字が増えるだけで、悪循環がずっと続いている状況だ」と説明。「医療費の効率化、適正化は必要だと思っている。ただ、もっとやることあるだろう。薬価からだけしょっぴくのは製薬企業が本当に疲弊してしまう」と強調した。
医療費の効率化・適正化に向けて、「後期高齢者の方は、かかりつけ医を制度化し、重複疾病、プライマリケアが包括報酬とする」など、「本質的な議論」を行う必要性を強調。「いわゆるジェネラリスト、プライマリケア機能を発揮するかかりつけ医は、患者さんが元気だったら、または、重度化しなかったら、評価される仕組みにする。かかりつけ医として、生活習慣病などの予防医療を中心に、継続性、責任制を発揮するところを評価するというのが国民ニーズでもあるのではないか」と述べた。
次期通常国会では、かかりつけ医の制度化に向けた法改正の議論が進むことも想定されるが、立憲民主党としても法案を提出する考えも表明。「具体的な医療DXに向け、またタイムスケジュールを示しつつ、そのためにはかかりつけ医が制度化する必要があるというグランドデザインは、次期通常国会で示していきたい」とも述べた。
◎健保法第76条(療養の給付に関する費用)に「2年ごとに必要な改定を行う」を追記
法改正のイメージとしては、健康保険法第76条(療養の給付に関する費用)において、「療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところによるもの」との文章の後に、「その定めは、2年ごとに必要な改定を行うことを原則とする」と追記する。また、高齢者の医療の確保に関する法律の第71条(療養の給付に関する基準)について、「厚生労働大臣が中央社会保険医療協議会の意見を聞いて定める」との文章の後に、「当該療養の給付に要する費用の額の算定に関する基準は、2年ごとに必要な改定を行うことを原則とする」と追記するとした。このほかにも、他法の改正については精査が必要としている。
なお、法改正に向け、中島政調会長代理が事務局長を務める「適切なヘルスケア環境を整備するための議員連盟(伴野豊会長)」で検討が進められてきた。