日本ジェネリック製薬協会の川俣知己会長は12月11日の中医協薬価専門部会で、25年度薬価制度改革で議論が進む後発品の企業指標について、「少量多品目構造の見直しについて評価指標の導入については基本的に賛同する」と述べた。ただ、“シェア3%”を指標としたことについて、「シェア3%以下でも安定供給を確保している小規模な企業についても、適正な評価がなされることが望ましい」と主張した。25年度薬価改定で焦点の不採算品再算定にも言及。「不採算品再算定の計算式を問題視せざるを得ない。要望したにもかかわらず、十分な改定に至らなかった品目がある」と指摘。「制度の見直しに向けて、我々としても議論を進めていただきたい」と強調した。
◎後発品の企業指標で「安定供給している小規模企業に適正評価を」
後発品の企業指標をめぐり、厚労省は12月4日の中医協薬価専門部会に“少量多品目構造の適正化”を評価する指標として、「製造販売業者が製造販売する後発品について、同一成分内でのシェアが3%以下の品目」を加えることを提案した。製造販売するすべての品目のうち、シェア3%以下の品目が占める割合に応じてマイナスとするとしていた。
これにGE薬協の川俣会長は基本的に賛同する姿勢を示しながら、「品目整理を進める企業や増産を請け負う企業などがあることを踏まえ、偏りのない評価方法となるようご配慮をお願いしたい」と主張。また、「少量でも医療上の必要性の高い医薬品を製造している企業や、シェア3%以下でも安定供給を確保している小規模な企業についても、適正な評価がなされることが望ましい」と強調した。
診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「対象患者数が少なければ、製造量が少なくなることは避けられない。そのような状況を踏まえ、少量でも医療上必要性の高い医薬品を安定的に製造供給している企業に対しての配慮は必要と考える。ただし、先発・後発に関係ない話になろうとも思う」と述べた。
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「偏りのない評価方法となるような配慮が必要だ。現状様々な企業があることは理解する。少量多品目構造の見直し、安定供給確保に向けて、どのような評価を行うのか。安定供給を確保している企業が不利にならないために、どのようにしていくのかなど、薬価収載の入口から出口まで関係する評価や企業の状況、流通への影響など、全体的な視点で検討していくべき」と述べた。
◎安定供給の情報公表25年度改定に反映に賛同も 企業名公表は「準備期間を」
今年6月に公表を開始した「後発品の安定供給に関連する情報の公表」の評価指標を25年度改定から企業指標に適用することにも「賛同する」と述べた。評価結果として企業区分「A」~「C」にランク付けされるが、「安定供給が確保できる企業を可視化し、当該企業の品目を医療現場で選定しやすくなる、という目的に資するものであり、賛同する」とした。
中医協の議論では、それぞれの企業区分に属す企業名の公表も議論の俎上に上っていたが、「6月より公表を開始した企業指標に対する評価の詳細ポイントの重みづけが確定、公表されてから、企業がさらなる取組みをする期間を得た上で企業区分が公表されることが望ましい」と懸念を示した。
診療側の森委員は、「準備期間が必要であることは理解するが、評価指標は安定供給に向けて重要な指標となるので、各企業における取組みはすぐに開始していただきたい」と指摘した。
◎不採算品再算定 短期的に赤字解消 中長期的には原薬のダブルソース化など効果も
25年度薬価改定で焦点となっている不採算品再算定にも議論が及んだ。GE薬協の川俣会長は、限定出荷の品目数が181品目(24年3月時点)から78品目(24年11月時点)に減少したと説明した。不採算品再算定の短期的な効果としては、「原価率の改善、赤字構造の緩和」が299品目あり、このうち、赤字構造が解消された品目も103品目あったという。
中長期的な効果としては原薬のダブルソース化(複数購買)の検討を進めたのが28品目あったほか、「製造所・製造ラインの追加検討を進めた」、「将来の設備投資の検討を進めた」との声もあったという。川俣会長は、「不採算再算定の適用は、人材・設備投資を下支えするものであり、医薬品の供給継続にプラスの影響を与えていることが確認できた」と説明。22年度、23年度薬価改定で特例的に不採算品再算定が実施される中で、「GE薬協の理事会でも、不採算再算定適用品目については、特に増産の優先順位を上げて限定出荷を解除できるよう要請している」と説明した。
◎不採算品再算定解消しない78品目 川俣会長「要望したにもかかわらず引上げが十分でない品目ある」
支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は、不採算品再算定適用後も78品目が限定出荷である点を指摘。「まだ解消に至ってない理由をどのように分析されているか」と質した。
これに対し、川俣会長は、「不採算再算定の計算式のあり方は、我々の中でも問題視せざるを得ない。要望したにもかかわらず、十分な改定に至らなかったという品目が多少あったということが原因だと考えている。制度の見直しに向けて、我々としても議論を進めていただきたい」と要望した。
◎安定供給責任者会議 市場供給量の少ない品目「片寄せ」も必要
川俣会長は、安定供給に向けた取組みとして、協会内に「安定供給責任者会議」を設置したことも報告した。「各社の安定供給責任者を常時把握し、安定供給責任者同士で顔の見える関係を構築することで、連携を強化してまいりたい」と述べた。
第一回準備会議を12月4日に全社参加で開催したという。川俣会長は、「安定供給責任者会議で議論する内容を各社と目線合わせし、これからの様々な項目を対象としていかなければいけない。その中で議論できること、できないこと、が出てくるかと思う。準備会議を年明けに向けて何度か開催した上で、年度内には安定供給責任者会議の正式会合という形に走っていきたい」と述べた。
安定供給責任者会議で少量多品目の是正に向けた取り組みを進める考えも表明。「市場への供給量の少ない品目については、順を追って数社に“片寄せ”するという作業を今後順次行っていかざるを得ない。片寄せするにあたっては、医療関係者の皆様に丁寧に説明をした上で、片寄せした代替生産を行う企業の紹介も含めて、情報提供を丁寧に行っていきたい。安定供給責任者会議においても、どういうことを先生方にお伝えをすればご迷惑を最小限にすることができるかという議論もしてまいりたい」と述べた。
診療側の森委員は、「いくら安定供給責任者が制度として位置づけられても、機能しなければ何もならない」と釘を刺した。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「形骸化しないことが非常に重要」としたうえで、「業界全体の問題としてそういった認識でできる限り、聖域のない議論を期待している」と述べた。
◎自主点検 GE薬協加盟社の分析「後追いで実施」 今後は原因分析へ
日本製薬団体連合会(日薬連)に実施した自主点検の結果についても問う声が複数の委員からあがった。製造販売業者172社が実施した自主点検の結果、対象品目の43.5%に当たる3796品目に承認書と製造等実態との間に相違があったことが報告されている。自主点検は、後発品を製造する企業の行政処分が相次いだことを受けて実施された。11月22日に開いた会見でこの点を問われた川俣会長は、「会員企業の中で何品目中何品目の相違があったのかは現状把握をしていない」、「(自主点検が)終わった結果どうかということよりも、終わることによって一つずつ前進していると理解をしている。実施状況の把握そのものについては、さほど大きな問題ではない」などと発言していた。
中医協でこの発言を問われた川俣会長は、「後追いになったが先日、GE薬協会員企業の調査を行い、先日その内容を分析した」ことも明らかにした。「今後は、原因調査の分析を行った上で、再発防止、更なると齟齬が拡大しないように、新たに発生しないような手続きという取り組みを考えていくとともに、今回発生した相違・齟齬について、適切な薬事手続きを効率よく進めるための情報共有に努めてまいりたい」と強調した。