第一三共は３月31日、第４期中期経営計画を発表し、ARB・オルメテックの特許切れの業績影響は避けられないとしながらも、2020年度は売上高１兆1000億円、営業利益1650億円を達成する方針を示した。具体的な成長戦略として、抗凝固薬・エドキサバンなど主力品の伸長や米国・ルイトポルド事業の成長加速、コスト削減や効率化などをあげた。これまで循環器領域に軸のあった同社だが、がん領域の製品・パイプラインの拡充を最優先課題とし、2025年度には“がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業”となることで長期的な成長軌道も描く。中山讓治代表取締役社長兼CEOは、同日都内の本社で開催された説明会で「パテントクリフを完全に克服するということにはならない。ただ、それを踏まえた上で薬の成長を実現していく」と述べた。このほか、医療マーケットが大きく変化する中で、地域医療構想や地域医療連携推進法人を見据えたエリアマーケティングを推進するよう体制も見直す方針も打ち出した。

同社の2015年度の予想売上高は9800億円、営業利益は1300億円。20年度には成長軌道を描いたものの、17年度は売上高9400億円、営業利益1000億円に落ち込むとみている。パテントクリフを克服する上で重視するのが、抗凝固・エドキサバンの成長。15年度の147億円から20年度までには1200億円以上へと伸長することを目指す。日本市場では、製品力と質の高い営業力によるプロモーションにより、新規経口抗凝固薬（DOAC）市場でシェアナンバーワンとなることを掲げた。コスト削減・効率化もさらにすすめ、570億円を捻出し、営業利益の落ち込みを吸収したい考え。すでに実施した欧米の営業所再編などによる効果に加え、グローバルレベルでの生産体制の最適化やさらなる効率化を行う。


◎がん領域に最優先投資　４月１日付で新組織発足も


中長期的な成長のカギを握るのが、がん領域だ。9000億円規模の研究開発費、5000億円規模の事業開発投資を、がん事業の強化に最優先で投資する。2020年度には400億円以上、25年度には3000億円規模へと成長させる方針。現在、後期開発品に▽急性骨髄性白血病治療薬・キザルチニブ（期待市場規模：1000億円）、▽肝細胞がん治療薬・チバンチニブ（同・300億円）、▽腱滑膜巨細胞腫治療薬・ペキシダルチニブ（同・1000億円、適応拡大含）、▽非小細胞肺がん治療薬・パトリツマブ（同・500億円）--の４製品がある。キザルチニブやチバンチニブは2017年前半にも臨床第３相試験の結果取得を見込んでいる。これら４製品の上市により20年度の売上目標を達成したい考えだ。組織体制も見直し、「オンコロジーＲＤユニット」を４月１日付で発足。がん研究・バイオ・がん開発を一体化させることで、研究開発のさらなる加速を狙う。一方で、これまで集中的な投資を行ってきた中国については先行きが不透明だとして、投資を控える考えも示した。


◎地域医療連携サポート担当者設置　顧客の変化捉える“目や耳に”

医薬品マーケットや医療環境が大きく変化する中で、地域包括ケアを見据えてエリアマーケティングを推進できるよう、４月から地域医療連携をサポートする担当者の設置や営業所の担当区域を変えるなど、組織改定を行う方針も示した。医療現場が地域包括ケアシステム構築に向けて動く中で、医師会や行政、在宅、多職種連携、地域医療連携推進法人への対応などを視野に入れる。全面的に営業体制を見直すのではなく、まずは担当者を設置するレベルからスタートさせる考え。中山社長は、「地域包括ケアは完全に動き出しているわけではないので断定的なことは言えない」と断った上で、「地域で患者さんをケアする必要はある。地域包括ケアがうまくいく、そのための協力をしていく」と説明した。

在宅医療では、情報を伝えるべき医師を把握することすら難しさがある。こうした中で、「社会的な人の動き、ネットワークを正確にとらまえないと抜け落ちてしまう。必要な先生に必要な情報を届けるという本来なすべきことが抜け落ちてしまう」と中山社長は説明した。全国的に地域医療連携推進法人設立の動きもみられるが、「何が起きてどういう先生が参加しているかみていないと実は営業はできないのではないか。むしろ今までの仕事が、顧客が変わったらできなくなる。漏れがないよう正確に変化をとらえながら最適な体制をとるために、目とか耳になる人をきちっと配置するということから始める」と述べた。