財務省 費用対効果評価「対象薬剤の範囲や価格調整範囲拡大を」 類似薬効比較方式Ⅱでは保険償還可否の検討も
公開日時 2025/04/24 06:59
財務省は4月23日の財政制度等審議会財政制度分科会で、費用対効果評価について、保険償還の可否の判断への利用も含めた「一層の活用に向けた検討」の必要性を指摘した。“薬事承認、即、薬価収載”となっている現行制度による財政影響は「予算統制の枠外」と問題視した。特に類似薬効比較方式Ⅱで算定される新薬を「新規性に乏しい」として保険収載すべきかについても問題提起。「費用対効果評価の活用方策も含め、抜本的かつ具体的な検討を早急に進めるべき」と主張した。このほか、生活習慣病治療薬の適正使用の推進、地域フォーミュラリやリフィル処方の推進なども盛り込み、コストを政策的に抑制する必要性を指摘した。
財務省は現役世代が負担する社会保険料の負担増を抑制する観点から、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるとの方針を堅持する必要性を主張した。このためには、「取組み余地のあるコスト」の適正化の必要性を指摘した。薬剤関連では、費用対効果評価の適用範囲の拡大、地域フォーミュラリの普及を通じた標準的な治療の促進、患者本位の治療の確立、市場拡大再算定の一層の強化を列挙。薬剤保険給付の在り方の見直しの必要性も言及した。
◎“薬事承認、即、薬価収載”の現状を問題視
費用対効果評価については、「対象とする薬剤の範囲や、価格調整の対象範囲を拡大するとともに、費用対効果評価の結果を保険償還の可否の判断に用いることも検討すべき」と主張した。問題視するのは、“薬事承認、即、薬価収載”となっている現状だ。さらに、「一旦保険収載された医薬品に対しては、その後の費用対効果評価の適用も極めて限定的」と指摘する。実際、2025年3月時点で費用対効果評価による評価は43品目、薬価の引下げ幅は最大▲9.4%にとどまっている。保険償還の可否の判断に用いられていない。
財務省は、国民にとって必要な医療が保障されることを前提としたうえで、適切なエビデンスに基づき、①比較薬と効果が同等だが、必要な医療資源が過大(過小)な薬の薬価を比較薬と同額以下(以上)とすること、②対症療法や無治療との比較で追加的有用性がない薬には保険を適用しないことーなどは、「被保険者としての国民の賛同を得られるのではないか」と提案した。
さらに、類似薬効比較方式Ⅱで算定される新薬については、「類似薬が既に存在し、革新性や追加的な有用性等の利点がない新薬であっても、薬機法の承認さえあれば(ほぼ)自動的に、類似薬効比較方式(Ⅱ)で値付けされ、保険収載される」と問題視した。類似薬効比較方式の算定に際して、比較対象は「薬価」であり、実勢価ではないことや、比較対象となる類似薬から、後発医薬品は除かれることを指摘。プロトンポンプ阻害薬(PPI)を例に、後発品が上市されているにもかかわらず、ネキシウムやタケプロンが後発品より高い薬価で収載された事実も示した。
そのうえで、「新規性に乏しい新薬を開発するインセンティブを製薬企業に与え、革新的新薬の開発意欲を削ぐ点で創薬力強化の点で問題であるだけでなく、限られた医療資源を国民・患者の健康価値の向上に効率的に振り向けるという原則に照らしても大きな問題」と指摘。「特に、類似薬効比較方式(Ⅱ)については、新規性に乏しい新薬をどのように保険収載すべきか、どのように薬価を算定すべきか、といった観点から、費用対効果評価の活用方策も含め、抜本的かつ具体的な検討を早急に進めるべき」と主張した。
◎高額薬剤「保険外併用療養費制度、民間保険の活用を」 市場拡大再算定の拡大にも言及
一方、今後登場が予想される高額薬剤についても、「費用対効果評価制度等の一層の活用を含めた薬価制度上の最大限の対応はもとより、保険外併用療養費制度の柔軟な活用・拡大、民間保険の活用について検討を進めるべき」と主張した。
市場拡大再算定についても言及。①タイミングを偶数年改定時に限定せず、再算定の頻度を高めること、②四半期ごとの再算定の対象となる医薬品の要件を広げること―など、国民負担軽減の観点から見直しをする余地があると考えられるとした。
◎生活習慣病薬 費用対効果加味した処方ルールを スイッチOTC化の推進、フォーミュラリ活用も
生活習慣病治療薬などの選定に際しても「費用対効果も加味した処方ルールを設定すべき」と主張した。高血圧や糖尿病を例に、日本の診療ガイドラインでは費用対効果を踏まえずに薬剤の選択が医師に委ねられていることを例示し、問題意識を表明。「医薬品の適正使用に関するガイドラインを導入し、経済性の観点も考慮した患者本位の診療を推進」する必要性を強調した。
「フォーミュラリの活用により、処方ルールの実効性を高めるべき」であることも指摘した。なお、地域フォーミュラリについては、標準的な薬物治療に資する取組みとして推進する必要性を強調。「各医療保険制度における保険者インセンティブ制度の活用や医療介護総合確保基金による支援など、必要な施策を早急に実施すべき」と主張した。また、降圧薬などの生活習慣病治療薬のスイッチOTC化を推進することも提案した。
◎OTC類似薬 「新たな選定療養」を提案 国民の意識の必要性も指摘
いわゆるOTC類似薬については、「保険給付の在り方の見直しを具体的に進めていくべき」と主張した。OTC類似薬を全額自己負担とする一方、技術料などは保険で賄う保険外併用療養費制度を活用する「新たな選定療養」と位置付けることを提案した。
OTC類似薬を保険給付から外すことによる患者負担の増加なども指摘されるが、「診療や調剤に係る医療費(技術料)を含めた自己負担額の合計との比較でみれば、薬局・ドラッグストアで自らOTC薬を購入した方が安価な場合もある」と説明。「患者側の支払う金額での比較もさることながら、OTC薬として購入できる場合にも医療用医薬品(OTC類似薬)を購入する場合、そのコストの多くは、保険料・税で賄われているという事実を認識する」必要性も指摘した。
◎リフィル処方「早期に的確なKPI設定を」 リアルタイムで確認できる仕組み構築も
このほか、リフィル処方についても、短期的に強力に推進していく必要性を指摘。「早期に的確なKPIを設定するとともに、リフィル処方の実績がリアルタイムで確認できるような仕組みを設けるべき。また、特定の慢性疾患などにおいて、継続的な状況確認が必要な場合でも、薬剤師との連携によりリフィル処方が活用されるよう、診療報酬上の加減算も含めた措置を検討すべき」とした。
◎調剤報酬 調剤技術料・薬学管理料見直しを かかりつけ薬剤師など対人業務に重点化
調剤報酬については、対人業務への転換をさらに進める必要性を強調。「調剤管理料のメリハリ付けが不十分であることや後発医薬品の数量シェアが9割に迫っている状況に照らし、調剤技術料・薬学管理料に係る報酬体系の見直しを行うべきではないか」と指摘。かかりつけ薬剤師指導料や服用薬剤調整支援料への「評価の重点化を進めるべき」と主張した。
また、調剤基本料については、「更なる適正化の余地がある」と指摘。「経営の実態を踏まえながら、処方せん集中率が高い薬局等における調剤基本料1の適用範囲を縮小すべき」と主張した。