HIMSS 25・ウルフCEO トランプ政権のヘルスケアの先行きを警戒 政府資金「同じ状態にないと確信」
公開日時 2025/03/07 04:53

世界最大規模の医療情報管理システムの学会「HIMSS 25」(米・ラスベガス開催)は3月4日のオープニング・キーノートで、ハル・ウルフ プレジデント兼CEOが、トランプ大統領の主導するヘルスケア政策の先行きに警戒感を表明した。ウルフCEO(Photo:HIMSS)は、「(政府からの)資金援助がこれまでと同じ状態にならないと、ほぼ確信できる」と表明。「我々が考えるシナリオやプランニングが重要になる。今後の状況がどう展開するか待ってはいられない」と述べ、HIMSSがこれまで提唱した変革を促すデジタルヘルスの進展、医療AIの活用、サイバーセキュリティ対策等への投資継続を呼びかけ、加えて人材育成の流れを強めるべきとの考えを強調した。(米・ラスベガス発 沼田佳之)
◎ヘルスケアエコシステムの構築に向けたシナリオ構築を
ウルフCEOは、トランプ政権発足後に起こった公共政策の施策変更に懸念を表明した。直近2週間で政府関係者を交えた意見交換の機会に関わったことを明かしながら、ヘルスケア分野への見えない政策変更の可能性を示唆。政府支援など先行きが見通せない状況に懸念を表明した。一方で、ウルフCEOは、ヘルスケアエコシステムの構築に向けたシナリオの構築や、ここ数年で急速に浸透し始めた医療AIを使いこなせる人材育成が求められると強調。「じっと待ってはいられない」と述べ、シナリオのプランニングを実行する投資や人材育成を進めるべきとの見解を表明した。また、「新しい技術と古い組織の組み合わせは、高コストの古い組織を生み出す。私たちは学んだことを活かさなければならない」と強調。「私たちの戦略的思考を活用して、シナリオトレーニングを最大限に活かすべき」と聴衆に呼び掛けた。
◎韓国SMC・Park氏「DARWIN DOCC System」で院内オペレーション最適化

オープニング・キーノートでは、韓国のサムスンメディカルセンター(SMC)・プレジデントのSeung Woo Park氏が登壇した。ソウルに拠点を置くSMCは、世界初のHIMSS Analytics 4重認証ステージ7ステータスを取得し、2024年度HIMSSデイビス賞を韓国の医療機関として初めて受賞している。
Park氏は、患者ケアの向上を推進するデジタルヘルスの役割に触れ、電子カルテ (EMR) の統合と、「DARWIN」 (Data Analytics and Research Window for Integrated kNowledge) など次世代システムの開発に重点を置いて院内のプラットフォーム施策を進めてきたと説明した。ただ、SARS、MERS、COVID-19パンデミックなどを経験する中で、「我々の医療システムの脆弱性が大きく明らかになった」と振り返り、その際に重症患者の治療需要の高まりに直面した背景から、人工知能、データ視覚化、ロボット技術の活用に舵を切ったことも紹介した。
一方で、「DARWIN」を導入した背景については、「医療提供者は、しばしば燃え尽き症候群や人手不足を引き起こす」として、医療スタッフの労働力強化の課題解決が目的だったと指摘。プラットフォームの導入により、看護師の離職率も2019年の9.3%から2023年に5.9%まで改善することができたと明かした。
次なる施策では、「DOCC」(Data-beasd Operation and Communicate through data)というダッシュボードプラットフォームの構築を進めていると説明。「DARWIN DOCC System」で、データに基づいた意思決定を支援し、病院の運営を最適化できると期待感を示した。
◎SMC・Son氏 ソーシャルロボットを活用 「エージェントAIを具現化したい」

サムスンメディカルセンター(SMC)のChief Medical Information Officer and Associate Professorを務めるMeong Hi Son氏も登壇した。Son氏は、同院が取り組む“ノヴァ”、“ムーニー”と名付けられた「ソーシャルロボット」を通じた医療の未来像について独自の見解を披露。Son氏は、「これらのロボットは、子どもの顔を認識し、感情を読み取り、教育的支援を提供できる」と語った。さらに、「技術が患者体験を向上させ、一方で思いやりのあるケアをどのように保つかに役立てることができる」と見通した。その上で、「エージェントAIを具現化したい。ただの相互作用を超え、意味のある患者体験を創り出すロボットにしたい」と意欲を示した。