日本貿易振興機構（ジェトロ・JETRO）は3月11日～15日の日程で米国フロリダ州オーランドにて開催中の「HIMSS 24」の展示会に初めて出展した。ヘルスケア分野で活動する日本のスタートアップ企業を紹介し、海外展開を支援することが目的。今回は8社を紹介する。展示会のブースでは広報用のチラシで来場者に案内し、面談の希望があればジェトロが仲介をアレンジする。本誌取材に応じた秋山博幸チーフ・エグゼクティブ・ディレクター（写真左）は、「日本の会社というところで（参加者に）関心を持って頂けた企業は一定数ある」と感触を披露した。（米国オーランド　沼田佳之）

HIMSS 24の展示会は、ヘルステック企業を中心に、画像診断、EHR活用、病院内システム、生成ＡＩやＶＲ（バーチャルリアリティ）など、ヘルスケア分野で最新のテクノロージを展示・紹介する世界最大のショーケース。AWS、Google、Microsoft、GEヘルスケアなど米国を代表するヘルステック企業にとどまらず、欧州、アジア、中近東のヘルスケア企業やベンチャー、スタートアップが数多く出展した。近年の傾向としては台湾、韓国などアジア企業の参加が増え、存在感を増している。日本からは、富士フイルム、日本光電、デンソー、キャノンの4社が展示ブースを開設した。

展示会では各社がブースで自社ソリューションの紹介をかねたショートレクチャーやパネルディスカッションが同時進行している。夕方から始まるカクテルタイムでは、参加者同士がビールやワインなどのアルコール飲料を片手に、商談などビジネスミーティングがあちこちで開かれる。ここ最近の臨床系の国際医学会とは全く様相が異なっている。むしろHIMSSは“商業的”な要素が強く、ヘルステックの最新トピックや生成ＡＩの話題をめぐり、アカデミア、企業経営者、病院経営者、データサイエンティスト、投資家（ＶＣ）などのステークホルダーを軸に、エコシステムがまわる仕組みが、すでに出来上がっているように感じた。

◎HIMSSで紹介する日本のスタートアップ8社の横顔

これら企業に交じってジェトロもHIMSSで初出展となった。今回紹介する日本のスタートアップ企業は次の8社。①AIMS社（最先端のＡＩ技術を使って一人ひとりの“健幸指標”を解析。行動変容を促すことで人生を楽しみながら健幸に生きられるノウハウや商品、サービスを社会に提供する）、②AMI社（独自の医療機器と遠隔医療で急激な医療革新を実現する）、③グレースイメージング社（「汗」の乳酸濃度から疲れを可視化。この技術を通じて科学的なデータに基づいた新たな医療、スポーツのあり方を提案する）、④I.W.G（“放射線科医のため、社会のために”を掲げ、次世代のクラウドソリューションで、医療資源不足を解決する）、⑤メディカルエッジ（必要なエビデンスをシステムの力で集積し、培ったノウハウや技術を還元することにより、医療のシステム化に貢献する）、⑥オクチィ（社名の通り、“口”に関わる測定と解析の技術を探求し、新たな価値を提供する）、⑦Parafeed（未病から治療後の療養・介護の領域まで、幅広い医療領域にITソリューションを提供する）、⑧サージストレージ（外科手術データの利活用サービス提供およびアノテーションデータ作成）－。

◎2025年6月に大阪開催する国際展示会 「Japan Health」の前哨戦的な活動も

HIMSSの展示会場（写真：HIMSS提供）では、8社のQRコードの入った広報用資料が配られている。ジェトロの秋山博幸チーフ・エグゼクティブ・ディレクターは、「ジェトロはスタートアップ企業を広く支援している。今回の8社はいずれも海外展開に特に興味を持っている企業だ」と指摘。「今回はデバイスを持ち込んでいないので、細かい説明まではできないが、（来場者に）関心を持っていただいている。ジェトロとしては面談の希望があればアレンジする」と強調した。また、今回のHIMSSへの出展については、「日本のヘルスケア分野のスタートアップがここまで育ってきたということを皆さんにお伝えすることが目的だ」と語る。一方で、「2025年6月に大阪で国際展示会 “Japan Health”を開催する」と述べ、「それに先駆けて日本のヘルスケア分野を海外にアピールする狙いも含まれている」と明かしてくれた。