独・ベーリンガーインゲルハイムは4月2日、ドイツ本社で年次グローバル会見を開き、2024年医療用医薬品事業の売上高が前年同期比7.0％増の219億ユーロになったと発表した。主力のジャディアンスとオフェブが業績伸長に寄与したもので、会見に臨んだフベルトゥス・フォン・バウムバッハ取締役会会長は、「24年に同社医薬品で治療を受けた患者が6600 万人（対前年同期比 8.0％増）に到達した」と明かした。なお、日本の医療用医薬品事業の売上高は12億4500万ユーロ。為替影響調整以後の前年同期比は5.0％増収。フランク・ヒューブラー財務担当取締役は、「日本に対し強いコミットメントをもって事業を展開している」と強調。アジア地域における糖尿病や心不全治療薬の需要増への対応を目的とした山形の生産設備「IBUKIプロジェクト」に、2028年まで約3億ユーロの投資を継続する方針を明らかにした。

◎グループ全体売上高は前年同期比6.1％増の268 億ユーロ

同社の24年グループ全体売上高は前年同期比6.1％増の268 億ユーロ。うち医療用医薬品事業が219億ユーロ、アニマルヘルス事業が47億ユーロ（前年同期比 1.9％増）。業績伸長に貢献したジャディアンスは、2型糖尿病、慢性心不全に加えて、慢性腎臓病の適応症を追加するなどジャディアンスファミリーで84 億ユーロ（前年同期比 14.6％増）を売上げた。特発性肺線維症と線維化を伴う一部の間質性肺疾患治療薬のオフェブの売上高は38 億ユーロ（前年同期比 8.9%*増）だった。

◎フベルトゥス・フォン・バウムバッハ取締役会会長　ジャディアンス「さらなるオポチュニティ期待」

フベルトゥス・フォン・バウムバッハ取締役会会長は会見で、ジャディアンスについて、「さらなるオポチュニティが期待できる。CKDがその一つの領域だ」と強調。続けて、「肥満（Obesity）や代謝機能障害関連脂肪肝炎（MASH）に対応するSurvodutide（BI 456906）を準備している」と述べ、「これら治療薬を通じて8億5000万人の患者に対応していくことになる」と強調した。

◎パオラ・カサローザ取締役「2030年までに30の新製品上市達成を」

研究開発投資についてフランク・ヒューブラー財務担当取締役は、「医療用医薬品事業に57億ユーロを投資してきた。これは売上比28％で、業界平均を３ポイント上回っている」と強調。さらに「過去5年間の研究開発に約250億ユーロを投資してきた」と述べ、これを継続する方針を示した。一方、イノベーションユニット責任者のパオラ・カサローザ取締役は、「４つの疾患領域で85のプログラムが走っている」と説明。「2030年までに30の新製品上市を達成したいと考えている」と明かした。

なお、2025年は、ゾンゲルチニブとネランドミラストの上市が期待される。ネランドミラストは、特発性肺線維症および進行性肺線維症患者の治療を前進させる可能性がある。主要評価項目を達成した 「FIBRONEER試験」（第3相試験）の全データは今後数か月以内に発表される予定。一方で、ゾンゲルチニブが承認を取得すると、治療歴のあるHER２遺伝子変異陽性の進行性非小細胞肺がんを対象とする初の経口投与の標的治療薬となる。

◎フランク・ヒューブラー財務担当取締役　日本への設備投資の状況を説明

フランク・ヒューブラー財務担当取締役は日本への設備投資の状況を説明。一つはジャディアンスの追加需要に応えられるようにする投資。もう一つがコロナ禍で脆弱だと指摘されたサプライチェーンを強化するための“リージョナル・ハブ”として山形の生産拠点を強化し、アジア地域への供給確保を図る取り組みを進めていると説明した。なお、設備投資はグローバル全体で12億ユーロ。日本に対しては2028年まで約３億ユーロの投資を継続を実行する考えを明言した。

◎米トランプ政権へのビジネス影響「米国政府も患者へのアクセスを提供しなければいけない」

米国トランプ政権へのビジネス影響についてフベルトゥス・フォン・バウムバッハ取締役会会長は、「米国はグローバル全体の売上の45%を占めている。現在の研究開発投資額を維持するためには、米国は今までもそうですし、今後も重要なマーケットであり続けると思っている」と強調。トランプ大統領が主張する「関税」の影響についてフランク・ヒューブラー財務担当取締役は、「中長期的に患者へのアクセスを考えるべき。米国政府も患者へのアクセスを提供しなければいけない」と述べながらも、詳細が分からない中で「時期尚早」と答えた。ただ、対象製品に医薬品が含まれると、「アクセスし難くなるのは事実では」との認識を示した。