国内製薬トップ年頭所感 新薬創出やグローバル展開、新事業・サービス拡大で新たな価値提供に期待も
公開日時 2025/01/07 04:50
国内製薬企業各社は2025年の始動にあたり、経営トップが年頭所感を発表した。新薬の創出やグローバル展開について意欲を示した企業が多く目立ち、人事制度改革や組織改革を行う企業も多くみられた。また、新製品やサービスなどの事業拡大を行い、新しい価値の提供へ取り組む企業の姿が見られた。
◎中外製薬・奥田社長CEO 新人事制度導入で次の100年へ「患者中心」の姿勢貫く
中外製薬の奥田修代表取締役社長CEOは昨年を「新薬の承認や発売、主力品の適応拡大をはじめとする研究開発を中心に多くの成果を挙げた一年」だったと振り返った。同社の成長戦略TOPⅠ2030の開始から5年目を迎える25年1月からは、一般社員へのジョブ型雇用などを盛り込んだ新人事制度を導入。「イノベーションを育む組織風土をさらに磨き上げ、さまざまな属性やバックグラウンドを持つ社員が成長し、生き生きと活躍できる会社、社員一人ひとりが自分でキャリアをデザインでき、やりたいことに挑戦できる会社」にしていくと抱負を述べた。
同社は今年創立100周年の節目を迎える。「2025年、そしてその先の100年も、『患者中心』の価値観を軸に、世界の医療と人々の健康に貢献することを目指し、イノベーションの追及に邁進していく」と意気込みを語った。
◎大塚HD・井上社長CEO 長期的視点での研究開発投資を継続 「利益の質と規模の向上」を
大塚ホールディングスの井上眞代表取締役社長兼CEOは、「ヘルスケアに関連する製品やサービスを提供することにとどまらず、一人ひとりの健康的な日常に寄り添う存在となることを目指している」と多様な事業をベースにした同社の姿勢を改めて示した。昨年発表した第4次中期経営計画(24年~28年)で掲げた「トータルヘルスケアをコンセプトに、地球環境、女性の健康、少子高齢社会という社会課題の重点的に取り組む」ことについても触れ、「長期的な視点での研究開発投資を継続することで、新薬の創製を図るとともに、新製品やサービスによる事業拡大による利益の質と規模の向上を行っていく」と力を込めた。
◎塩野義製薬・手代木会長兼社長CEO ポジティブな流れを汲み、売り上げ目標5500億円目指す
塩野義製薬の手代木功代表取締役会長兼社長CEOは、「SHIONOGI全体としては、昨年の国内・海外の堅調な販売、研究開発の順調な進展等から総合的に勘案すると、ポジティブな流れが出始めているのではないか」と考えを明かし、「2025年度の売上目標5,500億円は、心をひとつにして前進していけば、必ず達成できると考えている」と強調した。
恒例の今年の一字は「天」。物の最上部「天上」に加え、自然の道理のはたらき「天然」や良い巡り合わせや運命「天命」という前向きの開かれた意味があることを述べ、「より高みを目指しましょう。そのような真摯な努力を継続している場合にのみ、天は私たちの味方をしてくれる」と語り、コンプライアンスやDE&Iにも取り組む構えを見せた。
◎小野薬品・相良会長CEO グローバル展開の加速と新薬候補の獲得へ意欲
小野薬品の相良暁代表取締役会長CEOは、「米国での新薬上市や2024年にグループ化したデシフェラ社とのシナジー創出などに取り組む」と強調し、「グローバル展開を一層加速していくこと」や「新たな新薬候補の獲得に努めること」を優先事項として挑んでいくと明かした。製薬業界を取り巻く事業環境については、「厳しい財政、創薬力の強化、ドラッグラグ、ドラッグロスの解消、安定供給への対応など課題が多く、不透明さはさらに高まっている」と課題感を示した上で、「当社としてもイノベーションを創出し、課題一つひとつに向き合い、挑戦していきたい」と意気込みを明かした。
◎住友ファーマ・木村社長 「個の力や結束を強め、新しい住友ファーマを作る」
住友ファーマの木村徹代表取締役社長は昨年を「激動の1年」と振り返った。23年度に連結最終損益で約3000億円の赤字を計上した同社は、6 月に社長交代を含む新たな経営体制が立ち上がり、秋に大規模な早期退職募集と組織改革を実施。「このような事態を二度と招いてはならず、この経験を最大限に生かして再生の道を進まねばならない」と引き締めた。
また今年の干支の巳年と絡め、「蛇は東洋では再生や永遠の象徴」、「西洋でも医学に近い存在」と意味を語り、「復活を目指す当社にとって2025年はうってつけの年になるのではないか」と意欲を示した。「強い個の力、強い結束、自由闊達な議論や変革に挑戦する勇気ある行動を積み重ねて我々の新しい住友ファーマを作り上げることが必要」と呼び掛けた。
◎エーザイ・内藤CEO レケンビの診断・治療へのアクセス向上へ 万全の準備を
エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは、早期アルツハイマー病治療薬・レケンビ(一般名:レカネマブ)について、昨年は「米国・日本・中国をはじめとする各国で、安全性を最優先にレケンビをお届けすることに注力し、実臨床において多くのアルツハイマー病の当事者に貢献することができた」と胸を張り、「2025 年は、EU をはじめ、現在申請中の18の国と地域においても承認を取得し、レケンビを待ち望む当事者様に一日でも早くお届けできるように努めていく」と強調した。さらに、アルツハイマー病の診断・治療へのアクセス向上を目指し、「皮下注射オートインジェクターの開発・普及と、血液バイオマーカーによる診断の実装に向けて、万全の準備を進めていく」と期待感を示した。
◎帝人ファーマ・種田社長 「希少疾患+在宅医療」体制への事業構造の転換へ
帝人ファーマの種田正樹代表取締役社長は24年4月に、アクセリード社との合弁会社Axcelead Tokyo West Partnersを立ち上げ、運営を開始したことに触れ、「国内外の創薬プレーヤーからの需要を取り込みながら、創薬の総合支援サービス企業として成長していくことを強く期待している」と語った。また、希少疾患・難病領域への事業展開を目指して Ascendis 社から導入した3製剤ACP-014、ACP-011/-011A、ACP-015について、いずれも上市へ向けた準備が順調に進んでいると明かしたうえで、その準備として、「希少疾患医薬品等を取り扱うスペシャリティケア推進部を新設するとともに、全国の支店・営業所の統合再編を昨年10月に実施した」と述べた。
今年は、「在宅医療で培った事業基盤と医薬品、医療機器を組み合わせることで、誰もが住み慣れた自宅で安心して治療を継続できる新しい価値提供を推進していく」ことを具体的な主要アクションとして掲げ、「『希少疾患+在宅医療』体制への事業構造の転換に継続して取り組む」と抱負を述べた。