明治HD・川村社長 原口議員の提訴準備に「個別事案の回答控えたい」 他人のワクチン接種の妨害は問題
公開日時 2024/11/12 04:49
明治ホールディングス(HD)の川村和夫代表取締役社長CEOは11月11日の2024年度第2四半期決算説明会で、傘下のMeiji Seika ファルマが新型コロナワクチン・コスタイベをめぐり立憲民主党の原口一博衆院議員を名誉棄損で提訴する準備に入っていることについて、「個別事案の回答は控えたい」とコメントした。ただ、コスタイベを含む新型コロナワクチンの各人の接種判断に関しては、「個人の心情に入り込むつもりはない」とした上で、「他人の接種を妨害したり、事実ではない情報をSNS等で流すことは望ましいあり方ではない」と問題意識を表明。明治グループとしては、一般の人にもコスタイベの科学的な情報が届くよう、医療関係者や流通関係者に対してデータやエビデンスに基づく丁寧な情報提供活動を継続することが重要との考えを示した。
川村社長は、10月からの定期接種に用いるオミクロン株JN.1対応のコスタイベが9月13日付で一変承認される前までは、「情報提供活動ができなかった」と振り返った。ただ、一変承認を取得し、10月から65歳以上の人などの定期接種が開始されたこともあり、「10月以降は個々の医療機関あるいは流通関係者を含め、承認取得に至ったデータなどを示しながら丁寧な説明をさせていただいている」と述べ、コスタイベの安全性や有効性に対する医療関係者の理解を得る活動に注力しているとした。
また、新型コロナ感染症に対する社会の危機感が薄れている現状にも触れ、「新型コロナは決してなくなったわけでも、リスクが減ったわけでもない」とし、25年以降も引き続きコスタイベの科学的な情報を「しっかり伝えていく」と強調した。
◎Meiji Seika広報部 原口議員提訴準備の状況に変化なし
なお、Meiji Seika 広報部はこの日、本誌取材に、原口議員を名誉棄損で提訴したかについて、10月31日に発表した公式見解の通り、「(名誉棄損で)現在、提訴を検討し、準備を進めている」との状況に変わりはないと説明した。
Meiji Seikaは公式見解の中で、原口議員がSNS等で次世代mRNAワクチン・コスタイベについて、「長期にわたり非科学的な誹謗中傷を繰り返している」と指摘。特に問題視しているのは、「開発会社の当社を『731部隊』と表現したり、国の承認を受けた次世代mRNAワクチンを『生物兵器』であるとか『3発目の原爆』」などと繰り返し発言していることだと訴えている。
◎医薬品事業の下期計画を下方修正、営業利益101億円減 コスタイベの計画見直しなど影響
明治HDはこの日、24年度上期業績や、下期及び通期業績予想の修正を発表した。医薬品事業(=医薬品セグメント)の24年度下期予想は売上、営業利益とも下方修正し、修正後の売上予想は1319億円(期初計画比53億円減)、営業利益は64億円(同101億円減)と設定した。
営業利益を期初計画から引き下げた主な理由は、▽研究開発費の上期からの期ズレ、▽インフルエンザワクチンの上期の前倒し出荷による下期の出荷量の減少――に加え、コスタイベの計画見直しがある。
◎新型コロナワクチンの定期接種の接種率 政府計画の「半分以下」
川村社長は、コスタイベについて、「当初427万回の出荷を予定していたが、新しいタイプのワクチンということなどにより、厳しい状況になっている」と指摘。10月からの新型コロナワクチンの定期接種の接種率自体が「非常に低調で、(政府の計画の)半分以下になっている」との市場環境も影響し、コスタイベの売上や利益を下方修正したと説明した。
◎医薬品事業の通期計画は据え置き 上期好調で下期の下振れを相殺
医薬品事業の下期計画は下方修正したものの、通期予想は上期の好業績を受けて期初計画を据え置いた。通期予想は、売上は前年同期比19.3%増の2458億円、営業利益は10.2%増の250億円――としている。
上期の売上は前年同期比12.9%増の1138億円、営業利益は16.7%増の185億円だった。インフルエンザワクチンの上期の前倒し出荷や、主力品や不採算品再算定により薬価が約14%引き上げられるなどした注射用抗菌薬・スルバシリン、5月発売の選択的ROCK2阻害薬・レズロックの売上貢献もあり、2ケタの増収・営業増益となった。4月の薬価改定では、主に注射用抗菌薬の薬価引上げにより、営業利益に9億円の増益をもたらした。
24年度上期の主要製品の売上の伸び率は、メイアクトが27%増、リフレックスは25%減、シクレストは16%減、ビラノアは4%減――だった。