中外製薬 デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子治療用製品「SRP-9001」を承認申請
公開日時 2024/08/19 04:50
中外製薬は8月14日、遺伝子治療用製品のdelandistrogene moxeparvovec(開発コード:SRP-9001)について、日本でデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を対象疾患に承認申請したと発表した。海外製品名は「Elevidys」。本製品は厚労省から希少疾病用再生医療等製品の指定を受けており、優先審査の対象となる。
中外製薬は、本製品の投与対象について、DMDのうち、エクソン8及び/又はエクソン9を含む欠失変異を有さず、抗AAVrh74抗体が陰性である3~7歳の歩行可能な男児を目指している。投与前には抗AAVrh74抗体の陰性の確認が必要で、これはロシュ・ダイアグノスティックスが6月に承認申請したdelandistrogene moxeparvovecのDMDの適応判定を補助するコンパニオン診断薬(海外製品名:Elecsys Anti-AAVrh74)を用いる予定。
本製品の承認申請は、歩行可能なDMDの4~7歳の男児を対象にした本製品の有効性および安全性を評価したグローバル第3相臨床試験(EMBARK)の成績などに基づく。
EMBARK試験の結果、主要評価項目である運動機能を評価するノース・スター歩行能力評価(NSAA)はプラセボに比し統計学的な有意差は認められなかった。しかし、副次的評価項目(床から立ち上がるまでの時間、10メートルの歩行時間、Stride Velocity 95th Centile[SV95C]、4段上るまでの時間)において、臨床的に意義のある改善が認められた。安全性については、新たな安全性のシグナルは認められなかったという。
中外製薬は、「これまでに実施した本品のすべての臨床試験成績、及びDMD自然歴経過との比較結果に基づき、本治療薬のベネフィット・リスクのバランスが良好であると考えたことから本承認申請に至った」としている。
◎奥田社長「1回の投与でDMDの原因となるジストロフィンの発現を補うよう設計」
中外製薬の奥田修代表取締役社長CEOは、今回の申請にあたり、「DMDは幼少期に発症し、学童期に症状が急速に進行していく生命予後の悪い難治性の筋疾患。筋力低下により自立した生活や質も著しく低下する一方、根本治療はない」との認識を示した。そして、「delandistrogene moxeparvovecは1回の投与でDMDの原因となるジストロフィンの発現を補うよう設計されており、日本で本疾患初の遺伝子治療用製品となる可能性がある。DMDの新たな治療として患者さんに一日でも早くお届けできるよう、承認取得に向け取り組んでいく」とコメントした。
DMDは、筋肉にかかわるタンパク質であるジストロフィンの産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症する。ジストロフィンは、筋線維を強化し、筋収縮時の損傷から保護するタンパク質複合体の重要な成分。DMD遺伝子の変異により、DMDでは機能性ジストロフィンを体内で産生できなくなり、筋細胞は損傷に対する感受性が高まり、筋組織の瘢痕化や脂肪化が徐々に進行する。
delandistrogene moxeparvovecは、標的とする骨格筋、呼吸筋及び心筋において、本剤により短縮型ジストロフィンの発現を介し、DMDの原因に働きかけるようデザインされている。