フェリング・プルバー社長 遺伝子治療に参入、膀胱がん適応で「来年以降に申請」 持続成長へ人材採用も
公開日時 2024/10/30 04:52
フェリング・ファーマのジョン・プルバー代表取締役社長CEOはこのほど本誌インタビューに応じ、遺伝子治療分野に新規参入すると表明した。膀胱がんに対する遺伝子治療薬「FE999326」(開発コード)の開発にリソースを集中する考えで、「(FE999326は)全て計画通りであれば来年以降に申請する。我々としては26~27年に日本に導入したい」と述べた。またプルバー社長は、遺伝子治療のほか、重点領域のリプロダクティブ・ヘルス(生殖医療)、消化器、泌尿器/泌尿器がんの製品価値を最大化することで、「将来的に会社を2ケタ成長させる」と強調。MRやメディカルアフェアーズなど「当社の成長に直接関わってくれる人材を求めている」と話した。
プルバー氏は今年9月1日付で同社の社長に就任した。「『すべては人から始まる』とのフェリングの理念を胸に、日本の患者さんにこれまでと同様に貢献することはもちろん、さらなる高みを目指す」と抱負を述べた。
全世界の従業員数は約7000人、日本法人は約120人(うちMRは55~60人)。フェリングは「大きすぎず、小さすぎない製薬企業」であり、長所は「アジャイルな対応力」だと語った。そして、「明確な優先順位付けと領域フォーカスで、迅速かつ柔軟に事業展開していく」とし、「現在の治療領域だけではなく、数年内に新しい領域にイノベーションをもたらす」と述べ、遺伝子治療領域に新規参入する計画を明らかにした。
◎膀胱の完全切除以外の治療法を提供 「大きな違いをもたらす」
遺伝子治療の国内開発パイプラインとして公表しているのはFE999326で、これはアデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療薬。現在、日本人の膀胱内BCG療法が奏功しない高グレード筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC: Non-Muscle Invasive Bladder Cancer)患者に対するFE999326の膀胱内注入療法における安全性及び有効性を評価する第3相オープン試験を実施している。膀胱内への注入は3カ月に1回行う。
プルバー社長は、膀胱がんによる国内年間死亡者数は約1万人と日本で13番目に死亡者が多いがんだと指摘。高グレードNMIBCで膀胱内BCG療法が奏功しなかった場合の治療選択肢は、侵襲性の高い根治的膀胱全摘除(膀胱の完全切除)になるとも説明し、「膀胱内BCG療法が奏功しなかった膀胱がんには、非常に重要なアンメットメディカルニーズがある」との認識を示した。
そして、「我々は、BCG療法が奏功しなかったNMIBCに対してファーストインクラスの製品をお届けすることで、膀胱の完全切除以外の治療が提供でき、現状と比べ大きな違いをもたらすことになる」と強調し、「国内への導入のためにできる限りのことを行い、早く日本で上市したいと考えている」と述べた。
◎開発進捗など踏まえMRやメディカルアフェアーズの増員も
FE999326の国内営業体制も気になるところ。これにプルバー社長は、「基本的にはフェリング・ファーマ単体で展開する」とした上で、社内に新たなチームは作らず、現在のスペシャリティメディスン事業部でFE999326を手掛けていく予定だと説明した。今後の開発の進捗や市場調査の結果によっては、25年以降にMRやメディカルアフェアーズを増員する可能性もあるとした。
なお、FE999326は米国で22年12月に、高リスクBCG不応性NMIBCの適応で、世界で初承認された。米国市場で膀胱がんに対して承認された初の遺伝子治療薬でもある。米国製品名はAdstiladrin(一般名:nadofaragene firadenovec-vncg)。国内開発が計画通りに進めば、日本は米国に次いで2番目に承認・上市される国になる見通しだ。
◎日本の少子化対策 「グローバルリーダーとしてしっかりとサポートしたい」
日本法人は23年1月から、生殖医療にフォーカスする「リプロダクティブメディスン」と、消化器科、泌尿器/泌尿器がんのほか、将来は遺伝子治療も扱う「スペシャリティメディスン」の2事業部制で活動を始めた。特定領域に注力してパフォーマンスを最大化するねらいで、MRはそれぞれに配置している。
このうちリプロダクティブメディスンにおいて、フェリングはグローバルリーダーとして知られている。プルバー社長は、日本の少子化と不妊治療の現状について、不妊治療が22年4月に保険適用されて生殖補助医療(ART)による出生児が22年度は前年度比で11%伸びたものの、合計特殊出生率は21年1.30、22年1.26、23年1.20――と下がり続づけていると指摘した。
その上で、「我々はこの分野のグローバルリーダーとして、日本政府の取り組みをしっかりとサポートしていきたい。当社にとって優先順位の高い取り組みだ」と述べ、日本の少子化対策に貢献していく構えもみせた。