EMA・CHMP レカネマブの販売承認申請に否定的見解を採択 エーザイは「極めて残念」 再審議請求へ
公開日時 2024/07/29 04:51
欧州医薬品庁・欧州医薬品委員会(CHMP)は7月25日(現地時間)、アルツハイマー病治療薬・レカネマブの販売承認申請について否定的見解を採択した。CHMPによると、レカネマブの認知機能低下を遅らせる効果が、患者の脳の腫れや出血の可能性を伴うアミロイド関連画像異常 (ARIA) の頻発を相殺するものではないと判断したことによる。これを受けてエーザイとバイオジェン・インクは7月26日、「今回の CHMP の見解に対し、再審議(re-examination)の請求を行い、一日も早くレカネマブをお届けできるよう努めたい」とのコメントを発表した。
CHMPによると、レカネマブの安全性に関する最も重要な懸念はARIAの頻繁な発生と指摘。「ARIA の殆どの症例は重篤でなく、症状も伴わないが、入院を必要とする脳内の大きな出血など、重篤な事象を経験した患者もあった」とし、「この副作用の重篤性はレカネマブで見られる小さな影響を考慮して検討する必要がある」と指摘した。また、「ARIAのリスクが、アポリポ蛋白質eと呼ばれるタンパク質の遺伝子の特定の形態を持つ人々でより顕著であるという事実を懸念していた」と強調した。なお、今回の意見を出すにあたりCHMPは、神経科医や神経疾患患者などの専門家を含む神経学に関する科学諮問グループの意見も考慮したと明かした。
CHMPは、認可を申請したEisai GmbHに対し、意見を受け取ってから15日以内に再審査を請求することができるとした。
◎エーザイ・Lynn Kramer, M.D.チーフクリニカルオフィサー「否定的見解は極めて残念」
これを受けてエーザイのLynn Kramer, M.D.チーフクリニカルオフィサーは「今回の CHMP による否定的見解は極めて残念で、多くのアルツハイマー病のコミュニティにおいて大きな失望をもって受け止められている」と指摘した。また、「アルツハイマー病は不可逆的な神経変性疾患であり、当事者に加えて、介護者、そして社会にとっても大きな課題となっている」と述べ、「アルツハイマー病の根本原因を標的とする革新的な治療薬に対するアンメットニーズは極めて高く、我々は早期アルツハイマー病の当事者様やそのご家族に有意義な変化をもたらすことに引き続き注力していきたい」とコメントした。
欧州における認知症の当事者数は 690 万人と推定され、AD当事者数は高齢化の進展に伴って増加し、2050年までに約2倍になるとみられる。