エーザイ・内藤CEO レケンビの米国・通期売上予想を170億円下方修正 遅延あるが成果もあげつつある
公開日時 2024/11/11 04:52
エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは11月8日、2024年度第2四半期決算説明会で、早期アルツハイマー病(AD)治療薬・レケンビ点滴静注の米国における通期売上予想を、インフュージョンキャパシティー不足を理由に170億円下方修正したと発表した。同社調査から、米国での9月末のレケンビ投薬中患者数は約1万人で、待機患者数は約6000人と推計され、「1万人というのは23年度末に本来到達すべきレベルだった」と説明。「約6か月遅延しており、誠に申し訳なく思っている。何か構造的な欠陥や薬の性能に問題があるわけではない。24年度末には6000人の待機患者を投薬に回すだけのキャパを確保する契約は既に完了しており、遅延はあるものの、一定の成果を上げつつあると考えている」と語った。
◎レケンビの通期業績予想 日本と中国は上方修正
当初、同社はレケンビのグローバル通期売上を565億円と予想していたが、今回425億円に見直し、140億円下方修正した。地域別では、米国売上予想を当初の435億円から265億円に170億円引き下げる。一方、日本は当初の100億円から120億円に20億円、中国などでは当初の30億円から40億円に10億円それぞれ引き上げた。
米国では、大規模診療ネットワークであるIDN(Integrated Delivery Network)傘下にあるレケンビ投薬可能病院とインフュージョンセンターの増加、全米をカバーする点滴専門企業であるAIC(Ambulatory Infusion Center)との契約等の取り組みにより、「現在1万人分と想定しているインフュージョンキャパを今年度末には1万8000人~1万9000人まで拡大するよう契約は既に完了している。待機症例は今年度末に向かってインフュージョンに回っていくことができる」と見通した。さらに25年度には2万6000人超のキャパを確保する予定とした。
◎レケンビの最大のゲームチェンジャーは「SC-AI(皮下注製剤)」 25年度中の米国承認目指す
内藤CEOは、レケンビの一般化、普遍化への最大のゲームチェンジャーとして、SC-AI(皮下注製剤)を挙げた。SC-AI維持投与に関する米FDAへの段階的申請の完了を11月1日に発表しており、25年度上半期に承認取得予定とした。また、現在の静注製剤(IV)からの全面的な切り替えを可能とするSC-AI初期投与の開発を進めており、SC-AI維持投与の承認が得られ次第、薬事申請し、25年度中の承認を目指すとした。
もう一つのゲームチェンジャーと位置付けたのが、BBM(Blood-based Biomarker)。現状、アミロイドβ確認試験であるアミロイドPETや脳脊髄液(CSF)検査の前段階のプレスクリーニング用途の使用が急拡大しているBBMだが、内藤CEOは「25年度にはAβ確認試験に組み込まれると見込んでいる。PET、CSFから血液に移ってくることになる」との見通しを示した。その上で、「2つのゲームチェンジャーはAD診断・治療パスウェイの大幅短縮と軽減、PCP(かかりつけ医)のAD診断・治療への本格参入をもたらし、AD市場はさらに大きく拡大する」と語った。
◎レケンビ承認に否定的見解が採択された欧州 「再審議プロセス進行中。大いに期待している」
レケンビの承認に否定的見解が採択された欧州について内藤CEOは、同社の請求により再審議プロセスが進行中で、11月に欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)で議論される予定とし、「大いに期待して待っている状況だ」と述べた。なお、英国では、臨床試験でアミロイド関連画像異常(ARIA)の発現割合が比較的高かったアポリポ蛋白E(ApoE)ε4ホモ接合型キャリアを外した形で早期ADの承認を24年8月に取得している。
第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比3.1%増の3850億円、営業利益が11.4%減の278億円となった。日本の医療用医薬品の売上は、ヒュミラの共同販促契約満了の影響などで7.9%減の959億円だった。23年12月発売のレケンビは42億円を売り上げた。現在のレケンビの投薬中患者数は約5000人となっており、「予定どおりか、予定より進行している」という。不眠症治療薬・デエビゴの売上は26.8%増の212億円、JAK阻害剤・ジセレカは16.0%増の72億円と大幅に伸長した。
通期連結業績予想に変更はない。個別製品では、抗がん剤・レンビマの米国売上予想を80億円引き上げ、2120億円とした。
【連結業績 (前年同期比)通期予想(前期比)】
売上高 3850億2300万円(3.1%増)7540億円(1.7%増)
営業利益 278億3700万円(11.4%減)535億円(0.2%増)
親会社所有者帰属純利益 216億9300万円(6.2%減)430億円(1.4%増)
【グローバル主力製品売上高 (前年同期実績)通期予想、億円】
レンビマ 1649(1514)3045←修正前2965
日本 69(82)150
アメリカス 1159(988)2120←修正前2040
EMEA 212(192)395
中国 131(184)240
アジア・ラテンアメリカ 77(69)140
レケンビ 163(4)425←修正前565
日 42(—)120←修正前100
米 105(4)265←修正前435
中国など 16(—)40←修正前30
デエビゴ 253(194)520
フィコンパ 147(136) 270
【
国内主要製品売上高(前年同期実績)通期予想、億円】
デエビゴ 212(167)440
ジセレカ 72(62)—
レンビマ 69(82)150
メチコバール 43(49)85
レケンビ 42(-)120←修正前100
グーフィス 39(35)75 ※
フィコンパ 38(35)80
ハラヴェン 38(41)70
モビコール 37(32)70※
エレンタール 37(37)65※
エクフィナ 32(29)70
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