再生医療イノベーションフォーラム（FIRM）の志鷹義嗣代表理事会長（アステラス製薬専務担当役員研究担当）は７月12日の記者会見で、再生医療等製品の条件及び期限付承認から本承認までの間の保険適用のあり方について、FIRMとしては引き続き公的医療保険でカバーすべきとの立場だと説明した。「我々としては今のまま皆保険でカバーする。薬機法の下で承認されているので、このような考え方」と述べた。一方、厚労省が３月29日付で発出した条件及び期限付承認品目が本承認を得るために考慮すべき点などを示したガイダンスに関しては、「市販後の本承認に向けた評価計画に必要な条件が明確になった」「予見性が高まった」と評価した。

条件及び期限付承認品目の保険適用のあり方では、畠賢一郎代表理事副会長（ジャパン・ティッシュエンジニアリング代表取締役社長執行役員）も所見を述べた。条件及び期限付承認品目は治験結果から有効性が推定されると認められた製品だとした上で、「これで治る可能性があるということを考えると、我が国でできる限り公平に医療を提供するという観点から保険適用されるべき」と強調した。ただ、医療保険財政が限られているとの観点から、条件及び期限付承認品目の保険適用のあり方が指摘されるのであれば、「それは再生医療等製品に限ったことではないと思っている。医療全体の議論であり、大所高所に立った議論を待ちたい」と述べた。

FIRMの加納浩之運営委員長も、「患者にいかに早く薬を届けるかということのために、条件及び期限付承認制度が生まれた」と指摘。「条件及び期限付承認品目だから皆保険から外すとなると、患者アクセスを加速させるということとの関係を考えないといけない」と論点のひとつを示した。

再生医療等製品の条件及び期限付承認品目の保険適用のあり方をめぐっては、７月３日の中医協総会で、アンジェスが条件及び期限付承認品目・コラテジェンの本承認取得のための申請取り下げ、結果的に条件及び期限付承認の失効という一連のアンジェスの対応に疑義が示され、保険適用のあり方などに議論が波及した。

アンジェスは市販後調査で国内第３相臨床試験成績を再現できず申請を取り下げたが、それを公表したプレスリリースでは、米国での臨床試験の「良好な結果」を強調。「この結果を踏まえて、これまでの重度のみの患者を対象とした条件付き期限付き承認を一旦取り下げ、重症度を問わず幅広く閉塞性動脈硬化症患者の潰瘍の治療を対象として新規申請を行うことを決定した。これに伴い、コラテジェンの対象患者層の拡大が見込る」などとして、“開発販売戦略の変更”であることを強く打ち出した。

この企業対応に中医協支払側の松本真人委員（健康保険組合連合会理事）が、「これまで公的医療保険でカバーしてきたことを考えると、医療保険制度をある意味翻弄するものであり、極めて遺憾であると言わざるを得ない」と断じた。さらに条件及び期限付承認品目の薬価のあり方の議論の必要性、保険外併用療養制度の導入を求める声もあがり、26年度薬価制度改革の論点に浮上した。

◎「本承認までの試験計画を含めた予見性が高まった」　厚労省ガイダンスを評価

志鷹代表理事会長は、厚労省が３月29日付で発出した課長通知「再生医療等製品に係る条件及び期限付承認並びにその後の有効性評価計画策定に関するガイダンス」について、「条件及び期限付承認に求められる対応が示され、市販後の本承認に向けた評価計画に必要な条件が明確になった」と評価した。ガイダンスの策定にあたりFIRMとして厚労省及びPMDAと意見交換を重ねたとも振り返った。

ガイダンスでは、条件及び期限付承認後の承認条件評価計画で考慮すべき点として、（１）症例数、（２）評価実施施設数、（３）評価項目の客観性、（４）症例のランダム化、（５）評価の盲検化、（６）対照群の設定と方向（前向きor後ろ向き）――の６項目が明示されている。志鷹代表理事会長はこの６項目に触れ、「本承認に向けた有効性評価の計画策定にあたり留意事項が明らかに示された。本承認までの試験計画を含めた予見性が高まった」と好意的な見解を示し、「条件及び期限付承認は本承認への通過点。継続的に製品の安全性と有効性の担保に努めていく」と決意を語った。