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製薬協・上野会長 創薬力強化へ「新規モダリティの製造基盤、可及的速やかに国内で構築を」 海外CMO依存に懸念

公開日時 2024/05/28 05:00
日本製薬工業協会(製薬協)の上野裕明会長(田辺三菱製薬代表取締役)は5月27日、日本CMO協会の定期総会で講演し、再生・細胞医療など新規モダリティにシフトする中で、「新規モダリティの製造基盤を可及的速やかに国内でも体制整備していかないと、国民皆保険を維持していくうえでも大きな障壁になるのではないか」と危機感を露わにし、対策の必要性を訴えた。今後、バイオ医薬品の特許切れが増加することが見込まれる中で、日本のバイオCMO/CDMOは世界に存在感を示せておらず、抗体医薬の生産も海外生産が大きく増えている状況にある。

◎特許切れ後のバイオシミラー増加で「負のスパイラル」に懸念 海外CMOへの依存で

「考えたくはないが、新規モダリティの国内製造基盤が不足すると海外のCMOへの依存が進む。技術力等も海外に持っていかれ、バイオシミラーになっても委託先が海外にいってしまうと、キャッシュが日本から流出してしまう。トータルとして日本の製薬産業全体が十分に繁栄できていけない」-。上野会長は、日本に新規モダリティの製造基盤がないことで、“負のスパイラル”に陥ることへの懸念を表明した。日本では薬価制度上でも、特許切れ後は後発品に速やかに道を譲ることが求められる設計となっている。このため、バイオ医薬品の特許が切れた後に日本に製造を請け負う基盤がなければ、「海外の方に流出していってしまうということになりかねない」と懸念を表明した。

こうした状況を避け、“正のスパイラル”とするために、「創薬の初期段階で、速やかに新しいモダリティを供給していただけるために、製造基盤をどう整えるか。いわゆる実生産、さらには特許切れ後のバイオシミラーの製造基盤をどう整えるかが大きな課題だ。こうした問題意識を持ちながら、国に対して色々要望している、あるいは提案をしている」と述べた。

◎より早期段階からCMO/CDMOとの協業の重要性を強調

特に、早期段階での製薬企業とCMO/CDMOの協業の重要性を強調した。新規モダリティが主流になる中で、「我々製薬企業の中でも、創薬プロセスが大きく変わってきている。創薬研究の最初の段階から非臨床試験まで含めて製薬企業のインフラの中だけで完結してきたが、新規モダリティでは、最初の段階から評価などのケイパビリティを持つようなスタートアップやCRO、CMOと協業をしながら、良いものを一緒に育てていく。要するに早い段階からマルチの協業が必要になってくる、いわゆる創薬エコシステムが必要になってくるということだ」と述べた。

具体的には、「CRO的な機能になるかと思うが、研究段階では少量でも構わないので速やかに出す。開発から実生産まで品質の高いものを安定的に作ることが求められる。それを基にさらに大量に製造する商業化に向けたスケールアップ、その先には、特許品になってもバイオシミラーになっても保てるような仕組みを作る」必要性を強調。国やアカデミアが人材育成や技術育成に向けた取り組みを進める中で、製薬企業も人材育成に協力しているとして、CMO/CDMOにも、「手を携えながらやっぱり新しい技術開発に取り組んでいただければと思う」と述べた。

◎低分子創薬「強みを維持しながら」 TPDやADCなど新規モダリティへの発展も

新規モダリティに注目が集まる中で、「低分子医薬品は厳然として使われており、まだ一定の伸びがある。低分子創薬については我々の強みを維持しながら、新たなモダリティにいかにシフトしていくか。我々の強み、我々の技術力をしっかり保っていくことがやはり重要な課題であると感じている」と述べた。標的タンパク質分解誘導剤(TPD)やADCを例にあげ、培った化学合成技術を発展させることで、新たなモダリティに挑戦するチャンスがあるとの考えも示した。

生産技術もこれまでのバッチ生産からフロー生産(連続生産)へと革新することにも期待感を表明。実用化に向け、複数の企業が連携する、「iFactory」などの取組みを紹介し、「製造も安定的に、また安価にできる日が来るのではないか。こういうところに日本の強みを発揮できるのではないか」と期待を寄せた。

◎「業界同士が手を携え、海外のCMO/CDMOに負けない体制構築を」

上野会長は、「色々課題はあるが、世界の中で日本は世界で屈指の医薬産業国、もの作りの国だ。これを堅持しつつ、将来成長するためには変化をうまく受け止める必要がある」と指摘。「個社で戦うのではなく、業界として、あるいは業界同士が手を携えて海外の企業、海外のCMO/CDMOに負けない体制を構築していかなければならない」と強調した。これまで培った低分子技術のさらなる進化と新規モダリティを確立し、「皆さんとともに成長し、パートナーとして選ばれ、日本のCMO産業そして創薬力を強化する日本製薬業界ともに発展していくことを強く望む」と述べた。

◎新会長に武州製薬髙野社長 DX推進受け「CMO協会でプラットフォーム整備」に意欲

なお、日本CMO協会は同日の総会で、新会長に髙野忠雄氏(武州製薬代表取締役社長兼CEO)を選任した。任期は2年間。同日開いた会見で、髙野新会長は、「CMO業界の認知度を上げていきたい。上流・下流を含めた業界団体との関連を強化していきたい」よ意欲を語った。また、委託元である製薬企業が様々な形でDXを推進していく中で、「CMO協会としても加盟会社でプラットフォームを整備していく必要があるのではないかと考えている」と述べた。副会長は、永代尚武氏(富士薬品顧問)が続投する。


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