外資製薬企業の23年医療用医薬品売上高上位各社の決算概況を紹介する第３回目は、９～12位のサノフィ、グラクソ・スミスクライン（GSK）、イーライリリー、ノボ ノルディスクを取り上げる。（全４回連載、１回目　２回目）

◎９位サノフィ　医療用薬売上横ばい　デュピクセントは100億ドル突破、全世界で高成長を維持

９位にランクしたサノフィの総売上高は0.2％増（為替の影響を除くと5.3％増）の430.70億ユーロ（465.16億ドル）となり、このうち医療用医薬品の売上高は0.2％増の378.90億ユーロ（409.21億ドル）だった。純利益は35.5％減の54.00億ユーロ（58.32億ドル）で、こちらも９位となった。

最主力品のアトピー性皮膚炎や気管支喘息等の治療薬・デュピクセントは29.2％増の107.15億ユーロ（115.72億ドル）と100億ユーロを突破し、医療用医薬品売上高の28％を占めている。地域別にその伸び率（CERベース）を見ると、米国で32.6％増、欧州で30.9％増、欧米以外で46.1％増といずれも引き続き高い伸びを示している。

23年に欧米で後発品が参入した多発性硬化症治療薬・Aubagio（テリフルノミド）は53.0％減の9.55億ユーロ（10.31億ドル）となったが、新製品群のRSウイルス感染症予防薬・ベイフォータスが5.47億ユーロ（5.91億ドル）、血友病Aに対する高活性維持型血液凝固第VIII因子製剤・オルツビーオが1.59億ユーロ（1.72億ドル）寄与した。なお、為替レートは23年の年間平均で１ユーロ＝1.08ドル換算。

24年にはコンシューマーヘルスケア事業の分離を予定し、医療用医薬品（バイオファーマ）事業に集中する。

◎10位GSK　医療用薬３％増収　抗HIV薬、帯状疱疹ワクチン、COPD治療薬が好調

10位のグラクソ・スミスクライン(GSK）は、総売上高（医療用医薬品売上高）は３％増（為替の影響を除くと５％増）の303.28億ポンド（376.07億ドル）。純利益は８％増の53.08億ポンド（65.82億ドル）で、７位だった。

23年半ばから登場した60歳以上の成人を対象としたRSウイルス感染症予防ワクチンのアレックスビーは12.38億ポンド（15.35億ドル）を売り上げた。最主力品の帯状疱疹予防ワクチンのシングリックスは16％増の34.46億ポンド（42.73億ドル）と堅調だった。

抗HIV薬のインテグラーゼ阻害剤（INSTI）であるドルテグラビル製品群（テビケイ、トリーメク、ジャルカ、ドウベイト）は４％増の54.08億ポンド（67.06億ドル）となった。このうち、核酸系逆転写酵素阻害剤（NRTI）ラミブジンとの配合剤・ドウベイトは32％増の18.19億ポンド（22.56億ドル）を売り上げた。新規INSTIのカボテグラビルの長時間作用型注射剤レジメン「Cabenuva/ボカブリア」は約2.1倍の7.08億ポンド（8.78億ドル）となった。

気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患（COPD）の治療薬テリルジーも27％増の22.02億ポンド（27.30億ドル）と好調だった。前年に23.09億ポンド（28.63億ドル）を売り上げた新型コロナ治療薬ゼビュディは98％減少した。なお、為替レートは23年の年間平均で1ポンド＝1.24ドル。

24年の総売上高は５～７％の増加（CERベース）を見込んでいる。

◎11位イーライリリー　医療用薬20％増収　２型糖尿病薬・マンジャロが51億ドル、前年比約10倍

11位のイーライリリーは、総売上高（医療用医薬品売上高）20％増の341.24億ドルだった。第３四半期に米DICE社、米Versanis社、独Emergence社を買収した関係でインプロセスR&D費として29.75億ドル計上したため、純利益は16％減の52.40億ドルで11位だった。

２型糖尿病に対する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬マンジャロ（チルゼパチド）が約10.7倍の51.63億ドルを売り上げた。肥満症の適応でも、米国で「Zepbound」(チルゼパチド)の販売名で23年11月に承認を取得しており、1.76億ドル寄与した。

また、糖尿病から慢性心不全、慢性腎臓病に適応が拡大したSGLT2阻害剤・ジャディアンスは33％増の27.45億ドル、乳がん治療薬・ベージニオは56％増の38.63億ドルと好調だった。最主力品の持続性GLP-1受容体作動薬・トルリシティは４％減の71.33億ドルとなった。

24年の総売上高は404億ドル～416億ドルを見込んでいる。

◎12位ノボ ノルディスク 医療用薬31％増収　２型糖尿病薬や肥満症薬が高成長記録

12位にランクしたノボ・ノルディスクの総売上高（医療用医薬品売上高）は31％増（為替の影響を除くと36％増）の2322.61 億デンマーククローネ（DKK、336.78億ドル）。純利益は51％増の836.83 億DKK（121.34億ドル）となり、３位となった。

２型糖尿病に対する持続性GLP-1受容体作動薬・オゼンピック（セマグルチド）は60％増の957.18 億DKK（138.79億ドル）となり、総売上高の41％を占めた。地域別にその伸び率（CERベース）を見ると、米国で67％増、欧州で40％増、中国で137％増、その他で61％増となっている。肥満症に対する持続性GLP-1受容体作動薬・ウゴービ（セマグルチド）が407％増の313.43DKK（45.45億ドル）を売り上げた。

２剤の世界的な需要増に対応して、24年２月に親会社のノボ・ホールディングスによる米国の医薬品開発・製造受託企業Catalent社買収を通じて、イタリア、ベルギー、米国の３つの無菌充填工場を110億ドルで獲得し、供給力を強化すると発表している。

２型糖尿病に対する経口GLP-1受容体作動薬・リベルサス（セマグルチド）も66％増の187.50億DKK（27.19億ドル）と大幅に伸長した。なお、為替レートは23年の年間平均で1DKK＝0.145ドル。

24年の総売上高は18～26％（CER）の成長率を見込んでいる。

第４回（最終回）はアムジェン、ギリアド・サイエンシズ、バイエル、リジェネロンのトピックスを紹介します！

外資製薬企業 23年製品売上高ランキング

順位	製品名	企業名	売上高	増減（％）
1	キイトルーダ	メルク	25,011	19
2	ヒュミラ	アッヴィ	14,404	-32
3	オゼンピック	ノボ ノルディスク	13,879	60
4	エリキュース	ブリストル・マイヤーズ	12,206	4
5	ビクタルビ	ギリアド・サイエンシズ	11,850	14
6	デュピクセント	サノフィ	11,572	29
7	コミナティ （アライアンス売上含む）	ファイザー	11,220	-70
8	ステラーラ	ジョンソン・エンド・ジョンソン	10,858	12
9	ダラザレックス	ジョンソン・エンド・ジョンソン	9,744	22
10	オプジーボ	ブリストル・マイヤーズ	9,009	9
11	ガーダシル／ガーダシル９	メルク	8,886	29
12	スキリージ	アッヴィ	7,763	50
13	トルリシティ	イーライリリー	7,133	-4
14	オクレバス	ロシュ	7,083	6
15	エリキュース （アライアンス売上含む）	ファイザー	6,747	4
16	スパイクバックス	モデルナ	6,671	-64
17	プレベナーファミリー	ファイザー	6,440	2
18	レブラミド	ブリストル・マイヤーズ	6,097	-39
19	エンレスト	ノバルティス	6,035	30
20	フォシーガ	アストラゼネカ	5,963	36
21	アイリーア/アイリーアHD（米国）	リジェネロン	5,886	-6
22	タグリッソ	アストラゼネカ	5,799	7
23	マンジャロ	イーライリリー	5,163	970
24	コセンティクス	ノバルティス	4,980	4
25	イブランス	ファイザー	4,753	-7
26	ヘムライブラ	ロシュ	4,603	8
27	ウゴービ	ノボ ノルディスク	4,545	407
28	イグザレルト	バイエル	4,407	-10
29	シングリックス	グラクソ・スミスクライン	4,273	16
30	イミフィンジ	アストラゼネカ	4,237	52
31	パージェタ	ロシュ	4,182	-8
32	テセントリク	ロシュ	4,180	1
33	ゼプリオン	ジョンソン・エンド・ジョンソン	4,115	-1
34	プロリア（プラリア）	アムジェン	4,048	12

年間売上40億ドル以上の製品。医療用医薬品売上高上位19社＋モデルナ社から集計。
１ユーロ＝1.08ドル、1ポンド＝1.24ドル、１CHF＝1.11ドル、1DKK＝0.145ドルで計算。