レカネマブ 介護費用削減は費用対効果の「特例的な扱い」検討 市場拡大に備え使用成績調査注視 中医協
公開日時 2023/11/16 04:54
中医協総会は11月15日、アルツハイマー病治療薬・レカネマブ(製品名:レケンビ)について、薬価算定方法を了承した。薬価収載時は抗体医薬品として通常の薬価算定を行う。焦点となっていた介護費用の削減効果は収載時には反映されないが、費用対効果評価のあり方について、「特例的な取扱い」も含めて検討し、薬価収載時までに、一定の方向性を示す。留意事項通知の発出などで、投与は限定的となる見込みだが、市場の急拡大を早期に把握する必要性も指摘。使用成績調査の結果などを注視し、使用実態の変化が生じた場合は速やかに中医協総会に報告のうえ、改めて市場拡大再算定などについて検討する特例的な対応を行うこととなった。
同剤は、市場規模が年間1500億円超へと急拡大する可能性が否定できない高額医薬品に該当するとして、薬価算定組織による議論に先立ち、中医協で薬価算定方法の検討がなされた。
◎薬価収載時 抗体医薬品として通常ルールで算定
同剤の薬価収載時には、「認知症領域の新規作用機序の抗体医薬品」として類似薬効比較方式または原価計算方式による通常の薬価算定を行う。補正加算も現行ルールに従うことから、介護費用の削減効果は薬価収載時の価格には反映されない。介護費用の削減効果は、費用対効果評価の中での評価の検討が続けられることとなる。費用対効果評価制度全体としては、価格調整範囲を拡大する方向で議論が進められているが、同剤の価格調整範囲について今後は「特例的な取扱いも含め検討し、薬価収載時までに、一定の方向性を示す」としている。
◎最適使用推進GL、留意事項通知発出で投与は「限定的」も
薬価収載時には、アミロイド関連画像異常(ARIA)をはじめとした重篤な副作用の発現が懸念されることから、患者や施設・医師要件を明記した最適使用推進ガイドラインを策定。これに基づく留意事項通知の発出で、適切な患者への投与に絞る。このため、投与は限定的となる見込み。
◎投薬期間延長など使用実態の変化踏まえて中医協に速やかに報告 同様薬剤収載時も
ただ、推定有病者数を踏まえ、使用実態の変化などで収載時の市場規模予測よりも大幅に拡大する可能性があることや、投与期間が長くなることで市場規模に影響する可能性を指摘。
投与全例を対象とする使用成績調査の結果などを注視。同剤を提供できる医療機関の体制や検査方法の拡充、投薬期間の延長など、使用実態の変化が生じた場合等には、速やかに中医協総会に報告のうえ、改めて、本剤の薬価・価格調整に関する対応の必要性等について検討する。なお、薬価収載時における市場規模予測は収載から10年度分をベースに議論する。
中医協総会に報告するタイミングとしては、使用実態の変化が生じて薬価・価格調整の検討が必要な場合に加え、収載から18か月、36か月経過時点などとした。今後、同様のアルツハイマー病治療薬の上市も見込まれる中で、同様の薬剤を薬価収載する場合には、必要に応じて中医協総会で本剤を含む取扱いを改めて検討することも盛り込んだ。
◎「変化が生じた際に速やかな対応を」 介護費用の取り扱いは診療・支払各側から慎重論
総会に先立って行われた薬価専門部会で、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「保険者としては、国民皆保険の持続可能性とイノベーションの推進の両立は極めて重要な視点だと認識している。収載後に患者数が上振れすることや、投与期間が長期化する可能性が現段階では否定できず、保険財政に極めて重大な影響を及ぼす懸念もある。市場拡大再算定の取り扱いについては、変化が生じた際に、速やかに中医協で議論できるようしっかりと対応をお願いする」と述べた。
介護費用の取り扱いについて、支払側の松本委員は、「研究班や専門家の先生方から技術的な課題がいまだある説明をいただき、業界代表においても具体的な方法については明確な回答がなかったと受け止めている」としたうえで、「研究を進めることは重要だが、中医協で適切な判断を行うことができるよう慎重な検討をお願いする」と述べた。診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「介護費用等について、いわゆる社会的価値に基づく評価をどう考えるのかは重要な視点だが、学術的な課題、データ連結、公的分析が少ないなど課題もあるので、引き続き研究を進めることが必要」との見解を示した。