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日医・松本会長 24年度改定へ物価高騰・賃金上昇「従来改定とは別に」財源確保を 財政審議論を牽制

公開日時 2023/10/02 04:52
日本医師会の松本吉郎会長は9月29日の会見で、「コロナ補助金は、昨今の物価高騰や賃金上昇への対応に充てるべきものではない」と述べ、財務省・財政制度等審議会の議論を牽制した。日医など医療関係団体が2024年度改定での物価高騰・賃金上昇への対応を求める中で、財務省は、コロナ補助金による内部留保の積み上がりを賃上げ原資とすることなどを主張していた。松本会長は、物価高騰、賃金上昇については「従来の改定とは別に検討する必要がある」と述べ、必要財源確保の必要性を強調した。財務省が1受診当たりの医療費が上がったことを引き合いに単価の見直しを求めていることについても言及し、「診療所の1受診あたりの医療費が上がったからといって、経営状況が良くなったとはとても言えない」と反発した。

◎24年度は「異次元の改定」 コロナ補助金減で医療機関経営厳しく

「従来の改定に加え、物価高騰や賃金上昇への対応と、新型コロナへの対応の2点を加えた3点の論点がある異次元の改定となる」-。松本会長は、24年度診療報酬改定についてこう認識を語った。

医療現場では、コロナ補助金を除くと、水道光熱費の上昇や賃金上昇への対応などで、医療機関経営が厳しさを増している状況があるという。この日の会見に参加した医療団体からも、「5月4日以降、大幅に補助金が減額され、10月以降、ほとんど病床確保等の補助金がない。足下の医療機関の経営状況というのはかなり大変な状況になっている」(太田圭洋・日本医療法人協会副会長)、「コロナの補助金をもらい、赤字病院が一時的に少なくなったが、コロナの補助金を抜いたら10年後には精神科病院の4割がなくなっているのではないかと思う」(野木渡・日本精神科病院協会副会長)―など、コロナ補助金を除いた場合の経営の厳しさを訴えた。

◎「賃上げはフローで行うべき、ストックは賃上げの原資とするものではない」

財務省は9月27日の財政制度等審議会・財政制度分科会に、「コロナ補助金等による内部留保の積み上がり」を「賃上げ原資等として活用する方策」に検討することを提案している。

松本会長は、「コロナ補助金等の収入は増えているが、それと同時に、感染対策等に伴う支出も増えていることを忘れてはならない」と表明。「感染対策経費の増加、追加的人員の確保など患者数拡大に対応する体制を築くために投じたコストも上昇している。コロナ補助金は昨今の物価高騰や賃金上昇への対応に充てるべきものではない」と強調した。また、「すべての医療機関が補助金を受け取っているわけではない」と指摘。実際。補助金の有無により、医療機関経営の状況も違いがあるとのデータも示した。

松本会長は、「賃上げはフローで行うべきであり、ストックは賃上げの原資とするものではない。コロナ補助金等は感染対策として既に使途が決まっており、次の感染症流行に備えた体制整備に活用しなければならない」と強調した。

そのうえで、「昨今の水道光熱費、食材料費等の物価高騰はコスト負担増に拍車をかけている。公定価格である診療報酬は他産業と異なり、その負担を他に転嫁できない。従来の改定とは別に検討する必要があると考える」と述べ、コロナ補助金の内部留保の積み上がりや通常改定財源とは別に財源を確保する必要性を強調した。

◎1受診当たり医療費増で経営状況良くなったとは「とても言えない」 1人当たり医療費でみるべき

また、財務省は財政審で、近年の物価上昇率を上回る「単価増」への対応に問題意識を表明。「診療所の1受診当たりの医療費:年+4.3%(過去3年)」、「病院の入院1日当たりの医療費:年+3.5%(過去3年)」などのデータを引き合いに、24年度改定で医療経済実態調査の結果を見た上で、適正な単価の設定を求めている。さらに、診療所の収益率が構造的に病院より高く、「報酬単価や分配の在り方などの見直しが必要」としていた。

これに対し、松本会長は、「1受診あたりの医療費ではなく、1人当たりの医療費でみるべき」と指摘。概算医療費に基づき、新型コロナ特例を除くと、“患者1人当たり”医療費は「プラス2.4%」で、「近年の物価上昇率の水準を下回っている」と述べた。受診延べ日数がコロナ禍で急減して以降、十分回復しておらず、高血圧や脂質異常症患者などでは長期処方が増加していることを引き合いに、「受診日数が減ればより時間をかけてより丁寧な診察指導、助言等を実施するなど、価格は上昇する」と説明。「診療所の1受診あたりの医療費が上がったからといって、経営状況が良くなったとは、とても言えない」と述べた。

病院と診療所の収益率の違いについては、病院で売上金額が大きいことが影響しているとの見方を表明。「病院と診療所は、規模、特性が全然違うので、それぞれ分けて考えるべき。単価が上がったから経営状況が良くなるということはないと思うので、そうではないと主張させていただいた」と述べた。また、「昨今の外来医療は高度化している。様々な高額薬剤も登場しており、どうしてもそういった意味での上昇は避けられないかと思う。国民の命と健康を守るという視点に立てば、しっかりとした技術料を手当していただきたい」と述べた。

◎保険給付のあり方の見直し「丁寧かつ慎重な議論の積み重ねを」

財政審では、薬剤の自己負担引上げなど、「保険給付範囲の在り方の見直し」についても言及されている。松本会長は、「特に医薬品については昨今、非常に流通において大きな問題を抱えている」として、社会保障審議会医療保険部会などで「今後、丁寧かつ慎重な議論を積み重ねていくことが大切ではないか」との考えを示した。

このほか、財政審が“大きなリスクは共助、小さなリスクは自助”と主張したことに対しても、「相いれない考え方を日本医師会としては持っている」と強調。「国民皆保険制度では、既に小さなリスクは定額負担をお願いし、大きなリスクは高額療養費で対応するという基本的な考え方が組み込まれている。国民皆保険制度において、この考え方を堅持すべきであると考えている」と述べた。


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