武田薬品は８月22日、キナーゼ阻害剤カボメティクス錠と抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体アテゾリズマブとの併用療法で、転移を有する去勢抵抗性前立腺がん患者の無増悪生存期間（PFS）で有意な改善を確認したと発表した。国際共同臨床第3相試験（CONTACT-02試験）の中間解析から明らかになったもの。本誌取材に応じた内田智・グローバルオンコロジービジネスユニット・日本オンコロジー事業部長は、「前立腺がん領域は非常に大きい領域だ。アンメットニーズも高い」と指摘。今後、本試験を継続させ、数年以内に国内申請すると強い期待感を表明した。さらに、「もし順調に推移すればカボメティクスが日本のオンコロジー事業において全効能売上高で1番目か2番目に大きい製品になり得るポテンシャルを持っている」と強調した。

CONTACT-02試験は、治験参加前の治療として1種類の新規ホルモン療法による1回の前治療歴がある転移を有する去勢抵抗性前立腺がん患者を対象に行っている。この日の武田薬品の発表によると、カボメティクスとアテゾリズマブの併用により、標準治療である2剤目の新規ホルモン療法と比較しPFSを有意に改善した。一方、PFSと同時に評価されたもうひとつの主要評価項目の生存期間（OS）は、「中間解析ではデータが十分に確認されなかった」として、「本試験は次のOS解析まで継続される」とした。

◎内田事業部長「前立腺がん領域は非常に大きい領域」　数年以内に申請できる

内田・日本オンコロジー事業部長は、「まだ期間が短いので全生存期間（OS）のデータはないが、PFS、OS双方ともプライマリーエンドポイントとしているので、中間解析の時点でポジティブなデータになりそうだということを確認したので、今回リリースした」と明かしてくれた。日本での申請時期については、「まだ中間解析なので本解析が出てから数年以内には申請ができると考えている」と述べ、「前立腺がん領域は非常に大きい領域だし、アンメットニーズも高いというところで期待が持てる領域だと思う」と同剤の成長に期待を寄せた。

◎国内のオンコロジー事業「日本が一番、充実した製品を持っている」

国内事業について内田・日本オンコロジー事業部長は、「開発パイプライン、既存の製品含めて非常に力強く進んでいると感じている。日本が一番、充実した製品を持っている」と胸を張った。実際に製品群をみても、成長をこれまで牽引してきたニンラーロやアドセトリスをはじめ、ベクティビックス、アルンブリグといった製品群を持つ。2020年にはカボメティクスとゼジューラを上市した。内田・日本オンコロジー事業部長は、「今年度中にはアドセトリスの追加効能を取得できる見込み」と述べ、さらに中国のHUTCHMED Limited（HUTCHMED社）との提携ライセンス・インによって治療抵抗性の転移性大腸がんの経口チロシンキナーゼ阻害薬フルキンチニブについて、「今年度中には承認申請をしたいと考えている」と明かしてくれた。

内田・日本オンコロジー事業部長は、「既存製品も全て堅調に推移しているし、今後数年間にわたって複数適応の上市が見られる。さらにグローバルオンコロジービジネスユニットの今年の大きなテーマは事業開発なので、グローバル全体で更なるパイプラインの強化を図っていきたい」と意欲を示した。なお、パイプラインの強化については、「アーリーのパイプラインで非常に期待の持てるものは社内で持っているし、ライセンス・インのような形で、レイトステージのアセットを取りに行くということもある」と述べ、「パートナーシップ重視」の姿勢を鮮明にした。

またバイオ創薬の集積地として俄然注目を集める米・ボストンについては、「ボストンはグローバルの研究開発の一大拠点だ。ヘルスケアで言うところのシリコンバレーに当たるというところはもう間違いないところ」と強調。ただ、「必ずしもボストンだけ見ているという訳でない。各国においていかに早くアンメッドメディカルニーズを解決できるかというところに対し、ある程度フレキシビリティがあると考えている」との見解を語ってくれた。