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自民党・田村元厚労相 骨太方針へ社会保障財源に国民の理解求める 医療・介護は「ワイズスペンディング」

公開日時 2023/05/18 06:30
自民党の田村憲久元厚労相は5月17日、日本保険薬局協会(NPhA)の定時総会で講演し、骨太方針に向け、社会保障財源確保の必要性について国民に理解を求めていく姿勢を示した。田村元厚労相は、医療・介護は日本の経済成長のインフラとの考えを示し、「日本の次の成長につなげるために、医療や介護にお金を使うのは賢いお金の使い方(ワイズスペンディング)ではないか、ということを国民の皆様方にわかるように我々も説明させていただき、財務省を中心に政府全体で共有していただく環境を作っていく」と強調した。「骨太方針にちゃんと書かれないと概算要求基準に載らない」と述べ、骨太方針に向けて注力する姿勢を鮮明にした。

◎「報酬改定で大変なことが起これば、日本の医療は崩壊に向かうくらいの危機感」

「もう待ったなしの状況だ。今回の報酬改定で大変なことが起これば、この2年間で日本の医療は崩壊に向かっていくくらいの危機感を私は持っている。介護はもっと酷いかもしれない。医療も介護も崩壊したら、働けない。親のいる世代は、面倒を見ないと命にかかわる。所得が増えなくなる。日本の国どうするかという時に真剣に考えないといけない」-。田村元厚労相が語ったのは、日本の社会保障の維持に向けた強烈な危機感だ。医薬品をめぐっては供給不安やドラッグ・ラグの顕在化、賃上げの難しさから介護では人材が他産業に流出するなど、危機的な状況があると指摘した。

背景には、日本の経済成長が停滞している状況がある。高齢化が始まった1970年代を一つの「分岐点」として、社会保障費の給付の伸びが大きく変わってきていることを説明。当時と比べ、「経済規模は8倍にしか膨らんでいないのに、社会保障は30倍になった。もうこの時点で昔みたいに老人医療費無料なんてできない」と述べ、社会保障を取り巻く状況が大きく変わったことを説明した。こうしたなかで、実質的に医療費、薬剤費にシーリングがかかっているとして、「例えば薬で言うと、色々な技術革新による高度化部分を見ていかないといけないが、そういうものを実は一切見てこなかったのがここ数年間だった」と述べた。

◎社会保障財源は消費税を充当を「しっかりと今回の報酬改定にそれなりのものをつけていく」

田村元厚労相は、「社会保障で医療は成長産業だという人がいるが、医療は成長産業ではない。自由診療は成長産業だが、医療保険の中の医療、介護保険中の介護は、税金と保険料と自己負担でしか成り立たない」と指摘。経済が停滞するなかで、税金や保険料が増加せず、「ニーズが増えても供給するお金がない。日本の経済が成長しない限り、所得が増えない限りは出せるお金がない。供給するお金がない。供給の限界だ」と指摘。「経済をしっかり成長させていく。そのためにはまわりまわって医療・介護がしっかり安定していなければ、働けないということ」と述べた。

財源論も議論となっているが、防衛や子ども政策の重要性に理解を示したうえで、「しっかりと今回の報酬改定にそれなりのものをつけていく」必要性を強調した。社会保障・税一体改革で、消費税引上げは社会保障財源とされていると説明。物価高騰などで消費税が増えている現状に触れ、「ちゃんと財源はある。こういうものを活用して次の成長につなげるためにワイズスペンディング、医療や介護にお金を使うのは賢いお金の使い方ではないか、ということを国民の皆様方にわかるように我々も説明させていただき、財務省を中心に政府全体で共有していただく環境を作っていく。これから骨太、年末の予算編成までにしっかりとやっていくことが我々の大きな仕事だ。それができなかった時には、大きなしっぺ返しが返ってくるだろうなという覚悟をもって働いていく」と強調した。

◎中間年改定「辞めるのは難しい」 「一度政治決断」も“返してもらう”必要性も指摘

中間年改定については、「政治的に言えば、中間年改定を辞めるということはなかなか難しい。一度政治決断をしている」と強調した。2021年度、23年度改定ともに対象範囲は、「平均乖離率の0.625倍超」となった。ただ、平均乖離率は23年度(7.0%)で21年度(8.0%)と圧縮傾向にあり、「そろそろ限界にきている」との見方を表明。「(製薬企業や卸、調剤薬局・医療機関も)弱い所から倒れる」と危機感を示した。

そのうえで、23年度改定では、不採算品再算定や新薬創出等加算の特例適用がなされたことを説明し、「中間年改定はなくなることはないが、対象を絞るというのは一つ。対象を絞っても返してもらうということで、取られる金額を減らしていかないと対応できない」と述べた。

◎後発品の供給不安解消へ「安定供給する企業に支援も」

供給不安が続く、後発品についての課題認識も表明した。後発品80%目標が掲げられる中で、特許切れ直後の品目に共同開発を活用して多くの企業が参入し、多品目少量生産が増加。価格競争の結果、薬価が下落すると市場から撤退する企業があったと指摘した。また、総価取引が横行するなかで、ジェネリックが価格の調整弁となっている結果、薬価の下落が起きていることも説明した。こうしたことが結果として、品質問題や供給不安につながっているとの見方を示した。

こうした構造的課題の解消に向け、「安定供給をしていただくようなジェネリックメーカー等々に支援や、安定供給できる体制を組んでいただけるような対応をしていかないともたない。不採算品にならないように価格を維持していくことも重要なので一方でやっていく。皆様方が現場で困らないような状況をしっかりと作っていくということが必要」との認識を示した。

この内容を自民党社会保障制度調査会の「創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム(橋本岳座長)」の提言に盛り込んだことも触れた。なお、提言案では、「品質の担保された医薬品を安定的に供給することができる企業をより評価する仕組みを導入することで、こうした企業で構成される産業構造転換を図る」ことが盛り込まれている。

◎希少疾病・小児分野のドラッグ・ロスで「拡大治験」も一考

新薬については、欧米で承認されているものの、国内で未承認の医薬品が143品目(23年3月時点)で、86品目は開発に着手されていないことを紹介し、希少疾病や小児分野などでドラッグ・ロスが発生していると強い危機感を示した。こうした医薬品について、医師主導治験で医師が輸入して用いることはできるが、治験期間中のみにとどまっている状況にあると説明。解決に向けて、米国で患者個人を対象として行われている「拡大治験」が行われていることに触れ、「新たな制度」も含めた検討が必要だとの認識を示した。




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