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厚労省 最低薬価品目が「総価取引の調整弁」に 取引是正へ購入価償還求める声も 有識者検討会

公開日時 2023/03/20 04:54
厚生労働省は3月17日、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」に、最低薬価では安定確保医薬品であっても平均乖離率が高い傾向にあるとのデータを提示した。最低薬価品目では価格がいくら引き下がっても改定前薬価まで薬価が戻る仕組みがあることから、「総価取引の調整弁」として使われている実態を指摘した。こうした“不合理”な取引を是正する観点から、価格交渉において総価取引に入れないよう、流通当事者の行動変容の必要性を指摘する声があった。また、安定供給が求められる医薬品については、購入価償還を求める声や、クローバックや公定マージンを導入し、通常の取引と切り分ける必要性を指摘する声があがった。

◎安定確保医薬品、局法品でも最低薬価では乖離率大きく 「医療上の必要性」考慮されない取引実態明らかに

最低薬価は、剤形ごとにかかる最低限の供給コストを確保する仕組みで、改定ごとに最低薬価まで薬価を戻すこととなっている。厚労省はこの日の有識者検討会に、最低薬価が適用された品目でも、薬価差が生じており、平均で9.3%、内用薬で12.0%、注射薬で8.8%、外用薬で7.1%と高い乖離率であるとのデータを示した(2021年9月調査)。安定確保医薬品や日本薬局方医薬品であっても、最低薬価のものは平均乖離率が高い傾向にあった。また、安定確保医薬品のカテゴリAの平均乖離率が14.3%など、内用薬全体の平均乖離率(8.8%)を上回り、乖離率が高い傾向にあった。厚労省は、「最低薬価や安定確保医薬品についても、医療上の必要性等が考慮されずに、総価取引における調整弁として扱われ、これにより乖離率が大きくなっている状況にあることが想定される」と指摘。特に最低薬価が適用される医薬品については、「改定前薬価まで薬価が戻る仕組みがあることで、総価取引の調整に使われている実態があると考えられる」と問題提起した。

◎三村構成員 「重要な医薬品は通常の価格交渉に入れない」よう厚労省は周知を

三村優美子構成員(青山学院大名誉教授)は、「重要な医薬品は通常の価格交渉の中に入れてはいけない。そのことをしっかりとアナウンスしていただき、きちんとしたルール化されていけば、卸と医療機関、薬局との間で価格交渉を行うことはおそらくあり得ないだろう」として、厚労省に対応を求めた。そのうえで、「例えば購入価償還という方法もある。基本的にきちんとした実費という考え方、あるいは実技術コスト、実流通コストという考え方を入れていく。これも色々制度設計するなかで、どれが適正かという感じが見えてくる気がする」と述べた。

◎香取構成員 基礎的医薬品や安定確保医薬品は「実費償還」か「実費+管理コストで償還」

香取照幸構成員(上智大総合人間学部社会福祉学科教授)は、医薬品のマーケットにより状況が異なることから、カテゴリ別に薬価の決め方を変える必要性があるとの考えを表明。「基礎的医薬品や安定確保医薬品では、実費償還にするとか、実費+管理コストで償還すれば薬価差は出なくなる。そうすれば、そこで薬価交渉する必要はない」と指摘。安定確保医薬品などでは、薬価の高止まりなども問題にならないのでは、との見解を示した。

◎菅原構成員 実費償還に「クローバックや公定マージン導入」で患者負担の公平性を確保

菅原琢磨構成員(法政大経済学部教授)は現状について、「制度のそもそもの趣旨が大幅に歪められているという印象を強く持っている」、「本当にここの部分に関してはメスを入れなければいけない」と問題意識を露わにした。そのうえで、「行政指導で、例えば病院など医療機関や調剤薬局でできればいいが、実効性がなかなか難しいという話になるのであれば、私は納入価償還という実費償還ということもあるかと思う」と表明。ただ、こうした償還方式では患者負担に差が出ることにも触れ、「個人的にはクローバックや公定マージンを医薬品に導入することで、患者さんに対する負担の公平性を確保しながら、不要な値引きが起こらないような仕組みを考えていくという方向性があるのではないか」との見解を示した。

◎坂巻構成員「価格を下支えする薬については、“公定マージン”を限定的に導入」

坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大大学院教授)も、「価格を下支えする薬については、“公定マージン”を限定的に導入するとか、そういった考え方もあるのではないか。その形で結果として価格が維持される。この考え方も整理しておく必要がある」と述べた。

◎基礎的医薬品 三村構成員 基礎的医薬品の収載から25年ルール「基本的に意味がない」

薬価を下支えする仕組みとしては、最低薬価のほか、医療上必要性の高い品目について安定供給を図るために、基礎的医薬品や不採算品再算定の制度がある。基礎的医薬品は不採算となる前に薬価を維持する仕組みで、薬価収載から25年以上で、組成および剤形区分が同一である類似薬が平均乖離率以下などの要件を満たすことが求められている。学会からの要望に基づき、医療上必要不可欠で汎用され安定確保が求められる安定確保医薬品でカテゴリAに位置付けられた品目については、薬価上も基礎的医薬品に優先的に指定されることとなっている。

三村構成員は、「基礎的医薬品と安定確保医薬品の関係性をきちんと整合させる制度設計をしていただけると、流通側も助かるし、安定供給につながる」と表明。基礎的医薬品の収載から25年というルールは「基本的に意味がない」としたうえで、「基礎的医薬品プラス安定確保医薬品という一つのジャンルとして制度化し、それに対して修正する方法論として、不採算再算定という方法論が逆にそこでつくというような設定があるのでは」と提案した。

坂巻構成員は、「価格の下支えをすべき医薬品のなかには、例えば患者数が少なくて、一方で安定確保が必要であるようなことも考える必要があるのではないか」と指摘。「原料・原薬の供給先が限られていることに加え、非常に製造が難しいようなものもコストが上がってくる。そういったものも確認した際はすべて対象品目として考えた方がいいのではないか」と述べた。また、基礎的医薬品の25年ルールについては、「根拠があまりにもない。むしろもう一度、安定確保の価格下支えすべき薬というものはどういうものかということについて整理をした方がいいのでは」と述べた。

◎最低薬価 剤形でコストを決める方法に疑義 菅原構成員「1度精査を」

最低薬価をめぐっては、剤形ごとに最低薬価が決まっており、生薬のエキス剤、外用の塗布剤、点鼻剤、点耳剤、眼軟膏については最低薬価が設定されていない。香取構成員は、「剤形ごとに最低薬価を決めることが果たして合理的なのか」と問題提起。「例えば、製造技術が改善されればコストは下がるはず。剤形で最低コストを決めるという決め方自体が20世紀的というか19世紀的」と述べた。基礎的医薬品などをリスト化し、安定供給できる価格設定が必要としたうえで、「価値に関係ない、単なるモノの製造コストで最低薬価が決まるというのは、いい加減見直した方がいいのでは」と指摘した。

菅原構成員は、「剤形ごとというのが果たして今の実態に即して本当に供給コストの確保につながっているのか、もう一度検討した方がいいと思う。剤形は同じでも、かなりコストにばらつきはあるのではないか。もう1回精査をすることがもしかしたら必要なのでは」と述べた。
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