22年第3四半期の総括について奥田社長は、国内はバビースモやヘムライブラなどの市場浸透と、海外でのロシュ向け（ヘムライブラ／アクテムラ）輸出等の伸長をアピール。「一部円安の影響とか、製品の一部製品の輸出のずれなどあり、期初想定と若干変わっているものもあるが、経費のコントロール等で吸収し、期初予想通りの6期連続の過去最高業績を目指す」と意気込んだ。一方、製薬業界の関心事である23年度薬価改定（中間年改定）について奥田社長は、「日本の医薬品市場は全体として2026年～27年にかけてほぼフラットというふうに言われているが、新薬そして画期的医薬品に関しては成長すると予測されている。その意味で中外製薬はロシュとの戦略アライアンスに基づいたビジネスモデルで、中外製薬が創製する画期的新薬、そしてロシュグループが作った革新的新薬を導入して日本で開発して届けるというモデルが利いており、効果的になっているということだと思う」との見解を示した。

◎ロナプリーブ　22年通期売上予想の1990億円は「着地できる」との見通し

一方、今期の売上予想で1990億円を計上した新型コロナウイルス感染症治療薬ロナプリーブについて板垣利明取締役CFOは、「政府納入はＱ１で608億円を計上したまま、Ｑ２、Ｑ３では増えていない」と説明。ただ、「Q4に政府との第2回目の契約に基づく納入を予定している」として、「その通り着地できるのではないか」と見通した。ただ、政府との3回目の契約については「話はございません」と述べるにとどめ、「ロナプリーブ・クリフみたいな話はあるでしょう」と指摘し、23年業績への影響については、バビースモやテセントリクといったベースビジネスでカバーすることになるとの認識を示した。

◎日高営業本部長　希少疾患へのデジタルアプロ―チ「中外製薬だからこそ発展させていく」

役員懇談会で日高伸二上席執行役員営業本部長は、MR活動のリアル（対面）とリモート・デジタルの最適活用に触れた。日高営業本部長は、コロナ禍で一番苦しかったのは「顧客に会えないところ」と指摘。ただ、この間の活動により、「一つはデジタルを使って医師の興味を知ること。もう一つはいかにMRが入るよう誘導するかというところ。これらはある程度進んできた」と成果を評価した。一方で課題感については、希少疾患へのアプローチをあげ、「我々ＭＲはどこに行くべきかがすぐには分からなかった。デジタルを使って効果的に見つけ出し、あるいは、（ＭＲが）行かなくても必要な情報が届くようにしていく。これは中外製薬だからこそ発展させていかなければならないことだと思う」と意欲を示した。

さらに、営業、安全性、メディカルの各専門機能の適切な連携により迅速かつ最適な形で医療関係者や患者が求める価値ある情報を提供できるような体制づくりにも取り組む姿勢を示した。

◎志済ユニット長　DAOの可能性　新しい価値創造する社内トライアルを実施してみたい

志済聡子上席執行役員デジタルトランスフォーメーションユニット長は、Web3.0時代に注目される「DAO」（分散型自律組織）の可能性について、「中外デジタルアカデミー（CDA）の卒業生や、特定のソリューション活用している部門を超えたメンバーが、コミュニティを作って新しい価値創造する社内トライアルを実施してみたい」と述べた。CDAは年間100人以上のデジタル人財を育成している。また、同社は社内公募型のアイデア創出・インキュベーション制度「デジタル・イノベーション・ラボ（DIL）」を推進しており、これまでに10件以上が本番開発に移行している。志済ユニット長は、「まず初期的なエクセサイズみたいなものは社内で出来ると思っている」と述べ、2023年には着手したい考えを示した。