自民党・創薬力強化PT 厚労省から有識者検討会の状況を聴取 薬価制度・産業構造、財政論絡め議論を
公開日時 2022/10/21 04:53
自民党の社会保障制度調査会「創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム(PT)」(橋本岳座長)が10月20日開かれ、厚労省の医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会の検討状況について報告を受けた。出席議員からは、新薬の上市が日本で遅れる原因として、財政論を指摘する声があがった。薬価差のあり方をはじめ、医療保険全体に踏み込むべきとの意見や、創薬力強化を目的としたベンチャー支援など環境整備を求める意見も出た。会議後のブリーフィングで橋本座長は、「政府と違い、政治の観点に立ってどのようなことをもっと考えるべきなのか。言うべきことは積極的に言っていきたいと思っている。それを社会保障制度調査会の議論の参考にしていただくことを考えている」と述べた。
◎橋本座長「薬価制度等で改善できるものはしたいが、突き詰めれば財源の問題」
厚労省は有識者検討会での検討状況と主な意見、検討会で整理中の論点案を説明した。橋本座長は、革新的新薬の早期上市に向けて、「もちろん薬価制度等で改善できるものはしたいと思っているが、突き詰めれば財源の問題になってしまう。この場でもほぼ皆が共有されていた話で、保険制度のあり方みたいな話まで意見が出た」と説明した。出席議員からは、日本の経済状況を懸念する声があがり、海外展開を後押しするために必要な施策の必要性を指摘する声があがった。また、アカデミアやバイオベンチャーなど創薬シーズを開発・導出するうえで、ベンチャーを基盤とした環境整備、グローバル企業との競争に打ち勝つための強化策などを求める声もあがった。
◎長期収載品の薬価に対する懸念の声
一方で、国内で革新的新薬を使用するためには、「覚悟を決めて国民に負担をお願いする」必要性を指摘する声もあった。長期収載品に依存したビジネスモデルから脱却しきれていないとの指摘もあるなかで、長期収載品の薬価に対する懸念の声もあった。
なお、厚労省からは前回の有識者検討会での議論を踏まえた論点案(検討会において整理中)が示された。産業構造を起因とする課題では、先発企業が長期収載品から収益を得る構造から脱却し、新薬の研究開発への再投資を促進する方策の検討などが提起された。一方、薬価制度を起因とする課題では、経営や投資計画に影響を与えうる薬価改定ルールの頻度や、イノベーションや医薬品の価値を踏まえた適切な薬価算定の考え方や方法などについての論点も示された。
創薬力強化PTとして今後は業界ヒアリングなどを踏まえ、検討を行う方針。中長期的な視点から構造的な課題について議論を深める。一方で、物価高・エネルギー価格の高騰、円安など世界的経済情勢は直近の課題であることから、年末に向けて議論を詰める方針。