製薬協データサイエンス部会調査 DCT実施および検討企業25社・47.2% ePRO/eCOAの経験が後押し
公開日時 2022/08/30 04:51
製薬協・医薬品評価委員会データサイエンス部会は8月29日、DCT(分散化臨床試験)の導入状況等に関する調査結果を公表した。部会登録企業から回答を得たもの。DCT実施企業は6社(11.3%)。DCTの実施を検討した企業まで含めると25社(47.2%)に及んだ。DCTへの期待が高まる背景について、ePRO/eCOA等の手法を用いたデータ収集経験があることや、多くの団体・企業等からDCTに関する成果物が公開されていることがあげられた。このほか新型コロナの感染拡大で、被験者が医療機関に来院できないことや、従来通りの方法で治験薬を提供できない中で臨床試験を継続する手法としてDCTが注目されていることも指摘した。
DCT(Decentralized Clinical Trial)とは、分散化臨床試験と呼ばれ、被験者の医療機関への来院に依存しない臨床試験と定義される。欧米のグローバルファーマを中心に国際共同治験においてDCTを活用することが近年増加しており、製薬協もDCTの導入および活用手法の検討(20年9月)や、DCTの日本での導入の手引き(21年7月)などの検討を行ってきた。
◎DCT「経験あり」6社、「途中で断念」2社、「導入作業中」17社
製薬協データサイエンス部会はDCT の導入状況等に関するアンケートを実施した。回答期間は21年11月24日~12月21日。部会登録会社 65 社中 53 社(外資系企業:16 社・30.2%、内資系企業:37 社・69.8%)から回答を得た。DCTの実施経験については、「経験あり」が6社(11.3%)、「検討したが途中で断念した」が2社(3.8%)、「検討中もしくは導入作業中」が17社(32.1%)あった。「導入する予定なし」は28社(52.8%)だった。
◎ePRO/eCOAの「導入経験あり」33社・62.3% 導入検討含めると7割超え
DCTの実施有無に関わらず、DCTに関連する各手法の導入経験を調査したところePRO(電子患者報告アウトカム)/eCOA(電子臨床アウトカム評価)の「導入経験あり」が33社(62.3%)で最も高く、「これまでに各手法の導入検討を行った」と回答した企業を含めると、41社(77.4%)となった。
◎インターネット介した被験者募集、DDC、eConsentは半数以上の企業ですでに実施済
このほか導入を検討した手法では、インターネットを介した被験者募集が34社(64.2%)、DDC(データ入力端末またはEDCシステムに原データを直接入力)は30 社(56.6%)、eConsent(電子版同意説明文書)は28 社(52.8%)がそれぞれ実施しており、半数以上の企業が導入を検討していることが分かった。一方、ウエアラブルデバイスは23 社(43.4%)、在宅診療は22 社(41.5%)、オンライン診療は21 社(39.6%)がそれぞれ実施していた。
◎規制要件や医療機関の受入れ等「DCT導入のハードル一つ一つ下げていくことが必要」
この結果についてデータサイエンス部会は、「タブレット、スマートフォンなどを利用した臨床試験の実施やデータ収集に関する手法に関心が高いこと、特にePRO/eCOAは、一般的な手法になってきているのでは」と指摘。インターネットを介した被験者募集はDCT以前から、「治験の効率化等でベンダーによるサービスが開始されており、他の手法より歴史が長いことから、導入経験および導入検討をしている企業が多いのではないか」と強調した。
一方でオンライン診療や在宅医療については、「新型コロナウイルス感染症の拡大により、オンライン診療・電話診療の拡充という時限的緩和措置により、DCT導入に向けた検討を進めている企業が増えていると推測される」と分析した。
今後の対応については、「規制当局、医療機関、治験依頼者、サービスベンダーが一丸となって、規制要件や医療機関側の受け入れ、社内手順やコストメリットなどのDCT導入のハードル一つ一つ下げていくことが必要となるだろう」と見通した。